高野山には古くより多くの参拝者がおり、山内の塔頭寺院が営む宿坊に滞在するのが一般的でした。その1つが高野山「福智院」で、約800年前に覚印阿闍梨により開かれ、愛染明王という福徳円満所願成就のご利益がある仏様がご本尊になっている寺院が営む宿坊です。
この「福智院」は金剛峯寺まで徒歩数分という距離が魅力の上、高野山で唯一の天然温泉を完備しているので大変人気のある宿坊です。さらに近年、高野山を含めた「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界遺産に登録されたことにより、外国人の受け入れ態勢をいち早く行った結果、海外からの旅行者が急増し、日本らしさを求める外国人にも大人気の宿坊となっています。
なお、高野山は真言宗ですが、宗派を問わずに参詣できる場所なので、福智院を利用する人も宗派は一切関係なく宿泊できます。
宿坊というと、普通の旅館や民宿などと何かが違うかと思われる方も多くいるようですが、大きな違いはありません。朝早起きをして院内を掃除しなくてはいけないなどということもありません。どちらかというと旅館よりは民宿などに近いでしょう。
そんな宿坊でも高野山詣での他に色々な体験が準備されています。寺院なので加持祈祷や護摩供養は当然のことですが、写経や写仏、念珠作りといった体験を行うことができます。また、朝6時から始まる本堂での読経や法話(朝のお勤め)に参加することもできます。なお、朝のお勤めで使われる本堂は普段は入ることができない場所になっています。
こういった体験はどれも参加必須ではありませんが、せっかくの機会なので参加してみてはいかがでしょうか。ただし、事前に予約が必要であったり、料金が必要なものもあるので、宿泊前に確認して下さい。
「福智院」の客室は全部で66室あり収容人数は250名と高野山の宿坊でも最大級の規模を誇ります。そして客室は、1人用の4.5畳トイレ付和室から5名用の8畳+次の間付で風呂・トイレ・洗面なしの二間続き和室まで用意されています。基本的な和室の多くには、風呂・トイレ・洗面が付いておらず、廊下にある共同の場所を利用することになります。また、ほとんどの客室では内鍵のみとなるので、貴重品は部屋に備え付けの金庫を利用となります。こういった旅館やホテルとは違うところも寺院に泊まるという宿坊らしさです。
旅行では滞在先の客室内備品も気になるところですが、テレビやエアコンは完備されております。さらにバスタオル・タオル・歯ブラシ・浴衣も用意されているので、持参する荷物は少なくて済みます。
一方サービスの面ですが、チェックイン時は係の人が館内を案内しながらお部屋まで案内をしてくれ、客室には茶菓子の用意もあり、夕食中には布団を敷いてくれるなど旅館のようにしっかりとしています。
提供元:高野山温泉「福智院」
http://www.fukuchiin.com高野山の参詣はかなり広範囲を歩き回るので、1日の疲れを癒すことができる温泉にはいれることは最高の幸せです。高野山で唯一の温泉を持つ「福智院」のお風呂は全てが天然温泉になっており、清掃時間を除き24時間入浴することが可能なので、昼夜を問わずに温泉を楽しむことができます。
院内にはいくつかの浴場があり、「天女」の名がついた女性用浴場は、高野槙で作られた内湯と露天の岩風呂があります。また、浴場入口のすぐ側には湯上り処が用意されており、飲物の自動販売機があります。なお、ここの湯上がり処は男性も利用可能です。
泉質:単純温泉
効能:神経痛・筋肉痛・慢性消化器病・疲労回復など
提供元:高野山温泉「福智院」
http://www.fukuchiin.com男性用の浴場「桃源」は1つ上のフロアにあります。石造りの内湯と高野槙で作られた露天風呂があり、露天風呂には湯船が大小合わせて3つあります。また、サウナもあるので疲労回復には最高です。なお、サウナは女性浴場にもあり、利用時間は15:00〜20:00です。
さらに、院内のフロント付近には「畳の湯」があります。浴室内の床に畳が敷かれており気持ちがいい上、イグサの香りもするのでとてもリラックスできます。(冬季休業あり)
宿坊に泊まる楽しみの1つに食事があります。寺院なので肉や魚などは一切使わずに、野菜や海藻などの植物性食品で作られた精進料理となります。一般的には質素なイメージの精進料理ですが、豆腐料理を中心に彩豊かな盛り付けや、絶妙な味付けを堪能できる大変美味しい料理になっています。
これほど料理が美味しいと、お酒と一緒にいただきたいと思うところです。寺院でお酒が飲めるか心配される方もいると思いますが、ご安心下さい!こちら「福智院」では、お酒もジュースも普通に注文することができます。仏教の五戒の1つ不飲酒戒というものがあるので宿坊によっては「般若湯」という言い回しで提供されることもあるようです。
なお、夕食の時間はチェックインをした際に伝えられますが、大抵の場合18時前後です。また、食事時間の関係もありチェックインは19時までの対応となっているので、到着が遅くなりそうな方は注意して下さい。なお、食事場所は人数や利用客室によって決まりますが、大抵の場合は客室かグループ毎の会食場となります。
宿坊の朝は早いです。朝のお勤めをに参加するなら起床は5時台。そして朝のお勤めが終わると7時前ですが、福智院のチェックアウトが9時までのため、朝食は7時にするのがよろしいでしょう。
朝食会場は夕食と同じ場所で、内容は精進料理となります。寺院の朝食なので一汁一菜や一汁三菜と考えがちですが、夕食同様に豆腐を利用した食材が中心で、旅館の朝ごはんのようにとても美味しい内容です。また、ご飯のおかわりもできます。
福智院は宿坊の中でも広い敷地を持ち、院内には見事な庭園がいくつかあります。それらは全て京都の東福寺方丈庭園などを手がけた作庭家、重森三玲氏によるものです。中央ロビー近くにある石庭「蓬莱遊仙庭」は枯山水蓬莱式の庭園で、朝・昼・晩と違った表情を楽しむことができます。
また、庭園前にはコーヒーコーナーがありのんびりとコーヒーを飲みながら庭園を眺められるようになっており、周辺では無料WiFiも利用できるので朝夕には多くの外国人も庭園を眺め佇んでいます。
院内には売店もあります。飲物などコンビニで売られているようなものはなく、朝食に出された梅干しやこうや豆腐など高野山のお土産と、数珠など寺院に関連したものがほとんどです。念珠作り体験の念珠もこちらの売店で販売していますが、それほど遅い時間までは営業していないので、早目の利用をおすすめいたします。
高野山は宗派を問わずに参詣できるので、今まで知らなかった方も是非この機会に旅行計画を立ててみてはいかがでしょうか。奥の院も含めてじっくり回ると2日以上は欲しいところです。それならば、今回ご紹介した福智院に泊まってじっくりと高野山を参詣して下さい。旅館やホテルではサービスや快適性を求めますが、ここ宿坊では早起きをしたり部屋に不便があってもいい経験になります。その一方、美味しい精進料理やゆっくりと旅の疲れを癒すことができる温泉など、宿坊にしては想像以上の経験を楽しむこともできます。関西以外から行く人でも宿坊に泊まることを考えれば、高野山へ足を運びたくなりますよ。
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(2024/4/20更新)
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