写真:藤 華酉
地図を見るフランクフルトから1時間程、ライン川沿いに位置する中都市ウォルムス(Worms)は起源を青銅時代まで遡る歴史ある都市です。ローマ帝国の駐屯地となって以降、「ニーベルンゲンの歌」の舞台ブルグント王国の首都や、神聖ローマ帝国の王の都市として名前を残し続けて来ました。
街には今でも数々の立派な教会が残り、宗教都市としての威光を感じさせます。その教会が「カトリック」だったり「プロテスタント」だったりと混合している所に、歴史を感じさせる場所でもありますね。
写真:藤 華酉
地図を見る12世紀に建造が始まったヴォルムス大聖堂は、ドイツのロマネスク様式で建てられました。特長は威圧感すらある重厚な外観。この都市でのカトリックの権力をまざまざと見せ付けて来ます。
しかしこの外観、本当は宗教革命500周年に合わせて工事を終える予定だったのですが…。
写真:藤 華酉
地図を見る外見は重厚なヴォルムス大聖堂ですが、内部の華麗さには息を呑むばかり。ロマネスク建築だけに全体の装飾はあっさりしているのですが、それを補って余りある金銀細工。カトリックの権力、全開です。
ルターの故郷には銀鉱がありました。貧しい労働者を酷使しては日々教会へと運ばれる莫大な銀を眺めて暮らす内に、ルターは富を独占する教会権力への疑問を膨らませていったのではないか、と言う説があります。そうした意味でもヴォルムスの大聖堂はルターと折り合いの悪い場所なのでした。
写真:藤 華酉
地図を見る後世の増築部ではありますが、ロマネスク建築らしからぬステンドグラスも見所です。一般に、重厚であるのがロマネスク建築の特徴ですが、薄暗さと光が調和して眩いばかり。
天空を感じさせる薔薇窓が嵌る後陣もあれば、地下には神聖ローマ帝国の歴代の王の棺が置かれた一室もあり、光と影のコントラストが美しい教会です。
写真:藤 華酉
地図を見るヴォルムスの歴史を深く知るなら、ヴォルムスの歴史博物館である「Museum der Stadt Worms im Andreasstift」が詳しいです。こちらはかつての城壁沿い、修道院を改装して作られた博物館。回廊や付属教会はそのまま残されており、建物にも一見の価値があります。
写真:藤 華酉
地図を見る遡るは石器時代から近代に至るまで、ヴォルムスの歴史を幅広く紹介する博物館。しかし、矢張り気になるのはルターの歴史。破門を決定した1521年のヴォルムスの情勢や、どんな人々がプロテスタントの台頭に反対していたのか、なんてご当地ならではの歴史でしょうか。残念ながら説明はドイツ語のみですが、絵や地図を用いて複雑な革命の歴史が分かりやすく説明されています。
「実物」が無造作に置かれており、距離の近い博物なのですが、特に宗教革命に欠かせなかった「活版印刷」の作業風景を再現したコーナーは、実際の16世紀の小道具が用いられており、雰囲気がありますよ。
写真:藤 華酉
地図を見る付属教会も、小ぶりながらも修道院時代の貴重な祭壇がそのまま残されており、見応えがある…筈なのですが、なんと2017年4月1日現在、工事中。本当は2017年までに直しておかなければいけなかったのに…。
そんな祭壇は修復の過程が間近でよく見えるようになっており、これはこれで貴重な展示かも知れません。
写真:藤 華酉
地図を見るヴォルムス市の中心に堂々と立つモニュメントが、ルター記念碑(Lutherdenkmal)。中央に立つルターの他、ルターを支えた協力者や宗教革命の同志達の像、女性の姿は都市の擬人化です。19世紀に作られた像ですが、皆さまスタイルが良く中々の美形。
特にルターはクラナッハの肖像画が有名なため、「こんなに美形だったかな…?」と若干美化を感じます。街の中心に立つのですから、美形であるに越した事はないですよね。
2017年は、ルターゆかりの各地で様々なイベントが開かれています。特別展示やガイドでヴォルムスも大賑わい。そうでなくとも緑が多く、美しい教会建築の多いヴォルムスは訪れる人の目を驚かせてくれます。激しく宗教論争の火花が散ったかつてのヴォルムスを思いながら、是非今の美しいヴォルムスをお楽しみ下さい。
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(2024/4/23更新)
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