まずは唐戸市場です。昭和8(1933)年に開設された地方卸売市場になります。施設の老朽化のため、下関港ウォーターフロントの中核施設として平成13(2001)年に隣接する埋立地に新築移転されました。すなわち、平成13(2001)年の建物。紛れもない現代建築です。レンガ風タイル張りのモダンな外観を持ち、内部は東西で卸売場と仲卸売場に分けられています。2階まで吹き抜け構造でほぼ正方形の大空間が2つ並んでいるような具合です。
新鮮な魚介類が豊富ですが、菓子や総菜、酒類にパンなども扱っており活気があります。簡単なふぐ料理や寿司もいただくことができ、旅行者でも気軽に利用できるのが魅力です。
さて、建築という視点で見てみましょう。一般客も買い物ができる仲卸売場は規則的に列柱が並べられているのに対し、競り場となる卸売場には屋根を支える柱がありません。吹き抜けで約50メートル四方の大空間に柱が一つも無いのですから豪快な印象を受けます。ならば、屋根はどのように支えているのか、構造上の問題はないのかという疑念が湧きます。これを克服している構造が唐戸市場の面白いところです。
内部から見る屋根の形状は独特です。ボートの船底をいくつも並べたような幾何学構造。材料はコンクリートなのですが、重いはずのコンクリートが軽やかに見えます。この効果はデザインのおかげでしょう。
屋根は吊り構造で支えられています。屋根が風や地震で曲がらないようにしつつ上から吊るためには、硬く重い屋根でなくてはならないらず、そのためにコンクリート製の屋根を採用しています。また、工場で事前に生産したコンクリート製の大きな板をPC鋼材という高い強度を誇る素材のケーブルで吊って屋外の鉄骨柱で支えているのです。吊ってから屋外で支える構造は斜張橋と同じ原理になります。こうすることで無柱空間を生み出しているのです。
芝生の屋上に上がれば、まさに鉄骨柱が屋根を支えている姿があり、触ることもできます。この鉄骨柱も唐戸市場のデザインの一部に組み込まれ、シルエットの独特さを際立たせています。魅力的な現代建築です。
唐戸市場から南西、JR下関方向へ1キロメートル少々のところにもう1棟ご紹介したい建物があります。それが海峡ゆめタワーです。平成8(1996)年に誕生した新しい下関のランドマークであり、まさしく現代建築です。全長は153メートル。関門海峡を見下ろすだけに灯台をモチーフとしています。
8700枚のガラスを使用した、全面ガラス張りのカーテンウォール工法です。頂上部の3層からなる展望室は球形の全面ガラス張りになっており、この構造は世界初になります。また、ライトアップには611灯の水銀灯を使用し、曜日ごとに色を変えて点灯。タワー脚部も春夏はシルバー、秋冬はゴールドに変化し、ライトアップの多彩さが見るものを楽しませています。
展望台は地上143メートル。瀬戸内海、関門海峡、巌流島、九州の山々、関門海峡の奥には日本海と360度見渡すことができます。海と陸地が複雑に交わる景色は海峡ゆめタワーならではの光景です。海の色が柔らかくなり、山には陰影が刻まれ、街の光が明るく輝きだす夕景も美しく、夜景の美しさもまた格別です。
いかがだったでしょうか。現代建築は自由度の高さの反面、奇をてらった建築も多数見られます。時には、デザインが先行するあまり、利用者のための建築になっているのか疑念の湧く建物も見られるようになりました。そうした時代にあって、この2棟は独自のデザインを持ちながらも実用に適った良い構造をしていると思います。
唐戸市場は「食」も楽しめ、海峡ゆめタワーは「景色」も堪能できます。そこで、「建築」にも興味を持ってみましょう。下関には、多彩な観光の要素があるのです。
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