熊野古道伊勢路は伊勢神宮〜瀧原宮間も見どころ充実!必見スポット5選

熊野古道伊勢路は伊勢神宮〜瀧原宮間も見どころ充実!必見スポット5選

更新日:2017/04/04 13:24

やた 香歩里のプロフィール写真 やた 香歩里 鈍足の旅人、地域の魅力発掘人、花火鑑賞士
世界文化遺産熊野古道は、各地からの熊野三山への参詣道です。そのうちの伊勢路は、文字通り三重の伊勢神宮から和歌山の熊野三山に至る約170キロの道。中辺路に比べるとマイナーな印象ですが、実は山あり海ありの風光明媚なルートです。伊勢路序盤の、神宮から別宮瀧原宮まで約50キロの道程は、平坦な街なかも多いため歩く人も比較的少ないですが、歩いてこその様々な見どころがあります。厳選して5つご紹介します。

最初の峠、女鬼峠で宮川の展望と切通しを見る

最初の峠、女鬼峠で宮川の展望と切通しを見る

写真:やた 香歩里

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伊勢路の出発地はもちろん伊勢神宮、しかも内宮になります。内宮からスタートすると、しばらくは伊勢市内の平坦な街なかを歩きます。景色の変化には乏しい道ですが、伊勢の町をじっくり見るにはもってこい。外宮を越え、宮川を度会橋で越えたあたりから、少しずつ古い街道の風情が見られるようになります。

最初の峠、女鬼峠で宮川の展望と切通しを見る

写真:やた 香歩里

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伊勢神宮から約20キロで、伊勢路最初の峠、女鬼峠に到着します。標高120mほどとそれほど難しい峠ではなく、これから先の足慣らしにちょうどいいレベル。入り口の立て看板から30分ほどで、峠の頂上の「茶屋跡」に着きます。ここから峠道を下りることもできますが、ここはぜひ、展望台に寄り道してください。それまでよりも少し急な山道を登ると、切り開かれた展望台から、遠く宮川の流れを望むことができます。

最初の峠、女鬼峠で宮川の展望と切通しを見る

写真:やた 香歩里

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荷車の通過跡の「轍(わだち)跡」や、かつて旅人が一息ついたであろう「水飲み場跡」など、往時の交通の要路としての痕跡が随所にみられる女鬼峠ですが、その痕跡の際たるものが、茶屋跡からの下り道にある「切り通し」。通行路を確保するため、千枚岩を掘削して通した道です。かなりの難工事であったと思われることから、この峠越えが往時の人々によって重要な道であったことがわかります。写真右手には岩を割った痕跡が、左手には崩落を防ぐための石積みが見られます。

「馬鹿曲がり」は軽い冒険気分を楽しめる

「馬鹿曲がり」は軽い冒険気分を楽しめる

写真:やた 香歩里

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女鬼峠を下りれば茶畑の広がる三重県多気郡大台町。峠から約10キロほどで、「馬鹿曲がり」への道標が見られます。道標の示すとおりに道端の坂を下り、さらにハシゴを下りていくと、道路下の小さなトンネルを潜るようにとの指示が。少し水のたまっている暗いトンネルを抜けると、小さな沢があります。

「馬鹿曲がり」は軽い冒険気分を楽しめる

写真:やた 香歩里

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沢を越え、少し上ると、常緑樹やシダに囲まれた綺麗な道に出ます。古の人々が歩いた熊野古道とは、こんな道の連続だったのでしょうね。舗装路を歩くことの多い伊勢路の序盤で、古道らしさを感じられる希少な道です。

この「馬鹿曲がり」とは、深い谷ゆえ谷間を大回りして越えなければならないことからつけられた名前です。現在ここには、熊野古道と、国道42号線によって寸断された部分を繋げた古道再現区間があります。本来の古道とは少し違う部分もありますが、樹林の中を歩く道はその雰囲気を十分に感じさせてくれます。

このあとも、藪の中を歩いたり、急な下りを下りたりと、アップダウンの多い道が続き、ちょっとした冒険気分を味わえます。

「馬鹿曲がり」は軽い冒険気分を楽しめる

写真:やた 香歩里

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馬鹿曲がり入り口から歩くこと約15分で、沢にかかる木製の「馬鹿曲橋」が見えてきます。現地の檜を使って、近年再現された橋ではありますが、森の中に溶け込んで、いい雰囲気を醸し出しています。この橋を越えると、馬鹿曲がりもあと少しで終わりです。

眼鏡橋周辺は苔の緑と透き通る水の別世界

眼鏡橋周辺は苔の緑と透き通る水の別世界

写真:やた 香歩里

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「馬鹿曲がり」を抜けてさらに10分ほど歩くと、今度は「猿木坂」に向かえとの標識が出ています。写真には入っていませんが、「平成の熊野古道」と書かれた道標もあります。本来の古道とは少し違う道のようですが、指示通り、道路横の坂を下りてゆきます。

竹林の中を少し歩くと、水の音が――。

眼鏡橋周辺は苔の緑と透き通る水の別世界

写真:やた 香歩里

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先ほどの道標からほんの5分ほど入っただけなのに、そこには、苔むした岩とその間を流れるせせらぎがあり、まるで「もののけ姫」の世界に迷い込んだようです。そしてその向こうには、樹林の隙間からレンガ橋の姿が。

眼鏡橋周辺は苔の緑と透き通る水の別世界

写真:やた 香歩里

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明治40年に建てられたというこの橋は、元は国道で、活発な往来がありました。眼鏡橋というくらいですから、もともとはアーチが2つあったのですが、そのうちの1つは鉄道敷設の際に埋められてしまいました。緑の苔の岩と流れる水、どっしりした古いアーチ橋の組み合わせは幻想的で、しばし疲れも忘れるような光景です。

復活した三瀬の渡し場を眺めてみる

復活した三瀬の渡し場を眺めてみる

写真:やた 香歩里

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川添駅を越えしばらくはJR紀勢本線沿いを歩きますが、やがて道は国道42号線に合流します。眼鏡橋付近から約8キロ、伊勢神宮から約40キロほどのところに、三瀬の渡し場があります。

ここには、かつて宮川を渡す渡し船がありました。日常的な交通手段としては姿を消して久しいですが、近年、地元の保存会のご尽力により復活しました。こちらはその舟のり場に降りる道です(史跡の「三瀬の渡し場跡」はもう少し西にあります)。

復活した三瀬の渡し場を眺めてみる

写真:やた 香歩里

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河原まで降りる道がついており、宮川の流れをすぐそばで見ることができます(水量の多い時期は十分注意してください)。

右手には、紀勢自動車道の高い橋が見えます。当然ながらこの橋を歩行者が渡ることはできないので、歩いて宮川を渡ろうと思えば、宮川沿いをさらに西に大きく迂回しなければなりません。

ちなみに、史跡「三瀬の渡し場跡」はこの紀勢自動車道の橋の向こうにあります。

復活した三瀬の渡し場を眺めてみる

写真:やた 香歩里

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渡し舟で対岸に渡ることができれば、多岐原神社の裏手の河原に着きます。そこから三瀬坂峠を越えれば、瀧原宮はすぐです。

渡し舟を利用するには、事前申込が必要です。天候や水量によっては船が出せないこともあるそうなので、詳細は大台町観光協会(下の関連MEMO参照)にお問い合わせください。

思わず手を合わせたくなる完成美、清滝

思わず手を合わせたくなる完成美、清滝

写真:やた 香歩里

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三瀬の渡し場からさらに5キロほど歩いたところに、大谷不動明王があります。道路わきに小さな階段がついており、その階段を下りた先には簡素なお社があります。

思わず手を合わせたくなる完成美、清滝

写真:やた 香歩里

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お社で手を合わせて振り返ると、そこには清滝が。大きな滝ではありませんが、流れ落ちる水の形、丸い紺碧の滝壺、そこから流れ出る透明な水と、その完成された美しさに思わず手を合わせたくなるような、見事な滝です。

思わず手を合わせたくなる完成美、清滝

写真:やた 香歩里

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ここからさらに歩いて三瀬谷駅を過ぎ、登録有形文化財の舟木橋でようやく宮川を越えます。宮川の対岸を東に歩き、三瀬の渡しの舟のり場の対岸にある多岐原神社を過ぎ、さらにそこから急登の三瀬坂峠を越えて国道42号線出ると、15分ほどで瀧原宮に到着します。大谷不動明王から約9キロ、3時間弱の道のりです。

じっくり歩いて感じてほしい、熊野古道伊勢路序盤の道

伊勢神宮内宮から瀧原宮まで約50キロ、1日で歩ききるのは難しい距離です。足に自信があれば2日で歩くことも可能かもしれませんが、3日あれば、体力的にも時間的にも、景色や史跡を楽しみながら歩く余裕ができるでしょう。最初は変化の少ない道に疲れるかもしれませんが、見どころはあちこちにちりばめられています。

歩く途中で宿をとるのもいいですが、女鬼峠を越えた後はほぼJR紀勢本線近くを歩くので、途中の栃原・川添・三瀬谷の駅からJRで伊勢市や多気、松阪などに戻って宿泊し、翌日また列車で前日の駅まで戻って出発する、ということもできます。

ここではご紹介しきれませんでしたが、神社や史跡、たくさんのお地蔵さまが、往時の参詣道としての賑わいと重要性を伝えてくれます。その一つひとつを感じながら歩くことで、伊勢路を、そして熊野古道を、より深く知ることができます。歩くことでしか見ることのできない風景、その空気を、ぜひ感じ取ってみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/03/09−2017/03/10 訪問

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