100年の森に息づく永遠の愛「明治神宮御苑」の花菖蒲

100年の森に息づく永遠の愛「明治神宮御苑」の花菖蒲

更新日:2017/06/07 09:25

織笠 なゆきのプロフィール写真 織笠 なゆき トラベルライター、御朱印収集家、狛犬愛好家
「明治神宮」は、明治天皇と皇后の昭憲皇太后をお祀りする神社。その内苑には、豊かな森の中に、社殿や参道とともに「明治神宮御苑」という庭園があり、訪れる人の心を和ませてくれています。毎年6月頃、この「明治神宮御苑」の中にある菖蒲田にて、美しい花菖蒲が咲きそろっているのをご存知でしょうか。「明治神宮」とその鎮守の森、「明治神宮御苑」の菖蒲田、パワースポットとして有名な「清正井」などについてご紹介します。

人々の想いが集まる場所「明治神宮」

人々の想いが集まる場所「明治神宮」

写真:織笠 なゆき

地図を見る

「明治神宮」は大正9年、明治天皇とその皇后である昭憲皇太后を御神霊としてお祀りしたいという国民の声により、創建されました。創建にあたり、全国からのべ11万人もの青年団が奉仕し、創建当日は50万人もの参拝者が訪れたと言われています。

集まったのは人だけではありません。70万平方メートルもの鎮守の森の造営には、全国各地はもとより、満州や朝鮮からも、植樹に使ってほしいという木々が約10万本も届きました。最終的には365種約12万本の木々が森を形成し、100年後・150年後に自然の森となるよう、林学者たちの綿密な計画の元、配置されたといいます。気候に合わなかった木もあり種類こそ少し減りましたが、御鎮座50年を記念した調査では、すでに生態系などが自然の状態になったということがわかっています。

人々の想いが集まる場所「明治神宮」

提供元:凛蔵

https://omairi.club/users/rinzo地図を見る

今でも「明治神宮」はたくさんの人々の崇敬を集める神社で、例年、初詣の参拝者数が日本一ということでも知られています。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」にて“わざわざ旅行する価値がある”という意味のある三つ星に分類されていることもあり、外国人観光客もひっきりなしに訪れています。

「明治神宮」には、社殿や「明治神宮御苑」が位置する“内苑(神宮内苑)”のほか、少し離れた場所になりますが、聖徳記念絵画館やいくつものスポーツ施設を有する“外苑(神宮外苑)”、そして披露宴やパーティーに使われる“明治記念館”があり、それぞれにたくさんの人々の想いや祈りが集まる場所となっています。

「明治神宮御苑」の花菖蒲は、明治天皇から昭憲皇太后への贈り物

「明治神宮御苑」の花菖蒲は、明治天皇から昭憲皇太后への贈り物

提供元:明治神宮

http://www.meijijingu.or.jp/地図を見る

「明治神宮」内苑の森は、畑が広がり荒れ地のような景観だったところに造営されていきましたが、その一部である「明治神宮御苑」の一帯だけは、元々美しい庭園でした。江戸時代には加藤家や井伊家の下屋敷の庭園だったものが、明治初年に皇室の御料地となり、「代々木御苑」と称され、明治天皇や昭憲皇太后もたびたび行啓されたのだそうです。

菖蒲田は明治26年、そんな「明治神宮御苑(当時の代々木御苑)」に、明治天皇が昭憲皇太后をいたわるために、お好きだった花菖蒲を植えさせたものです。思いやりに満ちた、愛の贈り物と言えるでしょう。当時は80種余りだったものが、現在では150種1500株に増え、大切に守り継がれています。

川の流れのように多様な花菖蒲が咲き誇る様子は、小高い位置にある四阿(あずまや)と相まって、まるで絵画のような美しさです。

「明治神宮御苑」の花菖蒲は、明治天皇から昭憲皇太后への贈り物

提供元:Pixabay

https://pixabay.com/ja/地図を見る

花菖蒲は改良された地域によって、伊勢系・肥後系などいくつかの系統に分かれていますが、ここの花菖蒲はほとんどが江戸系です。江戸系の品種は、花びらと花びらの間に隙間があるのが特徴。また、平らに花びらが開く「平咲き」の品種が多く、少し上から鑑賞するのが美しいと言われています。試しに横から見てみたり、四阿から見下ろしてみたりと、アングルをいろいろ変えて眺めてみてくださいね。

「明治神宮御苑」
花菖蒲の見頃:6月上旬から7月上旬頃
開苑時間(年中無休):5月 9時〜16時半
          6月 8時〜17時(6月の土日は18時まで)
御苑維持協力金:500円

菖蒲田を潤す、「清正井」の清らかな水

菖蒲田を潤す、「清正井」の清らかな水

写真:織笠 なゆき

地図を見る

「明治神宮御苑」の中、菖蒲田の少し北側に、「清正井」という名前の井戸があります。ここでは四季を通じて15℃前後の清らかな水が毎分平均60リットル湧き出しており、菖蒲田を潤して南池へと流れ込んでいます。元は安土桃山〜江戸初期の武将、加藤清正が掘ったという言い伝えがあり、調査により巧妙な構造であることが分かっています。

この「清正井」はさまざまなメディアでパワースポットとして取り上げられ、“携帯の待ち受け画面にするといい”などさまざまな説が広まっています。真偽のほどは定かではありませんが、「明治神宮」の御本殿のそばを水源としていることや、深い森の恵みを受けていること、すべてを見通すような透明感など、神秘的なものを感じる人が多いのもうなずけるスポットです。

「明治神宮御苑」、そのほかの見どころ

「明治神宮御苑」、そのほかの見どころ

写真:織笠 なゆき

地図を見る

菖蒲田を潤した水が流れ込む南池では、花菖蒲と時期を同じくして睡蓮の花を楽しむことができます。深い森の木々を映す水面や、鳥の声、ゆったりとした鯉の動きなどに癒される場所です。

「明治神宮御苑」、そのほかの見どころ

写真:織笠 なゆき

地図を見る

南池に面する隔雲亭は、明治天皇が皇后の昭憲皇太后のためにお建てになった御休所。戦火でいったん焼失してしまいましたが、昭和33年に再建されました。現在ではお茶会などに使われています。

「明治神宮御苑」の花菖蒲は、一人でも大切な人とでも

「明治神宮」は平成32年(2020年)に御鎮座100年を迎えます。深く静かに、都心とは思えないほど豊かな生態系を育んでくれている、鎮守の森。周辺の開発はどんどん進んでいきますが、次の100年もその先も、「明治神宮御苑」の菖蒲田に残された愛の記憶とともに、この森を大事に守っていける東京であってほしいと願うばかりです。

6月上旬から7月上旬、「明治神宮」参拝の後は「明治神宮御苑」にて、清涼な空気と花菖蒲のしっとりとした美しさに癒される時間を過ごしてみませんか。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/06/07 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -