写真:万葉 りえ
地図を見る鳴門大橋から徳島県に入ればすぐに見えてくる巨大な美術館。それがポカリスエット等でおなじみの大塚グループが創立75周年記念事業として開館した大塚国際美術館です。ここの大きな特徴は陶板に特殊な技術で世界中の名画を焼き付け、しかもそれが原寸大で見られるということ。それも、ただの複製ではありません。収蔵元や画家の子孫などの権利者から、いわば「お墨付き」を得ている作品なのです。
用いられた釉薬は約20000色。さらに筆遣いや傷みも忠実に再現されているのです。各収蔵先の許可をとるだけでも大変だったと思いますが、こちらでは名画とともに写真撮影ができるのも見逃せない魅力です。
西暦79年8月に起きたヴェスヴィオ火山の噴火で一日で埋もれてしまったポンペイの街。まずご紹介するのは、世界遺産であるポンペイの別荘に造られていたディオニソスに捧げた「秘儀の間」です。
なぜ「秘儀」なんて名が付いているのか気になりますよね。ディオニソスとは、バッカスともよばれるギリシア神話に出てくる酒の神のこと。この神様、古代ローマでは人々の信仰を集めていたのですが、ローマ帝国時代になると酒を飲んで気ままに過ごす姿からか社会的秩序を乱すとして禁止されてしまったのです。それでもローマから離れたポンペイでは信仰が続けられました。ここに描かれているのは、ディオニソスへの貴婦人の入信儀式の様子ではないかといわれています。
実は、火山が噴火する前は黄色い壁だったのが、火山の噴火ガスの影響を受けて赤色に変色したと考えられています。ディオニソスに捧げたから赤ワイン色に…と想像は尽きませんね。
写真:万葉 りえ
地図を見る次にご紹介するのは1305年にジョット・ディ・ボンドーネがフレスコ画で描いた、イタリアのパドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂です。天井を埋め尽くす紺碧の色が印象的ですよね。
こちらの絵画、奥行きを持たせる遠近法や動きや表情を出す等、これまでのビザンティン美術とは一線を画すもの。ですから、美しさだけでなくイタリアルネサンスの先駆けとして西洋美術史上重要な作品になっています。
写真:万葉 りえ
地図を見るここは高利貸しで財を築いた一族のエンリーコ・スクロヴェーニが家族のために作った、いわば私的な礼拝堂。この時代、高利貸しはキリスト教で重大な罪とされていて、エンリーコの父のレジナルドは、ダンテの「神曲」に悪名高い高利貸しとして登場するほどでした。
聖母マリアに捧げられた礼拝堂なので、父キアヨムと母アンナの姿もありマリアの生涯が誕生前から描かれています。また、キリスト誕生の「東方三博士の礼拝」の図に描かれたベツレヘムの星は、1301年にジョットが実際に見たハレー彗星をモデルにしたといわれています。
そして、天国と地獄図の下方にはこの礼拝堂を聖母マリアに捧げるエンリーコの姿も描かれています。金色でも装飾を施したという大変豪華な礼拝堂。それはキリスト教と高利貸しという仕事との間で、エンリーコが願った救いの大きさを表しているのでしょう。
写真:万葉 りえ
地図を見る次にご紹介するのは、ローマ教皇の傭兵隊長だったフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ(1422〜1482)のストディオーロ(小書斎)です。深い教養があった彼は、ウルビーノ大公国の君主となって、この町をローマやフィレンツェと並ぶ文化の中心へと押し上げました。今も残る彼の居城パラッツォ・ドゥカーレはルネサンス期の重要な建築物の一つです
ルネサンス期は書斎が知識人の間で流行しており、書斎の上方は古今の著名人の肖像画で埋め尽くされています。
写真:万葉 りえ
地図を見る注目していただきたいのは、床からの寄せ木細工の装飾です。壁際に置かれた鍵盤楽器も開いたままの戸棚の戸も、現地ではすべて寄せ木細工の模様。大塚国際美術館では、それらの模様も全て陶板で再現しています。
槍試合で片目しか使えなくなり、残されているフェデリーコの肖像画はほとんどが横向きです。この美術館にも肖像画があるのですが、それも夫人の横顔とともに見つめあった構図です。1437年に結婚したものの夫人が死去。1460年に再婚したのが年の離れたパッティスタでした。ハンサムとは言えないフェデリーコですが、輿入れ当時14歳だったパッティスタとも仲睦まじく6人の子が成人しました。
このウルビーノはラファエッロの生家がある町としても知られています。母だけでなく11歳で父も亡くしたラファエッロ。父と交流があった画家の工房へ入るためにこの町を離れます。しかし、晩年まで「ラファエル ウルビナス(ウルビーノのラファエッロ)」と著名するほど深く愛した故郷でした。
写真:万葉 りえ
地図を見る聖マルティヌスに捧げられた聖堂内では、ステンドグラスから入った光がその神々しい姿を浮かび上がらせる・・・。ご覧いただいているのは聖マルタン聖堂(フランス)ですが、他にも聖ニコラウス・オルファノス聖堂(ギリシア)などの厳かな空間を環境展示で体感していただけます。
そんな展示を見ながら、ぜひ利用していただきたいのが音声ガイドです。
提供元:大塚国際美術館
地図を見る正面玄関から入ると、長いエスカレーターでまず着くのがB3階です。ここが全部周れば約4キロメートルにもなるという鑑賞ルートの出発点。システィーナホールの入り口前なのですが、すぐ横にミュージアムショップと音声ガイド貸し出しコーナーがあります。
音声ガイドは有料なので、滞在が短い場合は強くお勧めしません。しかし時間をかけてご覧になる場合は音声ガイドは強い味方。なぜなら、作品を解説した掲示物だけではわからない情報も得ることができるのです。また、見たい作品は一つでも多く、少しでも長く味わいたいもの。音声を聞きながら作品が鑑賞できて時間の無駄がないというのもお勧めする理由です。
写真:万葉 りえ
地図を見るこれだけ広くて多くの作品を楽しめる美術館ですから、できる限り時間をとって見ておきたいですよね。しかし、ちょっと一息つきたくなる時間もほしいもの。その際も充実しているのが大塚国際美術館です。
モネの大睡蓮があるB2階のフロアには睡蓮の花や季節の花々を見ながらくつろげるカフェ・ド・ジヴェルニーがあります。こちらではケーキ類だけでなく、軽い食事も楽しめます。
そして、しっかりと食事をされたい方にお勧めしたいのが、1階にあるレストランガーデンです。御覧のように広々とした緑の芝生を眺めながらゆったりと食事が楽しめるようになっています。この美術館がある鳴門は、海の幸に大変恵まれた場所。またすぐ隣にある淡路島は食材の宝庫として古代から知られていた島。ですから、レストランにはその美味しさを味わえるメニューが揃います。また、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を表したメニューや季節限定のメニューもあるので、どれにしようか迷ってしまうかもしれませんよ。
ローマ教皇のいるヴァティカン宮殿にあるシスティーナホールは見逃せない展示の一番に挙げられるでしょう。内装を行ったのはボッティチェッリやペルジーノ等盛期ルネサンスを代表する豪華な顔ぶれ。特に有名なのが、ミケランジェロが1535年からクレメンス7世の依頼で主祭壇の背後に描いた「最後の審判」です。しかし、教会に裸体なんて不謹慎だ!と横やりが入ってしまいます。そこでミケランジェロが地獄の場面の中に描き加えたのが、文句を付けた儀僧長のあわれな姿。探してみてくださいね。
次期ローマ法王を選出する会議コンクラーヴェが開かれるこの礼拝堂。大塚国際美術館にあるこの壮大な空間では頭上にあるものと同じ陶板が床にも置かれており、その大きさが実感できる工夫もされています。
館内は古い時代から現代にかけて床の矢印に沿って進んでいくようになっています。しかし、かなりの広さなので一日では見て周れないほど。好きな時代や作家があれば、それを優先して時間を配分しましょう。時間は決まっていますが、ボランティアガイドの方による作品案内もあります。作品についてより深く知ることができるので、厳選して有名作品を押さえておきたいという方にはお勧めです。
また、パンフレットにある展示作品リストにはページの右端に音声ガイドの番号が表示されています。時間がある場合は、とくに有名作品を絞っているこの音声ガイドのある作品を見て周るというのも一つの方法です。それでも100以上あるので、時間の目安をつけておくといいでしょう。
それでは、世界中の名画から、見たい作品めざして、いってらっしゃ〜い!
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(2024/4/19更新)
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