伊予宇和島から信州千曲へ。ひと目十万本の「あんずの里」

伊予宇和島から信州千曲へ。ひと目十万本の「あんずの里」

更新日:2017/03/14 15:19

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
桜の花より少し前の4月初旬、善光寺平の雪がすっかり消えてしまう頃、千曲の春の訪れは、桜にさきがけてあんずの花便りからはじまります。北信州千曲市の森・倉科地区は『ひと目十万本』とうたわれる日本一のあんずの里として世に名を馳せてきました。4月上旬から中旬の見頃を迎えると、静かな山里が薄紅色一色に染まり、山裾の畑から集落にかけて、まるで家々があんずの花のなかに埋もれているかのような風景が現れますよ。

あんずの便りに故郷を想う「信州千曲あんずの里」

あんずの便りに故郷を想う「信州千曲あんずの里」

写真:和山 光一

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「ひと目十万本 日本一のあんずの里」と言われる信州千曲市森・倉科地区が日本一のあんずの里になった所以は、江戸時代元禄の頃、伊予宇和島藩主伊達宗利公の息女・豊姫が第三代松代藩主・真田幸道公に興し入れの折、故郷を偲ぶ品としてあんずの種子を持参したことがはじまりと伝わっています。豊姫はあんずの花に温暖な故郷を偲んだのかもしれませんね。その後、松代藩では殖産のためあんずの栽培を奨励したこともあり、千曲市に根付き、今では日本有数のあんずの生産地となっています。

長野自動車道更埴ICで降りてあんずの里へ5Kmほどの距離で上平展望台や一番奥の窪山展望公園(公営第二駐車場)に車を停めることができます。4月初旬静かな山里の5km四方が薄紅色に染まり、展望台から見渡す全景は一面あんずの花で春霞のようにうめつくされた圧巻の風景です。よく晴れた日には遠くに飯綱山や戸隠連峰など雪の残る稜線が美しい山々の景色も一緒に堪能することができます。開花期間はほぼ一週間と短く、見頃を見逃さないように注意しましょう。

あんずの便りに故郷を想う「信州千曲あんずの里」

写真:和山 光一

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直下の上平展望台からもあんずの里一面の花霞がみえます。展望台からの眺めは、花の雲の中に寺や民家の屋根が見え隠れして心が和みますよ。

全国から観光客が訪れる「あんず祭り」は1956年から行われていて期間中、上平展望台にある花さか村広場では、“花さかフェスタ”が催されます。千曲市キャラクターあん姫の顔だしパネルが設置され、あん姫プレミアムソフトやあん姫クリーム大福等がいただけます。

甘い香りに包まれ薄紅に霞む花の山里を歩く

甘い香りに包まれ薄紅に霞む花の山里を歩く

写真:和山 光一

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窪山展望公園や上平展望台からの眺めもいいですが、花のトンネルをくぐりながらのそぞろ歩きもまた格別ですよ。杏畑の中の小径を歩けば、可憐な淡い花を間近に感じられます。そんなあんず畑の中を歩いていると映画「博士の愛した数式(2006年)」を思いだします。劇中では見る人の心を和ませる信州の風景が登場し、予告編やポスターにも使用された満開のあんずの花の下を博士(寺尾聡)と杏子(深津絵里)が歩くシーンが印象的でピンクの花の美しさに思わず目を見張ってしまいます。

あんずの里内のあんずはすべて農作物ですので田畑はすべて立ち入り禁止です。また養蜂の巣箱も数ヵ所設置されているので危険ですから近づかないようにしましょう。

甘い香りに包まれ薄紅に霞む花の山里を歩く

写真:和山 光一

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窪山展望公園への戻り道で展望台を仰ぎみてください。手前の杏の木の枝にびっしりとついた花が満開になっているのも美しいのですが、奥に映る蕾が膨らみはじめた濃いピンクの頃も枝の色が変化したようで趣がありますよ。ふわっとした花びらも素敵ですが、もうすぐ咲き出しそうな蕾も愛らしいのです。

修復された旧家から里を眺める「あんずの里スケッチパーク」

修復された旧家から里を眺める「あんずの里スケッチパーク」

写真:和山 光一

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窪山展望台下から500mの奥まった場所に「あんずの里スケッチパーク」があります。旧家を修復整備して、あんずの古木なども移植し、昔ながらのあんずの里の風景を再現した施設です。休憩室・あんずの歴史資料・あんず製品などの展示館があり、色々な種類の杏の木がある園内の散策も楽しみながらゆっくりとくつろげます。青い空と冠雪した飯綱山を背景にピンクに色づくあんずの木はまるで一枚のスケッチ画のようです。

あんずの味は今でこそデザートやスイーツ、あんず酒として食されていますが、昔から杏仁を薬用として使っていたのです。咳や滋養強壮、毒消しなどに効果がありますよ。

修復された旧家から里を眺める「あんずの里スケッチパーク」

写真:和山 光一

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天皇皇后両陛下が、2013年4月に初めての私的なご旅行に選ばれたのが千曲市のあんずの里でした。「あんずの里スケッチパーク」には記念碑と歌碑が立てられています。歌碑には『赤き萼(がく)の反りつつ咲ける白き花の あんず愛でつつ妹と歩みぬ』と刻まれています。

杏の里にある桜の名所「禅透院」

杏の里にある桜の名所「禅透院」

写真:和山 光一

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あんずの里スケッチパークから沢山川沿いに歩くと天文11年(1542)清野山城守勝輝公によって創建された曹洞宗の古刹「神龍山 禅透院」があります。本山は福井県永平寺と横浜総持寺であり、釈迦牟尼仏を御本尊と仰ぎます。

江戸期に北国街道が整備される前、主要道として賑わった古道沿いで、川中島合戦の折には戦場となった場所です。手入れの行き届いた庭園には杏の木に混じってしだれ桜の古木があり、歴史ある寺の風景を美しく彩ります。杏と桜は数日の差で咲くことが多いので運がよければ両方見ることができますよ。

杏の一字をいただく一軒宿のぬくもり「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」

杏の一字をいただく一軒宿のぬくもり「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」

写真:和山 光一

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あんずの里で春をいただいた後は、車で10分程、威風堂々とした外観がかつて善光寺道(北国西街道)の宿場町として栄え今も土蔵造りの町並の残る稲荷山宿に調和している「稲荷山温泉 ホテル杏泉閣」がおすすめです。源泉地の名前をとった公衆浴場「湯ノ崎の湯」も併設していていますが、旅館の内湯が日帰り入浴可能です。今もなお白壁、なまこ壁、漆喰壁など大きな蔵や格子戸のある町屋が残る稲荷山地区の散策の起点にもなる宿です。

稲荷山温泉の歴史は古く、平安時代末期に木曽義仲が兵を率いて善光寺に参拝する折、白狐が源泉で傷を癒しているのを発見したことに始まります。以来この源泉に「湯ノ崎」と名付け、以来村人や善光寺街道の旅人にお湯を提供してきました。

杏の一字をいただく一軒宿のぬくもり「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」

写真:和山 光一

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入浴料は大人一人500円と安く、露天風呂のある内湯はのんびりゆったりといで湯情緒を楽しむのに最適です。露天風呂は千曲・姨捨の名月をモチーフにした三日月型の湯船になっていますがちょっと浅めかも。泉質は無色透明の硫化水素泉なので身体の芯からポカポカに温まりますよ。

春も夏も訪れたい千曲市「あんずの里」

上信越自動車道と長野自動車道が合流する交通の要衛・更科市と、県内随一の湯の町として知られる戸倉町および上山田町が合併し2003年9月1日に誕生すたのが千曲市です。「日本一のあんずの里」として知られる旧更埴市の森・倉科地区では春はあんずまつりで花の美しさに感動し、初夏にはあんずの実が楽しめます。鮮やかなオレンジ色の実の甘酸っぱい香りに包まれながら楽しむあんず狩りは初夏限定のイベントで、爽やかな夏の味が堪能できます。

あんずまつりの期間中は道路が混雑するので、しなの鉄道屋代駅からのシャトルバスを利用するのもいいです。屋代駅からあんずの里まで4.3Km、1回大人200円で乗れますよ。屋代駅構内にある「屋代駅ウエルカムステーション」で観光・催事の地元情報を入手してから出発してください。特にあんずの里をウォーキングマップとともに紹介している“あんずの里マップ”は必ずゲットしましょう。徒歩で1時間程度の距離ですので帰りは「あんずの里物産館」や「あんずの里アグリパーク」に寄り道してあんず商品をお土産にいかがですか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/04/02 訪問

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