最初の展示室では、技術の粋を極めた細部に目を凝らしてください。外国人が住み、貿易が盛んになった横浜に優れた職人が集い、輸入用に横浜でつくられたものです。
透明のケースには、初代 宮川香山がつくった《高浮彫桜二群鳩大花瓶》があります。表面に鳩や桜の花、幹が立体的な高浮彫の技法の陶器です(明治前期 田邊哲人コレクション:神奈川県立歴史博物館寄託)。1876・明治9年のフィラデルフィア万国博覧会で絶賛されました。
花瓶の右に並ぶ室内着は、日本で制作されイギリスで販売されたもので裾を西洋向けに広くするなどデザインを工夫し、絹羽二重にキルティング、菊の刺繍を施しています。
明治中期には西洋風の束ね髪が奨励されました。髪飾りはべっこう製や宝石がついた高価なものから、次第にアルミニウム、セルロイドが使われるようになり、庶民もおしゃれを楽しみました。ケースに展示された実物をご覧ください。
壁の左側にある日本画は丹羽阿樹子《奏楽》(1936・昭和11年 京都市美術館蔵)で、鮮やかな着物にカールした短かい髪、バイオリンを弾く少女たちが描かれています。当時はピアノとバイオリンが流行っていたのですね。右側の着物と帯は大正から昭和初期の銘仙で、バラのブーケ模様やトランプ柄もあり(いずれも公益社団法人服飾文化研究会蔵)、西洋の影響を見ることができます。
三越呉服店は日本初のデパートとして洋品を多く扱っていました。このポスターの女性は日本髪に造花の髪飾りを差し、蝶の形の襟留め、ネックレス、指輪をして輸入品のビスク・ドールを抱いています。ネックレスに見えたのは、懐中時計のチェーンで時計は文字通り懐に入れていました。
波々伯部金洲《三越呉服店ポスター「フランス人形(我国に於ける「デパートメント、ストーア」の元祖」)》(1910・明治43年 株式会社三越伊勢丹蔵 カラー版のリトグラフ)。
女性ファッションの洋風化は皇室や華族から始まったと言われています。上記の《昭憲皇太后着用大礼服(マントー・ド・クール)》(1910頃・明治40年代 共立女子大学博物館蔵)は1912年の新年に皇太后がお召になったもの。日本の職人が作り上げた最高の洋装です。肩から着用するトレーンは3.3m、深い緑色のベルベットに大小の菊花が刺繍されています。
溜息がでるような美しさを近くでご覧ください。
洋裁は近代化の象徴として奨励されました。3枚続きの大判浮世絵・安達吟光《貴女裁縫之図》(1887・明治20年 KCI蔵)では、6人の女性たちが分担して洋裁に励んでいます。裁断しているのは着物用の反物とは違い洋服用の幅広い布、炭火を入れたアイロン、ミシンも使っています。6人のドレスがデザインも色も違うところにも注目です。
19世紀後半になると、パリやロンドンの万国博覧会で日本の美術品や工芸品が注目されてジャポニスムがブームになりました。
日本の花鳥植物模様はドレスや壁紙のテキスタイル、食器の模様として用いられるようになりました。イギリスでもっとも古い窯元ロイヤルウースター社がつくった《伊万里写ティーセット》(1881・明治14年 三菱一号館美術館蔵)には日本の菊模様と西洋風の花が描かれています。後ろに並んだドレスには日本の模様が使われています。
日本の着物や染織品は西洋の女性たちを魅了し、女性たちは日本の着物地や着物をほどいたものをドレスにしました。左側にある白地のターナー《デイ・ドレス》(1872・明治4年頃 KCI蔵)のような江戸時代の上流武家階級の着物は、特に好まれたひとつでした。草花や軍配が刺繍されています。このドレスの写真はこの展覧会のチラシやポスターにも使われています。
画家たちは着物姿の西洋女性の姿を多く描きました。朱色の着物を大胆な着方でまとっているのはフランスの女性、簪を差し、扇を広げて得意げです。上記は、日本に魅せられた画家ジュール=ジョゼフ・ルフェーヴルが描いた《ジャポネーズ(扇のことば)》(1882〔明治15〕年 クライスラー美術館 Gift of Walter P.Chrysler,Jr.)です。
この絵の左隣は縦長のポスター《サダ・ヤッコ》で、着物姿の日本女性・貞奴が描かれています。日本髪に着物ですが、当時流行したアールヌーボーの雰囲気があります。貞奴は1900年のパリ万国博覧会の年に公演して大人気となった演劇一座の看板女優でした。
《サダ・ヤッコ》はアルフレード・ミュラー作(1899-1900年 京都工芸繊維大学工芸資料館蔵)。
コルセットで体をきつくしばられていた西洋のドレスは着物にインスピレーションを受け、体を締め付けないデザインや直線的なデザイン、幾何学的な形のドレスにつながりました。
写真中央の赤いドレスはジャンヌ・ランヴァン《イヴニング・コート》(1929・昭和14年 KCI蔵)、長い袖と金色の波模様の生地が日本風です。
最後から2番目のコーナーは1920年代のドレス、直線的なデザインです。右から2番目、シャネルの《イヴニング・コート》(1927・昭和12年頃 KCI蔵)は繊細な金糸模様が蒔絵のようです。
このコーナーは平日に限り、撮影が許可されています。ツイッターなどで#yokobiを付けて発信してください。
たくさんのドレスとアクセサリーをご覧いただきいかがでしたか。
美術情報センター(6月5日〜15日まで休室)ではこの展覧会に合わせ、国内で開催されたファッションをテーマにした展覧会のカタログを紹介しています。是非お手に取ってご覧ください。
着物で来館すると当日観覧料が100円割引、展覧会の半券で近くの施設で割引もあります。
なお、横浜美術館は木曜日が休館日になります。お出かけ前にホームページでチェックしてください。
「ファッションとアート 麗しき東西交流」展 2017年4月15日〜6月25日
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/4/23更新)
- 広告 -