写真:M Maririn
地図を見る名古屋城から徳川園に至る「文化のみち」エリア。ここは江戸時代には中・下級武士が住み、明治から昭和の初めには財界人や文化人が屋敷を構えた場所で、今でも歴史的建造物がいくつも残っています。その一角にあるオレンジ色の屋根の華麗な洋館が今回ご紹介する「文化のみち二葉館」です。
この建物のかつての主の一人は日本初の女優としてアメリカやフランスでも舞台に立った川上貞奴。もう一人は福沢諭吉の養子で木曽川水系の発電所を建設し電力王と呼ばれた福沢桃介。旧知の中であった二人は事業のパートナーとしてこの館で共に暮らしていました。建築当時は東二葉町にあったことから「二葉御殿」と呼ばれた和洋折衷の建物を現在の場所に移築・復元し、平成17年に開館しました。川上貞奴と福沢桃介の愛用の品や郷土ゆかりの文学者の資料などと共に豪華な内装が施された館内を公開しています。また、「文化のみち」エリアの紹介も行っています。
写真:M Maririn
地図を見る建物を訪れた人々を迎えてくれるのがモダンな内装の大広間です。当時、名古屋で川上絹布(株)という絹布の製造工場の女社長だった川上貞奴、かたや木曽川の電源開発に取り組んでいた福沢桃介。まさしく名古屋のセレブであった二人はたびたび政・財界人や文化人を二葉御殿に招待し、贅を尽くしたこの部屋でもてなしていたそうです。
部屋には当時使われていたソファーや美しいステンドグラスが復元され、大正時代の優雅な雰囲気を感じられます。ここではパネルやビデオなどで二葉館の復元の様子や文化のみちの歴史などが紹介されています。
写真:M Maririn
地図を見る大広間の中でもひときわ目を引くのがこの螺旋階段です。電気の力で明るく輝く照明の下、まるで舞台のセットのような階段を美しく着飾った貞奴が下りてくる姿は、多くの人の目を釘付けにしたことでしょうね。
写真:M Maririn
地図を見る二葉館には4つの素晴らしいステンドグラスがあります。これらをデザインしたのは福沢桃介の義弟の杉浦非水。東京美術学校(現東京芸術大学)出身で多摩帝国美術学校(現多摩美術大学)の校長を務め、日本のグラフィックデザインの先駆者といわれるほどの人物です。
こちらは大広間西側にある「初夏」と題されたもの。水辺に咲くシャクナゲやユリなどの花を色彩豊かに描いた美しいステンドグラスです。
写真:M Maririn
地図を見るこちらは大広間南側にある「踊り子」。天女が躍るようなデザインはライトを浴びて舞台に立つ貞奴をイメージしてつくられたものでしょうか。
このほかにも1階展示室1では槍ヶ岳などの山をあらわした「アルプス」、2階展示室7では龍田川に落ちる紅葉という日本的なモチーフのステンドグラスを見ることができます。
写真:M Maririn
地図を見るここで川上貞奴をもう少し詳しくご紹介しましょう。NHKの大河ドラマにもなった川上貞奴(本名は小山貞)は明治4年(1871年)生まれ。芸者置屋の養女となり16歳で芸者となった貞はその才能で売れっ子となり「奴」と呼ばれるようになりました。福沢桃介と出会ったのもこの頃です。
23歳で「オッペケペー節」で有名な役者の川上音二郎と結婚し、川上一座の興行で渡ったアメリカ・サンフランシスコの公演で女優「貞奴」として初めて舞台に立ちます。アメリカ各地の公演が評判になり、その後パリ万博で公演した時にはフランス政府から勲章を授かり「マダム貞奴」として世界にもその名が知られたのです。
1階展示室1にはドイツ人画家ミュッラーが1900年頃に描いた貞奴のポスターやピカソが描いた貞奴のデッサン、現存する舞台衣装のレプリカなどが展示されています。
写真:M Maririn
地図を見る洋館とつながっている和室(1階展示室2,3,4)には貞奴愛用の品が展示されています。大女優が使った品はやはり華やかですね。また、貞奴愛用の着物や帯も季節に合わせて展示されています。
写真:M Maririn
地図を見る木曽川水系の発電事業を進めていた福沢桃介は二葉館を当時最先端の電化住宅にし、室内や廊下の照明にもこだわりました。館内には大理石でできた大きな配電場や貞奴がどこにいても女中さんを呼べた電気式のベルなど、当時の最先端電化装置を見ることができます。
文化のみち二葉館の二階には名古屋ゆかりの文学者の資料も展示され、作家・城山三郎の書斎も再現されています。また、企画展や各種イベントも行われますので、利用案内などと合わせて関連MEMOにあるHPでご確認ください。
文化のみち二葉館付近には「旧豊田佐助邸」や「文化のみち橦木館」などがありますので、あわせてご覧になってください。
それでは皆さんの旅が思い出深いものになりますように!
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(2024/3/29更新)
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