トイレ積み重なる!廃材アートLA郊外ノアプリフォイ博物館

トイレ積み重なる!廃材アートLA郊外ノアプリフォイ博物館

更新日:2018/08/02 11:16

Chanos Mayaのプロフィール写真 Chanos Maya トラベルコンサルタント、ワイナリーツアーアドバイザー
ロサンゼルスから東に約2時間、カリフォルニアの大地に静かに並ぶ100のアート。戦後アメリカで広がっていた人種差別に変革をもたらそうと活動した黒人アーティスト、ノア・プリフォイが作った屋外博物館「ノアプリフォイミュージアム」には強い日差しと熱風にさらされた砂漠に、力強い存在感を放つアートの数々が展示されています。使い古された機械や自転車などといったジャンクが芸術となって生き返るユニークな博物館です。

米・ジョシュアツリー国立公園近くの別世界「ノアプリフォイ博物館」

米・ジョシュアツリー国立公園近くの別世界「ノアプリフォイ博物館」

写真:Chanos Maya

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ロサンゼルスから車で東に約200q、車で約2時間半のところにあるノアプリフォイ博物館。高層ビル群からロサンゼルス近郊の街を抜けると、景色は急に単調に。からっからの砂漠とごつごつとした山が目の前に迫る光景が広がります。

ノアプリフォイ博物館のすぐそばにある国立公園「ジョシュアツリー国立公園」。東京都よりも大きなサイズの公園にはそんな山々が迫る砂漠特有の大きな岩が転がり、宇宙のような光景の中のハイキングやトレッキングが大人気のスポットです。

そんなジョシュア国立公園から車で走ること10分。やむことなく吹き続ける砂漠の風と強い太陽の下、茶色い砂だらけの不毛な大地にあらわれるノアプリフォイ博物館。にぎやかで生き生きとした国立公園とはうってかわって、役割を終えた廃材が静かに並んでいます。

廃材に息を吹き込んだノアプリフォイ

廃材に息を吹き込んだノアプリフォイ

写真:Chanos Maya

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第二次世界大戦中は海軍の軍人だったノア・プリフォイ。戦争が終わり、彼は40歳を前にカリフォルニア芸術大学を卒業しアーティストとなりました。黒人に対する差別を発端に、1965年の8月に起こったロサンゼルス近郊での「ワッツ暴動」。アフリカ系アメリカ人だったノア・プリフォイはその暴動で出たがらくたを拾い集めて50を超えるオブジェを制作しました。ワッツ暴動を廃材を使って表現した作品の数々はカリフォルニアだけでなくアメリカ全土で展示され、彼はアートを利用して社会の変革を訴えます。

暴動後の20年以上をノア・プリフォイはがらくた、廃材を探すことに時間を費やしました。1980年代、現在のノアプリフォイ博物館のあるジョシュアツリーへと引っ越し、その時から本格的な制作を開始します。

ノアプリフォイ博物館はそんな彼の1989年から亡くなるまでの2004年までの15年間の作品が集まるミュージアムです。

古い便器から錆びついた鉄骨まで、様々なものが交錯する不思議なアート

古い便器から錆びついた鉄骨まで、様々なものが交錯する不思議なアート

写真:Chanos Maya

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まっさらなキャンバスに絵を描く、木から木材を切り出して何かを建てる、一から何かを作り上げることはごく一般的な芸術。しかしノアプリフォイ博物館の作品はすでに手元にあるものを集合させて芸術として表現する「レディメイド」といわれるユニークな手法がとられています。ノア・プリフォイは何か一つのフレームの中で役割を終えてもすべての一生が終わったということではないということをこの手法で明らかにしました。

トイレの便器が重なってできたアーチ、古い電話機やキーボードなどで作られたメリーゴーランドのような大きな作品、整然と連なる自転車・・・100以上の作品が砂漠の強い日差しのもと、静かに並んでいます。

多くの作品が巨大で、私たちはその中を歩くことができます。外側から、そして内側から作品を見られるのもこの博物館の魅力です。

古い便器から錆びついた鉄骨まで、様々なものが交錯する不思議なアート

写真:Chanos Maya

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一つひとつをじっくり見ていると、自分が子供のころに使ったのと同じ電話機、小学校だったころ職員室で先生たちが使ってい大きなワープロ・・・かつて自分が見たり経験した「あの時」にタイムスリップしたような不思議な気分。

1960年代〜80年代にかけて集められた廃品が中心となって作り上げられたノア・プリフォイの作品は、この時代より後に生まれた世代には少しわかりにくいかもしれませんが、多くの人にとってはアートを見ている現実と過去の記憶がよみがえるはずです。

一度は廃棄されたものが芸術作品として生まれ変わる一方で、荒涼とした砂漠の中でやむことのない風に24時間あたり続ける作品の数々は、なんとも言えない対照的な姿と影を見せつけます。自然と廃棄物といった生と死、そして現在と過去、180度異なるものが接しあった不可思議な作品がカリフォルニアの大地に広がる光景。この空間こそノアプリフォイが意図した芸術表現なのです。

古い便器から錆びついた鉄骨まで、様々なものが交錯する不思議なアート

写真:Chanos Maya

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ノア・プリフォイがアートで表現したのは対照的な物事の側面だけではありません。自分自身の作品に、戦後アメリカに広がっていた人種差別を変革を訴え、政治的、社会的メッセージを込めてきました。

作品の一つ「Shelter」は放火されてしまった黒人の家から集められた木材などでシェルターのような建物が作り上げられています。ところどころ焦げたような跡のある木の天井や使い古されたバスタブなど、一つひとつの素材を見ているとその背景に思いがいたります。

そういった作品を見て、暗く、悲しくなるというよりは、はっと考えさせられる瞬間がたくさんあります。ノア・プリフォイの作品は見る人それぞれに異なる様々な印象を与えています。

「環境芸術」ジョシュアツリーの砂漠と一体化するユニークな博物館

なぜこの数の作品が屋外にあるのか、気になった方もいらっしゃるかもしれません。芸術が自然の中でどう変化していくのか。変化は人生のようにアートの中にもあるべきだというノア・プリフォイのポリシーがこの博物館に詰められています。「環境芸術」ともいわれている彼の作品の数々がカリフォルニアらしいダイナミックな景観の中に点在するユニークなノアプリフォイミュージアム。晴れた日にはまぶしいくらいに輝く奇抜な作品も、風の強い嵐の日には人を寄せ付けないような、そんな違った顔を見せるはずです。

それぞれの作品にはタイトルや説明はつけられていませんが、入り口近くの箱の中に博物館の俯瞰図とタイトルなどが記載されたパンフレットが置かれています。それを見ながら回るのがおすすめです。入場料は無料です(2017年9月現在)。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/04/08 訪問

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