チェコなのにユダヤ料理が食べられる!?ミクロフ「マルセル イナカック」

チェコなのにユダヤ料理が食べられる!?ミクロフ「マルセル イナカック」

更新日:2017/03/11 12:07

浅井 みら野のプロフィール写真 浅井 みら野 総合旅行業務取扱管理者、全国通訳案内士(英語)、世界遺産検定2級、JSBA スノーボード バッジテスト 1級
5km先には隣国オーストリアが望める国境の町ミクロフ。肥沃な大地でワインが有名なチェコ東部モラヴィア地方に位置し、人口約7,300人が暮らしています。“おとぎ話から出てきたよう”といわれるほど町並が美しく、中世の雰囲気が感じられますが、驚くことに伝統的なユダヤ料理が食べられるレストランがあります。チェコなのにユダヤ料理?あまり連想できない組み合わせですが、実は両者を結びつける歴史があるのです。

ミクロフってどんな町?

ミクロフってどんな町?

写真:浅井 みら野

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まずはミクロフ(Mikulove)という町についてご紹介を。町の真ん中には山があり、そこにはバロック様式の古城が堂々とそびえています。そのお城を中心に住宅が建ち並び、町が放射線状に形成されています。お城のすぐ近くには広場があり、市庁舎やペストの終焉を記念して建設された記念碑、歴史が感じられるカトリック教会が建ち、美しい景観です。

町のすぐ近くにある高さ360mの丘は“聖なる丘”とよばれ、丘の上に建てられたチャペルや教会が静かに町を見守り続けています。天気が良いと季節の草花や町を取り囲む美しい景色が見られる、おすすめのハイキングコースです。古くからオーストリアとの国境の町として、人や物の往来も頻繁だったと聞きます。

チェコを代表する画家も滞在した過去が

チェコを代表する画家も滞在した過去が

写真:浅井 みら野

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ユダヤ料理が食べられるという噂のレストラン「マルセル イナカック(MARCEL IHNACAK)」は、町の中心地から徒歩5分の場所にあり、ホテルとギャラリーも併設しています。建物正面にはアール・ヌーヴォーを代表する世界的に有名な画家“アルフォンス ミュシャ(Alfons Mucha)”の彫像が。ミュシャが20代で失業中だった頃、ミクロフに住む伯爵が彼のパトロンになったことで、若きミュシャがこちらの建物に滞在していたのです。

そして更に16世紀まで歴史を遡ると、かつてこの場所はゴーレム伝説の主人公として有名なラビ(ユダヤ教の神父)、イェフダ レーヴ ベン ベザレルが滞在していた場所でもあります。15世紀頃よりオーストリアから退去を命じられたユダヤ人が、国境を越えてすぐ近くのミクロフに住み始めます。その後も移住者は増え続け、すぐにミクロフはこのエリアのユダヤ社会の中心地になりました。全盛期には町の人口の半数を占めるほどに。その後、オーストリアへの移住が簡単になり、ユダヤ人の姿は徐々に消えていきました。

シンプルでモダンな内装

シンプルでモダンな内装

写真:浅井 みら野

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ユダヤ文化は町の歴史に欠かせない重要な一部ということで、こちらのレストランでは伝統的なユダヤ料理を提供しています。2015年に改装を終え、色々な食器や調理器具が壁にオシャレに配置され、カジュアルな雰囲気です。夏は吹き抜ける風が気持ち良いテラス席がおすすめ。

人気シェフがつくるおすすめユダヤ料理がこちら

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写真:浅井 みら野

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店名にもなっているマルセル イナカックは、ロンドンでミシュランを獲得したレストランで修行するなどチェコでは有名なシェフ。彼のユダヤ料理は、初めての人でも食べやすく調理されています。ハーブも自家栽培するなど、食材ひとつひとつに対するこだわりが強いです。

安息日には料理をしてはいけないユダヤ教。それゆえに生まれたのが“チョレント(Cholent)”とよばれるメニュー。お肉やお豆、野菜が入ったシチューで12時間以上煮込みます。安息日の前日につくり始めますので、安息日には料理をせずに、味がしみ込んだ美味しい状態で食べることができます。

人気シェフがつくるおすすめユダヤ料理がこちら

写真:浅井 みら野

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食べて良い食材や組み合わせていけない食材など規定が細かく定められているのもユダヤ料理の特徴です。例えば豚肉が禁止されてるのが有名。そのためお肉料理というと牛や鶏がメインになります。鶏レバーはヨーロッパでも見るメニューですが、ユダヤ料理にも登場します。レバー独特のクセがなく、苦手な人も食べられるやさしい味です。バケットとの相性も抜群ですよ。

人気シェフがつくるおすすめユダヤ料理がこちら

写真:浅井 みら野

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うろこがある魚は禁止されていないため、古代イスラエル時代より魚料理は多く登場してます。特に海がないこのエリアではコイは貴重な食材でした。炙るだけでなく、揚げたり、つみれにしたり(ゲフィルテ・フィッシュ)と、調理方法も様々です。

ユダヤ料理以外にもおすすめなのがイタリアン

ユダヤ料理以外にもおすすめなのがイタリアン

写真:浅井 みら野

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伝統的なユダヤ料理がお店のメインメニューですが、それ以外にも評判なのがイタリアン。マルセル イナカックのお気に入り料理のひとつがイタリアンということで、パスタもメニューに載っています。食べ慣れないユダヤ料理も、馴染みのあるイタリアンと一緒に頼めば心強いですね。

常に民族の移動が起きるヨーロッパ

チェコでユダヤ料理という組み合わせに最初は疑問を持つ方もいますが、かつてミクロフがユダヤ文化の中心地だった背景を知ると納得していただけると思います。しかし、ミクロフに影響を及ぼしたのはユダヤ文化だけではありません。19世紀に数が減少したユダヤ人の代わりにドイツ人が増え、一時期は町民全員がドイツ語を話したほど。現在はドイツ人も少なくなり、住民の大半がチェコ人です。ひとつの町の歴史を見ても、ヨーロッパは常に民族が移動しているんだと気付かされます。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/12/19 訪問

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