五台山山上、竹林寺の境内に向かって石段が連なる先に浄域の境として桟瓦葺きの山門がどっしりと鎮座し、竹林寺の格の高さを見せつけます。高欄付きの縁をめぐらせた上層を支える三手先の組物に力強さにも感じ、また屋根を支える並行垂木の縦のラインと軒桁の横のラインが好対照もなしています。
門の左右には江戸期の作と伝わる仁王像も配します。おおらかかつ強調的に彫られた厳めしい顔や筋骨隆々とした体躯が、寺内に仏敵の侵入を阻む仁王の役割をお遍路さんをはじめとする参拝者に分かりやすく伝えているかのようです。
文殊菩薩を本尊とすることから文殊堂とも呼ばれる本堂は、寛永21(1644)年に土佐藩2代藩主・山内忠義によって造営されたもので、国の重要文化財に指定されています。建築は江戸期ですが、室町期の建築様式に倣っています。単層入母屋造、屋根は美しい杮葺きをしており、扇垂木も特徴的です。蟇股や木鼻の木彫の細かさなどから多くの崇敬を集めたであろうことが改めて実感されます。
本堂の向かい側には弘法大師を祀る大師堂もあります。こちらは桟瓦葺きの入母屋造。本堂と同じく忠義による造営であり、蟇股には山内家家紋・丸に三つ柏紋が見られます。
大師堂のそば、やや高いところに五重塔と一言地蔵尊があります。五重塔は明治32(1899)年に台風によって倒壊した三重塔に代わって昭和55(1980)年に再建されました。高さ31メートル、総檜造り、装飾の少ない鎌倉初期の様式を伝えています。
また、五重塔の脇には一つだけ願いを叶えるという一言地蔵尊もあります。小さな祠に祀られたものですが、お遍路さんにも知られた人気のお地蔵さんです。
山門の前から参道を外れ、書院へ。書院客殿より眺めることができる庭園も、荒廃したため江戸期に改められたとはされていますが鎌倉期の禅僧であり有名な作庭家としても知られる夢窓疎石の作庭で、県下三名園の一つに数えられる必見の代物です。
北庭は明るい印象の庭園。山に向かって半円状に木々を植えているため、どこの位置に立っても庭木が正面に来るようになっています。茶室のほうに池泉も配します。静かな山村のようでもありますが、全体が蓬莱山境を表現していると言われています。
西庭は閑寂な印象で、アセビやサツキ、ツツジなどが鬱蒼と植わります。亀島鶴島の庭になっており、石橋を亀の頭とし右の汀にぽつぽつと立てられている石が亀の手足、斜面が亀の体になるように表現されています。写真にはありませんが、左の古井戸の一角が鶴島となっています。手前は一直線に仕切られており、後ろに引いて見ることで、池が手前に続いているように見えるよう演出されているのも粋です。
高知市東郊に鎮座して土佐藩主などの篤い信仰を受けた竹林寺。四国霊場第31番札所として知られる一方、中世の様式を映した趣のある建築、今も人気を集める地蔵尊、夢窓疎石作庭の名庭など多彩な見どころもあり、宝物館にも古くから伝わる仏像群が安置されています。いずれも重要文化財であり、中には行基の作と伝わるものまであります。
県都・高知に脈々と受け継がれてきた信仰の片鱗が垣間見える竹林寺は、一見の価値ある名刹です。
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