白子の南、近鉄鼓ヶ浦駅を最寄り駅とする場所に“白子の子安観音”と呼ばれる子安観音寺があります。安産や子育て、子授けにご利益がある名刹で寺院そのものも見どころですが、桜名所としても知られます。それが「白子の不断桜」です。
10月下旬から4月上旬にかけて途切れることなく咲いている花を見つけられることから“不断桜”の名があります。花は白色に近く、花弁は5枚。ヤマザクラとオオシマザクラとの種間雑種と思われ、樹齢は1300年を誇ります。基本的にはぱらぱらと梢のあちこちに花が見られる具合ですが、よく見るソメイヨシノとは違った味わいがあり、4月初旬ごろの花の盛りも当然ながら見ものです。
子安観音寺から海のほうに向かって歩くと、鈴鹿の伝統工芸、伊勢型紙と鈴鹿墨を紹介する鈴鹿市伝統産業会館があります。鈴鹿墨は圧倒的なシェアを誇る奈良墨に次ぐ生産量を誇り、その始まりも古く延暦年間(782〜806)にまで遡ります。江戸期には墨の需要が増えたり、伊勢型紙の図案を描く際に使用されたりしたことから生産が伸びたそうです。
伊勢型紙は着物の柄や文様を染めるために用いる型紙のことで、こちらも1000年以上の歴史を誇り、生産量は全国の99%を占めると言うから驚きです。和紙を柿渋で加工した型地紙に、彫刻刀で着物の文様や図柄を細密に彫り抜いた工芸品用具なのですが、それ自体が美術的に評価され、照明や栞、額装されて観賞用にもなるなど和服離れが進んだ現在でも活路を見出しています。入館無料。伝統工芸品の美しさを味わいましょう。
近鉄白子駅の東を南北に走る旧伊勢街道。この街道に沿ってかつて宿場町がありました。そして、この宿場町を中心に発展したのが現在の白子です。江戸期、伊勢神宮への参詣は非常に人気があり、旧伊勢街道は多くの人々が往来した街道でした。また、物資の集散地にもなって白子には多くの旅籠や商家が建ち並んだのです。
隆盛を極めた証でしょうか。一部の建物には今でもその名残が感じられ、多くの旅人を案内したであろう「さんぐう道」と記された石碑も残ります。観光地化されておらず、自然体で古い町並みが楽しめる点も好感が持てます。
街道沿いに残された古い建物の中には、資料館として公開しているものもあります。それが寺尾家住宅、伊勢型紙資料館です。江戸期より伊勢型紙の生産から販売までを行っていた白子屈指の型紙商で、幕末に建てられた主屋などが往時の面影を伝えています。入館料は無料。館内では型紙や型紙の歴史等を伝える資料も収蔵展示しています。
白子はあまり知られていない小さな町ですが、そんな町にもちゃんと貴重な歴史が息づいている、そんなことを教えてくれる町です。そして、桜や工芸品といったその土地ならではのものが今も生きています。あまり観光地化もされていません。なので、面白いものを自分で見つける楽しさもあります。こんな旅行もいかがでしょうか。
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