オスマン宮廷料理を再現!イスタンブール「アシターネ」でスルタン料理を食す

オスマン宮廷料理を再現!イスタンブール「アシターネ」でスルタン料理を食す

更新日:2017/04/14 13:17

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
約600年の長きにわたり栄華を極めたオスマン王朝。時の権力者スルタンや貴族たちの食卓に供された料理、オスマン宮廷料理が現代に蘇り、その知られざる味が観光客でも堪能できるようになりました。
当時のレシピや厨房の仕入帳などを基に再現されたのはおよそ380種。かつてトプカプ宮殿で食べられていた豪華料理が味わえるイスタンブールの名店「アシターネ」をご紹介します。

オスマン帝国が生み出した宮廷料理

オスマン帝国が生み出した宮廷料理

写真:吉川 なお

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中華料理、フランス料理と並んで世界3大料理に挙げられるトルコ料理。その基盤であるオスマン料理が確立されたのは今から600年以上前のこと。中央アジアからやってきたトルコ人の祖先がアナトリア半島に定住し、中央アジアの遊牧民の食文化をルーツに地中海の豊かな食材、中東イスラムの文化を取り込んで独自の食文化を造り上げました。

世界有数の大帝国を築いたオスマン帝国は、その豊富な財力で各地から高価な食材や優秀な料理人を集め、スルタンのために豪華でバラエティ豊かな料理を数多く誕生させました。シルクロードを通じてもたらされた香辛料や果物を惜しげもなく使い、栄養価の高いナッツ類、オリーブオイルやハーブやスパイス、ヨーグルトなどの乳製品をアクセントに、見た目も美しい料理が毎日の食卓に並べられました。常時30種類ほどの料理の中からスルタンは気に入ったものだけを口にしたといい、レシピは門外不出でした。

本物の宮廷料理が味わえる唯一無二のレストラン

本物の宮廷料理が味わえる唯一無二のレストラン

写真:吉川 なお

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そんなオスマン宮廷料理を現代に復活させたのは、イスタンブールを代表する名店「アシターネ」。ビザンチン美術の至宝「カーリエ博物館」の隣、カーリエホテルに併設するレストランです。

スルタンの食事や賓客をもてなした宴席メニューは1991年創業時はわずか22種でしたが、歴史研究家の考証の下、トプカプ、ドルマバフチェ、エディルネ宮殿の料理台帳や厨房の仕入帳、大統領府のアーカイブなどから数多くの料理を再現し、現在はおよそ380種、そのうち250種はここでしか食べられないものだそうです。宮廷料理と名乗るレストランは数あれど本物を味わうことができる貴重なレストランです。

本物の宮廷料理が味わえる唯一無二のレストラン

写真:吉川 なお

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店内はモダンな内装で優雅な雰囲気が漂っています。落ち着いて食事が楽しめるようゆったりした配置となっていて、座席は個室22席を含めて142席、夏期は木漏れ日が射し込むテラス席(180席)が人気です。

メニューはアラカルトが中心で、旬の材料を使うため夏用と冬用があり、それぞれにその料理が作られた年号が書かれています。現代人が食べやすいようフランス料理のエッセンスも加えられた料理は初めて見るものばかりですが、見た目も美しく食欲をそそられます。それでは冬メニューの自慢の料理の一部をご紹介しましょう。

これがスルタンが食べた料理!

これがスルタンが食べた料理!

写真:吉川 なお

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まず最初にいただきたいのはスープ。写真は1539年の「Almond Soup 」で、オスマン帝国を最盛期に導いた第10代皇帝、スレイマン大帝時代のものです。

イスタンブールのトプカプ宮殿に次ぐ規模だったエディルネの夏の宮殿で発掘されたレシピから再現されたアーモンドスープで、中にナツメグとザクロの実が入っています。アーモンドのほのかな風味と実を細かく摺ったような舌触りが印象に残る一番人気のスープです。

これがスルタンが食べた料理!

写真:吉川 なお

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前菜はパンと一緒に食べたい「前菜4種盛り」がお薦め。いろいろな年代のディップが一皿に載っています。

写真左から
●Ottoman Hums(1469年)干しぶどうと松の実、シナモン入りヒヨコ豆のペースト
●Lor Cheese Blend (1898年)ローズマリーとパプリカで味付けしたネギ、パセリ、ピーマン、トマト入りカッテージチーズ
●Fava セリ科のディルとオリーブオイルであえたそら豆のペースト
●Pounded Cucumber Salad(1844年)玉ねぎとピスタチオ入りきゅうりのサラダ

それぞれの素材の味がしっかり感じられるプレートで、白ワインがとても合います。

これがスルタンが食べた料理!

写真:吉川 なお

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続いてもう1品。ドルマバフチェ宮殿を建設した第31代皇帝アブデュルメジト1世が食した前菜「Gerdaniyye」は1844年のもの。

仔羊の肩ロースを野菜とハーブで煮込み、羊の脳みそ部分と合わせたペーストです。宮廷料理は全体的に果物を用いてやや甘めの味に仕上げるのが特徴で、酸味のあるブラックプラムソースがアクセントになっています。

現代に通じる料理も

現代に通じる料理も

写真:吉川 なお

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メインは肉料理が中心で10種類。写真は1764年の「Savoury Meat Patties 」で、現代のハンバーグみたいなもの。セリ科の薬草アニスとシナモン、ピスタチオで香ばしく味付けしたラムとベーコンのパテをフィロという生地で包んで焼いたものです。やや濃い味付けで弾力もあり、一緒に添えられたご飯とのバランスも絶妙です。

現代に通じる料理も

写真:吉川 なお

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トルコに来たならケバブは味わっておきたいもの。「“Kırma” Chicken Kebab」は第26代皇帝ムスタファ3世在位の1764年のものですが、現代のチキンフィレのグリルと全く遜色ありません。こんがり焼かれた鶏肉は香ばしく、付け合せの赤キャベツと青菜も抵抗なくいただけます。

ハイカラなデザートにびっくり

ハイカラなデザートにびっくり

写真:吉川 なお

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デザートは4種類。写真のプレートは一番人気という1539年のデザートです。

中央の「Helatiye」は、フルーツ入りミルクプディング。ローズウォーターのシロップにアーモンドとピスタチオ、季節のフルーツを浮かべ、その中に乳香という樹脂で味をつけた杏仁豆腐のようなミルクプディングが入っています。この時代にフルーツポンチのようなデザートがあったことに驚きます。

両側のひし形のお菓子は「Levzine」というアーモンドのヘルワ。蜂蜜で味付けされたお菓子のヘルワはゴマのペーストが一般的ですが、宮廷ではアーモンドが使われ、上にピスタチオとケシの種がまぶされています。固めた綿菓子のようなサクサクした食感で、そのあと口の中でじわ〜ととろけます。

オスマン帝国繁栄の源

冬のメニューで一番古い年号は、前菜でご紹介したOttoman Humsが生まれた1469年で、1453年に東ローマ帝国を滅亡させたオスマン帝国は次々と勢力を拡大して地中海の交易を支配。16世紀に最盛期を迎えましたが、徐々にその繁栄も陰りが見え始め、1922年のトルコ革命でトルコ共和国が樹立されて終焉を迎えました。

1299年から1922年まで長きにわたって君臨したオスマン帝国。そのトップであったスルタンの活力の源となっていたのは、まさしくこの宮廷料理だといえるでしょう。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2017/02/04 訪問

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