北九州の要港にそびえる美麗な塔屋〜門司港・旧大阪商船〜

北九州の要港にそびえる美麗な塔屋〜門司港・旧大阪商船〜

更新日:2017/05/12 13:28

明治18(1885)年、九州の要地に港を建設してこれを鉄道で直結させることが国運の高まりに繋がるとし、その要地を門司と定めました。そして、明治23(1890)年に開港。翌年に門司港の駅は列車が乗り入れ運行を開始。ここから門司は九州一のペースで発展してゆくのです。

その門司港のシンボル的存在が、日本海運業で大きなシェアを誇った大阪商船の門司支店でした。今回はそんな旧大阪商船門司支店のご紹介です。

“辰野式”へのオマージュが込められた外観

“辰野式”へのオマージュが込められた外観
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旧大阪商船は門司港の船溜まりの奥にあります。大正6(1917)年に建てられた海運会社の大阪商船門司支店を修復したもので、1階を複数の大陸航路を有した門司港の客船を待つ人々のための待合室として、2階はオフィスとして使用し、塔屋は夜間になると灯台の役割を果たしていました。

昭和39(1964)年、大阪商船は三井船舶と合併して大阪商船三井船舶となりますが、それ以降も大阪商船三井船舶門司支店として平成3(1991)年まで使用されました。その後、移転計画によって解体される所を北九州市が買い取り、門司港港湾地域活性化事業によって外観復元されたのです。

建物はスレート葺き木造2階建ての一部レンガ型枠コンクリート造。オレンジ色の部分はレンガではなくレンガタイルです。外壁にレンガと花崗岩を露出させた東京駅などで知られる建築様式であり、多用した建築家の名から“辰野式”とよく呼ぶのですが、こちらはタイルとコンクリートでこれを模した外観になっています。

趣あるアーケード

趣あるアーケード
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内部は現代的にしっかりと造り込まれており風情は感じられませんが、道路に面した北東側と北西側に設けられたアーケードは魅力的です。外観から続くオレンジ色と灰色のコントラストに加え、天井の白、格子戸の黒が近代建築らしいレトロな趣を醸し出しています。写真は北東側ですが北西側にはカフェがオープンしており、ゆっくりと寛ぎながら旧大阪商船のアーケードの趣を味わうことができます。

白い空間に黒塗りの階段が続く塔屋

白い空間に黒塗りの階段が続く塔屋
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塔屋の内部も1階だけは自由に覗くことができます。壁や天井が白い中、黒塗り木製の屈曲した階段が螺旋状に続いており、柔らかな日差しが大きく取られた窓から階段の隙間を縫って降り注いでいます。照明も可愛らしいものが吊るされています。

朝や夜には表情を変えます

朝や夜には表情を変えます
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朝や夜には表情を変えるのも旧大阪商船の魅力です。朝は朝日を受けてレンガタイルのオレンジ色が一層明るくなり、その明るさの分だけピラスターや半円アーチ、幾何学模様など建物のデティールがつくる陰影の深さも強まっています。

大正期には幾何学模様や渦巻の植物模様の意匠を取り入れたセセッション様式という建築様式が流行しましたが、こちらにも随所で幾何学模様が見られ、塔屋では渦巻模様の柱頭も確認できます。こうした大正日本の建築界のデザインの流行もよく示しています。色鮮やかさこそ落ちますが、コントラストが際立ち日中とは異なった美しさです。セセッション様式の特徴も確かめながら朝日を受けた姿を味わいましょう。

朝や夜には表情を変えます
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また、ライトアップされた夜間の姿も必見です。暖色の柔らかな明かりがオレンジ色をしたレンガタイルとよく合い、まさに門司港レトロ地区にふさわしいレトロさを醸し出しています。塔屋内部の照明が階段のシルエットを露わにし、塔屋頂上部では明かりの色を白っぽく変え、また趣の異なった優美な姿を魅せています。

今も昔も門司港の象徴的存在です

いかがだったでしょうか。建設当初、関門一の高塔を有し、灯台の役割を帯びて門司港の象徴的存在だった旧大阪商船は、関門一の高さこそ譲りましたが、外観とデティールの美しさから現在もなお門司港レトロ地区の象徴的存在であり続けています。

門司港には魅力的な近代建築が多数残っていますが、変わることなく随一の美しさを誇る旧大阪商船は門司港の中でも必見の名建築です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/04/24 訪問

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