写真:永澤 康太
地図を見る上田市の南側を走る国道254号線沿いに大塩温泉は湧き、近くにある鬼女紅葉の昔話が伝わる霊泉寺温泉、前述した鹿教湯温泉を含めて丸子温泉郷と呼ばれる。国道に出ている大塩温泉の看板に従い曲がると一軒宿「旭館」はすぐそこで、車でのアクセスはもちろんバスも1時間に一本はあるので簡単にたどり着く。また鹿教湯温泉から歩いても25分程。
だが風情は秘湯そのもの。国道と宿までの間にポツ、ポツと閉館した旅館や施設が数件あって、最奥の「旭館」より先に道はない。そして国道に隣接しているとは思えない静けさが周辺を包み、それらが合わさってこの場所だけ浮世から外れた観を呈している。「昔は総理経験者が来るほど賑わった。落ち着いたのはここ十数年かなぁ」と宿のご主人。秘湯ありきではなく秘湯になったというのが正しい。
写真:永澤 康太
地図を見る「旭館」は客を多くとらない、1人旅OKのミニマムな宿。2・3階が客室に当たり、全館禁煙だが玄関外に灰皿があるので、愛煙家の方は一安心。基本、湯治主体の宿ゆえ、洗面所とトイレは共同、アメニティも最低限の物しか揃えていない代わりに、部屋に最初から布団が引いてあって、ゴロゴロするのに最適な環境が整っている。部屋と風呂を往復し、ひたすら安息をむさぼる湯治スタイルを堪能してみては?
写真:永澤 康太
地図を見るそして湯治場らしく自炊施設も完備。食器類やコンロ、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器と調理道具は一通り揃い、本格的な湯治経験がない人でも敷居が低くなっている。市内か松本市で食材を買えば後は事足り、且つ鹿教湯温泉の入口にコンビニが営業中(2017年3月現在)なので、少なくとも食べ物に困ることはない。
写真:永澤 康太
地図を見る「旭館」の創業は明治期。しかし大塩温泉自体は戦国時代の発見と言われ、川中島の合戦で傷ついた武田側の将兵を癒したことにより、信玄の隠し湯の一つとして現代に受け継がれてきた。言い変えれば、戦国時代には既に温泉の品質保証がされていた訳で、一時期は東京品川陸軍病院分院が開かれた程に優れている。
宿の2階奥が風呂になり、浴室は内湯一つしかなく部屋毎に交代となる。使用中の札をかけ忘れないように。湯舟は小さい方に加温した源泉を張り(寒い時期のみ使用)、大きい方は38℃のぬる湯(加温・加水・循環・消毒・入浴剤なし)をそのままかけ流す。次から次へと湯が溢れ出る光景は、「湯元」と表の看板に掲げているのも納得のものである。
写真:永澤 康太
地図を見る泉質は単純温泉でラジウムを含み、ラドンが観測されるのは丸子温泉郷でもここだけ。昔「翁丑塩の湯」と呼ばれた無色透明の湯は、丁度「不感温度」という体が熱さも冷たさも感じない温度の為、温泉へ浸かっている感覚が次第に無くなりとても不思議な状態になる。これが最高に心地良く、気付くと1時間は軽く過ぎていて、自然と利用者にぬる湯の、大塩温泉の魅力を理解させてしまう力を持つ。
それと、湯口から出ている温泉を飲むことができる。匂いも味もまったくせず、抵抗なくゴクゴク飲めてしまうが、そこは温泉。飲泉すると胃腸や動脈硬化、痛風に効き、ウガイをすれば気管支と何故かリウマチに効くと記されている。何はともあれ、ただの真湯でないのは明らかだ。
写真:永澤 康太
地図を見る自炊に限らず、宿が提供する食事も勿論ある。驚くべきはそのコスパで、1泊2食付きで税別7000円(2017年3月現在)とかなりお得なのに、地元で採れた山菜や野菜を使った料理が多く出て、蒟蒻は御主人の手作りだったり、珍味に山椒があったりと中々凝っている。
写真:永澤 康太
地図を見る特に夕食の山菜天婦羅は一番の華であり、客が訪れた時期に山で採れたものを揚げている。量も多く、何が天婦羅になって出て来るかは、その時になってみるまでのお楽しみ。仮に「旭館」で湯治療養し自炊するとしたら、一日は料理を頼んでみても良いと思う。
一つ注意してほしいことは、宿の付近に共同湯が二軒あり、二軒と「旭館」の使用源泉は別である点。つまり、古来の大塩温泉を供給しているのは現在「旭館」のみであり、立ち寄り湯も受け付けておらず、素晴らしいぬる湯に浸かるには宿泊するしか方法はない。それでもわざわざ宿泊するだけの甲斐があるのもまた事実で、是非とも大塩のぬる湯を皆さんにも知って貰いたい。なお、詳細なデータを下にまとめておく。
TEL:090-1108-6157
FAX:0268-44-2527
1泊2食:税別7000円
素泊まり:1人税別4000円/2人以上は税別3800円
泉質:単純温泉(弱アルカリ性低張性温泉)
※立ち寄りのみ不可
※1月〜3月の彼岸明けまで冬季休業
2017年3月現在
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(2024/4/24更新)
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