地質を学び旅の楽しみを広げよう!つくば市地質標本館

地質を学び旅の楽しみを広げよう!つくば市地質標本館

更新日:2018/05/24 14:15

タモリさんが地形や地質、文化を通して各地の「不思議」を解き明かす人気バラエティー番組「ブラタモリ」。京都嵐山の回では、断層美を生かした庭園や、2億年前の海で生まれた堆積岩の渓谷が紹介されました。

日本列島は4つのプレートがせめぎ合う地表にあり、複雑な地質で形成されています。茨城県つくば市の地質標本館は、そんな地質や地震・活断層をテーマとしたユニークな科学館。地質を学ぶと旅の楽しみも広がります。

「日本列島地震分布」と地層が変形した「褶曲(しゅうきょく)」のエントランスホール!

「日本列島地震分布」と地層が変形した「褶曲(しゅうきょく)」のエントランスホール!
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エントランスホールの天井に「日本列島周辺の震源分布」が展示されています。地下1000キロメートル地中から見上げた日本列島。その周辺に起きたマグネチュード6以上の震源が、吊り下げた球体で発生深度と大きさを3次元表現されています。その数は太平洋側に多く、特に北海道と東北地方に集中していることがわかるでしょう。

ホールの奥には、地層が地殻変動によりねじ曲げられた宮城県牡鹿半島の「褶曲」の模型や、東日本と西日本を分ける地溝帯「フォッサマグナ」の西側にある「糸魚川―静岡構造線」の地層の剝ぎ取り標本が展示されています。

「日本列島地震分布」と地層が変形した「褶曲(しゅうきょく)」のエントランスホール!
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地中から見る日本列島は見慣れた日本地図とは逆に見えます。設置された鏡に映すと地図で見る日本列島になります。赤く光る震源は死傷者を出した地震で、震源地の深度が浅いと被害が大きいことがわかります。

「日本列島地震分布」と地層が変形した「褶曲(しゅうきょく)」のエントランスホール!
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宮城県牡鹿半島の「褶曲」は、「約1億5000万年前の海底で形成された地層が、約1億1000万年前の大規模な地殻変動により折り曲げられた」と説明されています。地質変動のパワーは想像を絶しています。

46億年の地球の歴史!最古の岩石はカナダ産出のアキャスタ片麻岩

46億年の地球の歴史!最古の岩石はカナダ産出のアキャスタ片麻岩
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第1展示室のテーマは「地球の歴史」。先カンブリア紀から、古生代、中生代、新生代と46億年の地球の歴史を化石や岩石を年代に沿って展示されています。

地球の歴史を1年間に置き換えた「地球カレンダー」によると、有名な猿人「ルーシー」が登場したのは、12月31日の午後7時半ごろ。壮大な歴史が凝縮された展示の出口付近に「ネアンデルタール人」の模型があります。

46億年の地球の歴史!最古の岩石はカナダ産出のアキャスタ片麻岩
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アキャスタ片麻岩(ヘンマガン)は世界最古の岩石。片麻岩とは、元の岩石が地下深いところで高温高圧の変成を受けてできた変成岩のことです。カナダ北西部のアキャスタ湖周辺で採取されるこの岩石の年代は39億6200万年。この小さな石は地球の歴史そのものです。

46億年の地球の歴史!最古の岩石はカナダ産出のアキャスタ片麻岩
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日本列島地質模型は、形成された時代と岩石の種類に色分けされた立体地質図。模型の中央で白く光るラインはフォッサマグナ西側の活断層「糸魚川―静岡構造線」。伊豆半島を“ハ”の字のように伸びている黒い線が「駿河トラフ」と「相模トラフ」。これを見ると「糸魚川ー静岡構造線」とつながっているように見えます。

太平洋のプレート運動の展示は地球が生きていることを実感!

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第2展示室のテーマは「生活と鉱物資源」。石油や石炭などの燃料鉱物や、鉄、銅、マンガンなどの金属鉱物、火口によってガラスや陶器、グラスファイバーに姿を変える非金属鉱物と、鉱物を生み出すプレート運動がわかる「太平洋の海底地形」が展示されています。

太平洋のプレートは、カリフォルニア湾からイースター島に伸びる「東太平洋海嶺(かいれい)」で生まれます。新たに生まれたプレートは、約2億年をかけて太平洋を移動し日本海溝に沈み込みます。国土地理院のプレート運動観測では、ハワイ諸島は年間6センチ日本に近づいています。

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日本列島は太平洋プレートが沈み込む「日本海溝」とフィリピン海プレートが沈み込む「南西諸島海溝」や「南海トラフ」などが集中しているのがわかります。「地形図」では、海嶺と海溝を赤、青のランプで位置がわかります。地震や火山の噴火が多い日本を実感することが出来る展示です。

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鉄や銅、マンガンなど金属鉱物の他に私たちの生活で使われている、非金属鉱物も展示されています。アスファルトの道路に落書きや石蹴りの図で使った「ろう石」は、グラスファイバーの主原料に使われるほか、耐火物、建材、陶磁器にも使われています。

3つの火山で形成された富士山!火山は温泉も生み出す

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「糸魚川―静岡構造線」は、新潟県の糸魚川から長野県の諏訪湖を経由して静岡県まで、本州を貫く大断層。約1500〜2000万年前に東側が大規模に陥没したために形成されました。断層の西側は白馬岳や立山、槍ヶ岳などの荒々しい山岳地帯、東側は松本や甲府などの盆地が点々とつながっています。

構造線の発掘調査では、過去8000年の間に4回の地震があり、直近では1000〜1500年前の地震が推定されています。この他、各地の各断層地図が展示されているので、自宅周辺の「活断層」も確認でき、地震等の災害が身近にあることが実感できます。

3つの火山で形成された富士山!火山は温泉も生み出す
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「生活と地質現象」をテーマの第3展示室では、日本を代表する火山の富士山と温泉地の箱根の地質模型が展示され、スイッチを押すと富士山と箱根の地質断面を見ることが出来ます。富士山は、小御岳、古富士、新富士の3つの火山と噴出物で形成され、第2展示室の「地質模型」と重ねると、相模トラフと駿河トラフの交差点が富士山に見えます。

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箱根は、駒ヶ岳と堰止湖の芦ノ湖を中心に、金時山、丸山、三国山などの外輪山に囲まれたカルデラ。現在でも大湧谷などで火山活動が活発です。火山は噴火の災害もありますが、湯本温泉をはじめ強羅や芦ノ湖など数多くの温泉地を育んでいます。

第4展示場は、年代別の化石の展示と金、銀、水晶などの鉱物の分類展示

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地質標本館に展示されている標本は、鉱物、岩石、化石など約2000点。「岩石・鉱物・化石の分類展示」の第4展示室では、鉱物を、金や銀、堂など「元素鉱物」より順に、複雑に形成された鉱物に分類されて展示されています。化石は、古生代、シルル紀のサンゴやウミユリ、三葉虫に始まり、新生代の化石と年代順に展示されています。

第4展示場は、年代別の化石の展示と金、銀、水晶などの鉱物の分類展示
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鉄と硫黄で形成された「黄鉄鉱(おうてっこう)」は鉱物というより金属そのもの。以前は硫酸の原料として利用されていましたが、近年、薄膜太陽電池の原料として注目されています。

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つくば市内の花室川河床から発見されたナウマン象の臼歯の化石。1万年〜170万年前の日本列島では、数種類の像が生息していたことが判明されています。その後、気候の変動や、海水準の変動などの影響で絶滅しました。

地球科学に特化した科学館!ショップもユニークなグッズ満載

地球科学に特化した地質標本館のミュージアムのオリジナルグッズもユニークです。「アンモナイト手ぬぐい」や、「放散虫手ぬぐい」など標本館でしか手に入らないものばかりです。また、三葉虫や、アンモナイト、恐竜の歯など本物の化石で型を取った「化石チョコレート」は産業技術総合研究所内のコンビニエンスストアやつくば駅の売店で購入できます。

地質標本館はテーマごとに展示されているため順路を進み、「中央構造線」や、「駿河トラフ、相模トラスト」や、日本列島付近に集中する海溝の存在を知ることにより、エントランスホールの地震分布の状況を、理解することが出来ます。地質標本館は入館料無料。地質を学び各地の「不思議」を解明できれば、旅の楽しみは広がります。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/02/17 訪問

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