写真:泉 よしか
地図を見る日本三大急流のに数えられる富士川、その支流 常葉川のそのまた支流 下部川に沿って温泉街を形成しているのが山梨県の下部温泉。ここは古来、武田信玄が上杉謙信から受けた傷を癒したと伝わる”信玄の隠し湯”で、近くには蛍の生息する見延町湯町ホタル公園もあり自然環境の美しさには定評があります。
下部温泉の旅館の中でも特に湯量豊富な湯元ホテルは、下部温泉駅から温泉街の坂を登ってきて橋の手前に位置する老舗の温泉旅館。道路から見ると川の対岸に建っていて、専用の小さな橋を渡って玄関に入ります。
写真:泉 よしか
地図を見る下部温泉は文学の香り高い温泉地でもあります。高浜虚子、井伏鱒二、若山牧水といった文人が訪れました。
湯元ホテルの橋のたもとには高浜虚子の句碑が残されています。刻まれた句は「裸子(はだかご)を ひっさげあるく ゆ(湯)の廊下」。虚子はこの宿で2回ほど句会を催しました。虚子の次女でやはり俳人の星野立子も、この宿を贔屓に。川沿いに建つ宿の風情や、惜しみなく溢れるぬるい湯が気に入っていたのかもしれません。
写真:泉 よしか
地図を見る湯元ホテルは築90年。新しいホテルや豪華な旅館とは違いますが、歴史を感じながら静かに休日を過ごすには良いところです。夜に聞こえてくるのは川のせせらぎだけ。
写真:泉 よしか
地図を見る下部温泉 湯元ホテルには岩風呂と地下大浴場の二ヶ所にお風呂があり、時間で区切って男女入れ替え制となっています。
入る時に「わっ、冷たいっ」と驚かないでくださいね。下部温泉といえばぬるいお湯。2006年に掘削して得た温かい新源泉を引く宿もありますが、もともと下部のお湯といえば体温より低い温泉が知られていました。中でも湯元ホテルは5本の自家源泉を所有し、下部温泉でもナンバー1の湯量を誇ります。
岩風呂からご紹介しましょう。最初に壁一面に大きな岩が浴槽を覆うように立ちはだかっているのが目に入ります。これは浴室の装飾ではなく、もともとこの大岩のあった場所にお風呂を作ったからです。大岩の下からは滔々と温泉が自噴。湯元ホテルに隣接して古湯坊 源泉館と裕貴屋という旅館が建っていますが、大岩はちょうどその間に鎮座していて絶えることなく霊泉を湧き出させているのです。
写真:泉 よしか
地図を見る浴槽と岩との間に衝立を作り2本のパイプが通してありますが、これはパイプに簡易なフィルターを付けて綺麗なお湯だけを湯船に注ぐ工夫。手を入れてみればわかりますが、ただパイプを通しているだけです。大岩の下から生まれたままの源泉は、そのまま湯船に注がれます。そして浴槽から溢れた湯は床をザブザブと。なんとも贅沢な使い方です。
30度弱のお湯は、最初足を入れた時は冷たいと感じますがゆっくり入れば大丈夫。いつに間にか体が慣れていきます。じっとしていると肌にびっしりと細かい泡がつき、ほんのりとゆで卵のようなにおいも。
ぬるいお湯は体に負担を掛けることなく効果を発揮します。下部のお湯は殺菌力が強く、骨や関節の障害、外傷、神経痛などに効能が。それもあってのことなのか、こちらのホテルには戦時中は傷痍軍人の療養にも使われた歴史が残されています。
少し寒く感じたら、隣の加熱浴槽で体を温めましょう。実はこの温かい方のお湯も、別源泉の温泉です。ぜひ両方入り比べてみてください。
写真:泉 よしか
地図を見る地下大浴場の方も非加熱の温泉と加熱した温かい温泉の二つの浴槽があります。こちらもそれぞれ別源泉。そしてこちらの非加熱源泉は32.2度と少し岩風呂より温度が高いので、その分落ち着いて入れます。湯治のために逗留するお客さんも多く、そうした常連さんはぬる湯で長湯を楽しみます。ゆっくり入れば美肌効果も期待できますよ。
写真:泉 よしか
地図を見る板前が腕を振るう食事も湯元ホテルの自慢です。正直なところ宿泊料から考えて、かなりお値打ちの食事だと思います。お刺身には湯葉や蒟蒻といった山の宿らしい食材も。茶わん蒸しなど温かいものは後から持ってきてもらえます。食前酒は梅酒。食後にはフルーツも。
写真:泉 よしか
地図を見る写真:泉 よしか
地図を見る下部温泉のもう一つの特徴は飲める温泉であること。胃腸病に良いとされる下部のお湯は、全国飲み湯番付で東の横綱に選ばれたこともあります。お部屋にも自由に飲めるように源泉が置いてあります。すっきりと美味しい水ですよ。お風呂の前後にぜひ味わってみてください。
写真:泉 よしか
地図を見る湯元ホテルではお客さんが自由に汲めるようにと、玄関の橋を渡ったところに源泉の蛇口を設けてあります。常連さんはポリタンク持参で泊まられることも。湯元ホテルに泊まるなら、帰りに温泉を汲むためのペットボトル持参をおすすめします。
下部温泉 湯元ホテルは決して新しい綺麗なホテルではありません。築90年の建物は確かに老朽化してきていますが、天然の大岩の下から溢れるぬるい名湯は、わざわざ訪ねて入浴する価値があります。
武田信玄が傷を癒した伝説の残る川沿いの温泉郷で、忙しい日常を離れた休日をお過ごしください。湯治目的の連泊や、一人旅も歓迎です。
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(2024/4/24更新)
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