写真:いしい ひい
地図を見るボートハウスツアー(The Boys of 1936 Boathouse Tour)のきっかけになった本は、「ヒトラーのオリンピックに挑め 若者たちがボートに託した夢(The Boys in the Boat)」。ボート競技とオリンピックをテーマにしたノンフィクションであるとともに、大切な家族や夢の実現に向かって努力する日々を詩情豊かに描いた文学作品です。アメリカではニューヨークタイムズNo.1ベストセラーに輝くなど、大きな話題になりました。
この本の舞台は大恐慌時代、1930年代の米ワシントン州。主人公は子供のとき親に捨てられたジョー・ランツ。ワシントン大学に進学してからも暮らしは貧しく、ボート部の猛練習と授業以外の時間は少しでも時給の良い肉体労働のアルバイトをするという日々。そんな厳しい環境の中でも、彼には絶対にレギュラーの座を勝ち取るという夢と決意がありました。
当時は上級階級のスポーツであったボート競技ですが、ジョー・ランツのみならずワシントン大学の部員のほとんどは労働者階級。ボート部の練習に明け暮れる日々の中で、彼らは心身ともに鍛えられ成長し、友情で結ばれていきます。卓越したボート職人であったジョージ・ボーコックの哲学的な指導もあり、チームは一丸となって勝利に突き進んでいきます。
そして彼らの最大の目標は1936年のオリンピック。その戦いはナチス政権下のベルリンで行われようとしていました。当時の欧米の歴史を知る上でも、非常に読み応えがある本です。
写真:いしい ひい
地図を見るこの本は全米に感動を与え、舞台となったワシントン大学に行ってみたい、そのときのボートを見たい、という多くの声が集まりました。そのような読者の熱意により、2016年9月からボートハウスツアーが始まったのです。
ツアーの集合場所は、現在もボート部の練習の本拠地である、ワシントン大学のコベニア艇庫。約1時間のツアーでは、1936年のチームの活躍ぶりを学び、その当時使われていたボートやオールなどを見ることができます。今と昔のオールの形の違いなど、スポーツ用品の進化も興味深いことでしょう。
ツアーでは、現在の練習場も視察します。ワシントン大学ボート部の現役選手や、指導者の姿を目にすることも!
写真:いしい ひい
地図を見るコベニア艇庫は、ワシントン湖に直結。周辺には、美しい水辺の風景が広がっています。
写真:いしい ひい
地図を見るベルリン五輪の金メダルなど、当時の記念すべき品々も展示されています。
写真:いしい ひい
地図を見るそしてツアーのハイライトは、コベニア艇庫の食堂の天井にあります。1936年のオリンピックで実際に使われた木製のボートが、高々と展示されているのです。スギとトウヒで作られたシャープなデザインのボートは、1936年のチームの勝利と情熱を慈しむかのように、美しく磨き上げられています。
ツアー参加にあたって、ボート競技の内容や歴史など専門的なことは何も知らなくても、全く問題ありません!殆どのツアー参加者は予め先述の本を読んでから来ているようですが、事前に読んでいなくても全くかまいません。
でもきっと、ツアーに参加したなら本を読まずにはいられなくなるはず。そして本を読んだら、艇庫の食堂の天井から私たちを静かに見下ろすボートを、もう一度特別な思いで見たくなることでしょう。
写真:いしい ひい
地図を見るワシントン大学の男子ボート部は5年連続の全米優勝を成し遂げるなど、現在も圧倒的な強さを誇ります。
またワシントン大学のあるシアトルでは、毎年11月にHead of the Lakeというボート競技が開催され、2000人を超えるアスリートが参加します。これほどボートがシアトルで愛されている原点に、ベルリン五輪優勝チームの存在があるのです。
ボートハウスツアーは週に一度、日曜日の午後12時から。ガイドを務めるのはワシントン大学ボート部出身者で、カジュアルな雰囲気で案内してくれます。予めウエブサイトで申込みをしておくとよいでしょう。
いろいろな大学でキャンパス・ツアーが実施されていますが、強豪ボート部の艇庫の見学は、ここにしかない貴重な体験になることでしょう。
「ヒトラーのオリンピックに挑め 若者たちがボートに託した夢」は、ハヤカワ・ノンフィクション文庫から出版されています。ボートやベルリン五輪について何の知識がなくても、惹き込まれずにはいられない本。多くのアメリカ人が感動した一冊の本から始まった旅に、あなたも出かけてみませんか?
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(2024/4/25更新)
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