鏝絵とは、住宅の母屋や蔵の妻や窓に施された装飾品です。この鏝絵画は彫刻ではなく、左官職人が漆喰壁に、鏝で浮き彫り模様を塗り装飾したものです。それはまるで彫刻のように繊細で鏝で作られたとは思えないほど精巧なものです。
鏝絵の起源は飛鳥時代といわれていますが、江戸末期から昭和初期に庶民の建築文化として全国に流行したと言われています。全国的なものではありますが、集落内に多数見られるのは全国でもごく限られた場所しかありません。
鏝絵のすばらしさは見て美しいのはもちろんですが、鏝絵は施しがかなり難しく、左官職人の腕の見せ所でもあるものです。鏝絵画は粘土状にした漆喰を使いますが、漆喰は乾きやすく、上手くできていないと完全に乾燥してしまうとヒビが入ったり、ボロボロと剥がれ落ちてしまいます。
ただでさえ、漆喰の施工は難しいと言われています。鏝絵は壁が生乾きのうちに一気に仕上げなければなりません。技術とさらにまた芸術センスが必要なものです。
それだけの技がないと出来上がらない鏝絵ですから、誰でもできる、どこでもあるというものではなく貴重なものです。さらに、漆喰壁を使った建築物が最近は少なくなり、それに伴い漆喰を扱える職人も少なくなり鏝絵の数は限られてきています。
鳥取県琴浦町の光集落にみられる「光の鏝絵画群」は、週末はツアーで訪れる観光客の方もありますが、平日はごく普通の田園風景が広がるところです。そのどこにでも見られる田舎の風景の中にひときわ目立つ看板があり、すぐにここが光だとわかります。
駐車場に着いたら、看板をチェックです。パンフレットがないと、どこにどんな鏝絵があるかわからなくなりますので、まずは看板を良くみてから散策を開始しましょう。
主に鏝絵は家の屋根の下にありますから、屋根の下を見てみましょう。妻側に家紋が施されていたり、蔵の窓の扉に鏝絵が施されています。よく見ているとわかるのですが、この鏝絵の図柄は同じものがないのでひとつひとつ、丁寧に見ていきたいですね。また、鏝絵だけではなく、棟瓦や塀の妻飾りも装飾されているものが使われていますので見逃さないようにしてくださいね。
散策して鏝絵を見学しますが、鏝絵はごく普通の民家にあるものなので、最初はなかなか鏝絵を見つけるのが難しいです。蔵の妻側にあったり、蔵についている窓扉に施されていたりするので家を四方八方から見ないとわからなかったりします。
建築のことは詳しくないと思う方は光集落に実際に住んでいる方にガイドをお願いすることもできますので、利用されることをお勧めいたします。
門塀にも装飾が施されています。光のこだわりと言った感じがしますね。
鏝絵には家内安全や無病息災などを願う家主の思いが込められており、それに左官職人も自慢の技で応えてきました。両者の願いが伝わってくる作品が鏝絵です。
写真は鯉をあしらった鏝絵。中国では「龍門の滝」を昇ることができた魚が、龍になることができると言われています。龍は忍耐力、成功祈願、商売繁盛のゲン担ぎにも使われています。
蕪の文様は、株が上がるという意味があります。また、評判がよくなるという意味で人の株が上がるとも言いますね。
ハートの模様が施されているようにも見えます。細かな装飾に粋さを感じます。
さりげなく家々に施されている「鏝絵」ですが、都会では見ることができないものです。また、風化して崩れてしまう場合もあり現存するものが見られることはとても価値があります。
できれば、観光ガイドを利用して見るほうがより散策を楽しめます(個人宅ですので敷地内に入るには許可が必要です)。地元のガイドの方言を聞きながら、伝統建築の巧みを味わってください。
建築好きの方には、龍の木彫が施された同じ町内にある神埼神社もお勧めです。
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