さらば天空の駅!島根・三江線宇都井駅との別れが惜しすぎる

さらば天空の駅!島根・三江線宇都井駅との別れが惜しすぎる

更新日:2018/01/27 17:25

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
2018年4月1日をもって廃止となるJR三江線。江の川の絶景に沿った風光明媚なその車窓風景との別れを惜しむファンは多いのですが、この三江線にはもうひとつ、その廃止を多くの人々に惜しまれている駅があるのです。
それは「天空の駅」と呼ばれる島根県の宇都井駅。のどかな里山風景の中に突如現れる地上20mの日本一の高架駅は、知る人ぞ知る人気スポット。今回は、その廃止前にぜひ見ておきたい宇都井駅を紹介します。

別名「江の川鉄道」、江の川の絶景ともに走る三江線

別名「江の川鉄道」、江の川の絶景ともに走る三江線

提供元:石見観光振興協議会

http://www.all-iwami.com/

三江線は広島県の三次駅と島根県の江津駅の間を結ぶJR西日本のローカル線。過疎化による沿線人口の急激な減少により、残念ながら2018年4月1日をもって廃止されることが決まってしまいましたが、別名「江の川鉄道」と呼ばれるほど、その車窓から見える江の川の美しい風景が人気の鉄道路線です。

全長約108キロ、地方ローカル線としては非常に長い営業距離をもつ三江線は、大きく3つの区間に分かれています。

広島県側の三次駅から口羽駅までの旧三江南線部分、島根県側の江津駅から浜原駅までの旧三江北線部分は、古くから開通していた区間。これらの区間は、言い換えれば昔の路線で、江の川の谷間に沿って忠実に線路が敷かれ、断崖の上を走ったり、右に左に頻繁にカーブしたりと、スピードを落としてゆっくりと進むことが多い区間です。

一方、その両区間を結ぶため、最後に開通した口羽駅から浜原駅までの区間は比較的新しい路線で、江の川の流れに沿ってはいるものの、トンネルや鉄橋も多く、比較的スピードを出して疾走できる区間です。

今回紹介する天空の駅、宇都井(うづい)駅は、この新しい区間にあります。

別名「江の川鉄道」、江の川の絶景ともに走る三江線

提供元:石見観光振興協議会

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別名「天空の駅」、宇都井駅誕生の由来

別名「天空の駅」、宇都井駅誕生の由来

写真:風祭 哲哉

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この宇都井駅があるのは島根県邑智郡邑南町。典型的な日本の里山、ともいうべきのどかな集落にある無人駅なのですが、実はここは「天空の駅」と呼ばれ、テレビ番組でもたびたび取り上げられるほどの人気のスポットなのです。

宇都井駅が「天空の駅」と呼ばれるゆえんは、そのホームや待合室が地上20mのところにあり、地上からの高さとしては日本一の場所にあるからなのです。

この駅がある宇都井地区は両側を山に挟まれているため、宇都井駅はトンネルとトンネルの間の200メートルほどの谷間にあるのですが、両側のトンネルが地中高いところに掘られているため、地上に駅をつくることができず、その高さのまま高架駅にするしかなかったからだと言われています。

別名「天空の駅」、宇都井駅誕生の由来

写真:風祭 哲哉

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地上20mにある天空の駅のホームから見渡せるのは、美しい里山風景。眼下に見える家々の赤い屋根は、島根県の石見地方名産の石州瓦で作られています。

別名「天空の駅」、宇都井駅誕生の由来

写真:風祭 哲哉

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天空の駅まで116段、宇都井駅には階段しかない!

天空の駅まで116段、宇都井駅には階段しかない!

写真:風祭 哲哉

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宇都井駅のホームに行くためには、地上20mの高さまで登らなければなりませんが、残念ながらこの駅にはエレベーターもエスカレーターもありません。そのためこの天空の駅から列車に乗るためには116段の階段を上り下りしなければならないのです。その宇都井駅の階段は、塔のように細くて高い建物の中にあり、まるで古い団地の階段のよう。

天空の駅まで116段、宇都井駅には階段しかない!

写真:風祭 哲哉

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116段の階段の踊り場には、地元の子供たちによる残りの段数や激励のメッセージ、観光名所の案内が貼られていて、キツい階段の上り下りにも少しだけ心が和みます。

天空の駅まで116段、宇都井駅には階段しかない!

写真:風祭 哲哉

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階段を上り終わったところに小さな待合室があります。宇都井駅はもちろん無人駅なのですが、地元の方々が協力をしてくれるのでしょうか、座布団が用意され、室内もきれいに掃除されています。
また待合室の隅には何冊ものノートが置かれていて、全国からこの駅を訪れてきた人々のメッセージが書きこまれています。

里山と天空の駅とのコラボレーションは、まるで現代アート

里山と天空の駅とのコラボレーションは、まるで現代アート

写真:風祭 哲哉

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宇都井駅の建物は、一見すると、日本の原風景のような里山とは全く不釣り合いな無骨な建築物のようにも思えますが、しばらく眺めていると、次第にこの風景にすっかり溶け込んでいるように見えてくるから不思議です。

例えば上の写真の風景は「逆さ宇都井」と呼ばれ、ファンに人気の眺め。田植え前後の田んぼの水面に新緑の山々と天空の駅が映り込む様子は、まるで綿密な計算の上、造形された質のいい現代アートのようです。

里山と天空の駅とのコラボレーションは、まるで現代アート

写真:風祭 哲哉

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この美しい里山風景を背景とした宇都井駅の姿は、春の新緑の季節はもちろんのこと、夏の夕暮れや秋の紅葉、そして冬の雪景色と、季節を問わず、そして時間も問わずどれもとても魅力的なのです。

こうして実際に目にしてみると、宇都井駅が天空の駅、と親しまれ、たくさんのファンを持つのは、ただ単に高い場所にある珍しい駅だから、という理由だけではないことがわかります。

里山と天空の駅とのコラボレーションは、まるで現代アート

提供元:石見観光振興協議会

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この宇都井駅をベースとして、毎年秋の夜に行われる人気のイベントが「INAKAイルミ@おおなん」。これは例年、天空の駅、宇都井駅が厳かな青にライトアップされ、その眼下に広がる里山集落では黄金色の「稲穂イルミ」や小川にホタルが乱舞する様子を再現した「ほたるイルミ」などが展開される、田舎の魅力たっぷりのイルミネーションイベントです。

想像してみてください。もし本当に「銀河鉄道」があるとすれば、それはこのライトアップされた天空の駅に三江線の列車が発着する姿そのものではないでしょうか。

天空の駅、宇都井駅とのお別れまでカウントダウン

多くのファンに愛されている天空の駅、宇都井駅ですが、お別れの時は着実に迫ってきています。その前にぜひ一度、訪れてみてほしいのですが、現在すでに三江線にはその廃止を惜しむファンがたくさん駆けつけています。JRも車両を増結したり、一部増便を予定するなど混雑対策をとっていますが、最後の春休みは相当の混雑が予想されますので、なるべく早めに、ピーク時を外したスケジューリングをおススメします。

2018年4月1日の三江線廃止以降、宇都井駅がどういう運命をたどるのか、まだ正式には決まっていませんが、日本一の天空の駅と素晴らしい里山風景、その両方が見事に溶け合う宇都井駅とお別れするのは、やっぱりちょっと惜しすぎますね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/05/05 訪問

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