東京都国立市「ママ下湧水」と「矢川おんだし」って何?

東京都国立市「ママ下湧水」と「矢川おんだし」って何?

更新日:2017/05/01 19:21

沢原 馨のプロフィール写真 沢原 馨
東京都国立市といえば一橋大学を抱える“学園都市”。しかし市域の南部には長閑な農地の風景が広がっているのをご存知でしょうか。そこに「ママ下湧水」と「矢川おんだし」と呼ばれる場所があります。一度聞くと妙に印象に残る、その名前。いったいどんなところなのでしょう。「ママ下湧水」と「矢川おんだし」をご紹介しましょう。

のんびり歩きたい、国立市南部に残る農地の風景

のんびり歩きたい、国立市南部に残る農地の風景

写真:沢原 馨

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東京都国立市は一橋大学など、いくつもの学校が建つ“学園都市”。しかし、市域の南部、甲州街道(都道256号)と多摩川との間に位置する地域には今も農地が残り、長閑な風景を見ることができます。緑豊かな、素敵な風景です。のんびりと歩いてみたくなりますね。

のんびり歩きたい、国立市南部に残る農地の風景

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その農地の風景の中に、「ママ下湧水」と「矢川おんだし」と呼ばれる場所があるのです。一度聞くと、その語感が妙に記憶に残り、興味をそそられる名前です。「ママ下」?「おんだし」? いったいどんなところなのでしょう。

「ママ」って何? 「ママ下湧水」を訪ねてみよう

「ママ」って何? 「ママ下湧水」を訪ねてみよう

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「ママ下湧水」の「ママ」とは、この辺りの古語で、「小さな崖」のこと。だから「ママ下湧水」とは「崖下の湧き水」のことなのですね。この辺りは、太古の時代に多摩川の流れが形作った河岸段丘のひとつ、「青柳崖線」が通っています。その「青柳崖線」の崖下に湧き出る湧水を、この辺りでは昔から「ママ下湧水」と呼び、生活や農作業に利用してきたのです。

「ママ」って何? 「ママ下湧水」を訪ねてみよう

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湧水は今も枯れることなく、「ママ下」に湧き出ています。湧水の傍らに設置された案内パネルによれば、昔はこの湧き水を利用して山葵(わさび)の栽培も行われていたというのですから、ちょっとびっくりです。今も地元の人が湧き水を汲みに来る姿を見ることがありますよ。

「ママ」って何? 「ママ下湧水」を訪ねてみよう

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「ママ下湧水」の周辺は自然公園として環境が保全されていて、緑濃い景観を保っています。昔ながらの崖線の表情を残した風景が魅力で、ウォーキングを楽しむ人たちも多く訪れるところなのです。

「ママ下湧水」からの流れを追いかけてみるのも楽しい

「ママ下湧水」からの流れを追いかけてみるのも楽しい

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「ママ下湧水」の湧き水は清らかな小川となって崖下を流れていきます。小川に沿ってのんびりと散策を楽しみましょう。すぐ近くを交通量の多い道路が通っていますので静けさは望めませんが、木々の茂った崖線に沿って、澄んだ小川の流れを追いかけてみるのは楽しいものですよ。

「ママ下湧水」からの流れを追いかけてみるのも楽しい

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途中には親水公園のように整備されているところもあり、初夏から夏にかけては近所の子どもたちの水遊びの場になっています。人工的な設備ではなく、湧水の流れる小川で水遊び、楽しそうですね。

「矢川おんだし」から谷保分水を辿って散策を楽しもう

「矢川おんだし」から谷保分水を辿って散策を楽しもう

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「青柳崖線」に沿って流れていく小川は、その先で行く手を遮られます。崖線の上、北から流れてきた矢川が、崖下に流れ出てきているのです。矢川は崖線とはほぼ直角に南へ流れ、「ママ下湧水」からの流れと共に谷保分水という疏水に合流します。

ここが、「矢川おんだし」。「おんだし」とは、「押し出し」のこと。崖下に流れ出てくる川の流れの様相を、そう呼んだものなのでしょう。二列に並んだ流れが、これもほぼ直角に谷保分水に合流する様子が特徴的な景観を生んでいます。

「矢川おんだし」から谷保分水を辿って散策を楽しもう

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矢川が合流する谷保分水は府中用水と呼ばれる疏水の支流です。府中用水は農繁期には多摩川から取水して水量が豊富ですが、農閑期にはほとんど水は流れていません。支流である谷保分水には「ママ下湧水」からの小川と矢川が流れ込み、下流部に清らかな流れを生み出しています。周辺は長閑さの漂う風景で、谷保分水に沿っての散策が楽しいところです。

「矢川おんだし」から谷保分水を辿って散策を楽しもう

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谷保分水はほぼ青柳崖線に沿って流れていきます。途中で、また別の湧水からの流れも合流しています。水の流れは見ているだけで涼やかな印象ですね。その景観を楽しみながら、のんびりと散策を楽しむのがお勧めです。

「谷保の城山」に足を延ばしてみるのもお勧め

「谷保の城山」に足を延ばしてみるのもお勧め

写真:沢原 馨

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谷保分水の流れに沿って歩いて行くと、やがてヤクルト中央研究所の横へと至ります。中央自動車道からも見える、あの特徴的な建物ですね。谷保分水はヤクルト中央研究所の先で暗渠になってしまいますが、さらに進めばまた長閑な風景の中を流れる疏水の景観を楽しむことができますよ。どこまで辿るかは、体力と時間と興味次第というところでしょうか。

「谷保の城山」に足を延ばしてみるのもお勧め

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この辺りまで辿ってきたら、ヤクルト中央研究所の北東側に位置する「谷保の城山(じょうやま)」へ立ち寄るのがお勧めです。「谷保の城山」は中世に三田氏の城館があったところ。鬱蒼とした樹林の中に今も往時の面影を残しています(一部私有地ですのでご注意を)。中世の城郭跡に興味のある人なら見逃せないのでは?

「谷保の城山」に足を延ばしてみるのもお勧め

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「谷保の城山」の脇には古民家「旧柳澤家住宅」も移築されていて、これもぜひ見ておきたいですね。この古民家は江戸時代後期に建てられたもの。柳澤家は明治から昭和初期にかけて養蚕業と漬物業を営んでいたのだとか。その佇まいや残されている調度品などから、往時の生活ぶりを想像してみるのも楽しいですよ。

国立市に残る“農”の風景、のんびりウォーキングで楽しもう

学園都市のイメージが強い国立市に、こんな風景があるのをご存じない方も少なくないのでは? 長閑さを感じさせる“農風景”の中、湧水や疏水、崖線、中世の城館跡、古民家と、マニア心をくすぐる要素がたくさん。そうしたものに少しでも興味があれば、ぜひとも訪ねてみたいところです。特にマニアな趣味はなくても、水の流れに沿ってのんびりと散策を楽しむのはいいものですよ。

「ママ下湧水」には駐車場がありませんので、公共の交通機関を使って訪ねましょう。JR南武線の矢川駅から「ママ下湧水」まで1kmほど。のんびり歩いて向かいましょう。「谷保の城山」まで歩いたら、もうひとがんばりして谷保天満宮へ立ち寄り、谷保駅から帰路を辿るのがお勧めコース。国立市の農風景の中をのんびりウォーキング、楽しんでくださいね!

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/05/02 訪問

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