赤字もネタにひた走る!三陸鉄道「こたつ列車」で手作り感満載のふれあいの旅

赤字もネタにひた走る!三陸鉄道「こたつ列車」で手作り感満載のふれあいの旅

更新日:2017/02/23 13:51

岩手県の東沿岸、三陸地方のリアス式海岸を南北に縫うように走る赤字路線が「三陸鉄道」です。北端の久慈駅から南下し宮古駅までを走る北リアス線、釜石駅から南端の盛駅までを走る南リアス線に分かれています。
北リアス線だけの冬季限定イベント列車、三陸の冬を走る「こたつ列車」。その魅力や、運行を支える駅員さんやボランティアの皆さんの、心温まるおもてなしの工夫をご紹介します。


大漁旗でお見送り、1時間41分ののんびり旅

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赤字経営の三陸鉄道こたつ列車は、冬季間に運行されるイベント列車。平成28年12月17日(土)〜平成29年3月26日(日)の土日祝日および平成29年1月3・4・5日に運行します。席の予約は乗車日の1か月前から(毎年ほぼ同時期に運行されます)。

往路にあたる久慈駅発は12:13発。宮古駅までの1時間41分ののんびり旅です(1日フリー乗車券2,500円、指定席料金500円)。お弁当もこたつ列車の醍醐味なので一緒に予約をお勧めします。お弁当の予約は久慈駅発だけなのでご注意を。

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跨線橋を渡り車両とご対面。ホームではレトロな車両がお客様も乗車を待っています。個性的なのは、通常の外観では四角いだけの車両ではなく、なんと屋根の上にさらに越し屋根があるところ。越し屋根とは、民家などで通気や採光の為に作られている屋根を指しており、そのデザインを車両に再現しているのです。車内の天井には行燈状に取り付けられた照明があり、天窓のように見えるところにもその様子が伺えます。

また「こたつ列車」の名前の由来となっているこたつは掘りごたつ形式、靴を脱いでくつろぐことができます。こたつ越しに向かい合ってお弁当やおやつを食べながら車窓を眺め会話を弾ませることができるのです。里帰りした我が家のような懐かしい趣なのも、そういったキメ細かなところを演出されているからなのです。

大漁旗でお見送り、1時間41分ののんびり旅
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出発は久慈の大漁旗でお見送り。こちらは久慈駅発だけなので要チェックです。写真は特別に駅舎内で撮影したものですが、普段は車窓越しにホームから旗を振ってくれます。
車内は全席指定、客車入口には立派な指定席の案内板が。ちょっと大きすぎるくらいなのですがよく見ると手作りです。

サービス満点!赤字なのにもらえる“赤字せんべい”

サービス満点!赤字なのにもらえる“赤字せんべい”

指定席であるこたつに座ると赤字せんべい(写真)が備付けられています。赤字なのにもらえるせんべいが嬉しい!ユーモアも味付けの一部です。写真の1日フリー乗車券と、昔ながらの紙製切符のデザインも懐かしさの演出のひとつ。この切符は持ち帰ることができるのでいい記念になります。

サービス満点!赤字なのにもらえる“赤字せんべい”

久慈から宮古まで、乗車時間1時間41分の電車旅。醍醐味はなんといっても駅弁です。電車なのでお酒を持ち込んで楽しむのもよし、予約しておいた駅弁をいただきましょう。写真はうに弁当(左)とほたて弁当(右)です(うにあわび弁当1600円・うに弁当1700円・ほたて弁当1200円)。

お弁当には三陸海岸の海の幸がぎっしり。カタコトとゆっくりと走る車両の中で、三陸の港町を眺めながらの食事は贅沢なひと時です。

サービス満点!赤字なのにもらえる“赤字せんべい”

こたつ列車ガイドの須貝さんはとても明るく元気な方です。案内のほかに、裏方作業や車内販売まで全てをこなしています。車内には、岩手県の特産品を紹介するショウケースも設置されており、南部鉄器や鉄のアクセサリーも見ることができます。

車内のガイドでは貴重な津波にかかわる話や、有名な朝の連続テレビ小説でヒロインが演じた場所の秘話なども交えて、列車の旅を盛り上げてくれます。

手作り感満載!心も体もポッカポカ、三陸リアス式海岸を縫うように走るこたつ列車

手作り感満載!心も体もポッカポカ、三陸リアス式海岸を縫うように走るこたつ列車

久慈駅から宮古駅に向かう便が、その日の運行の往路に当たります。2両編成の内1両は通常運行の普通車両、もう1両がこたつ列車ということになり、往路はこたつ列車が先頭車両になります。

運転席は左側にレイアウトされているので、三陸リアス式海岸を縫うように走り、いくつものトンネルをくぐる様子を楽しむことができます。普段なかなか見ることのない鉄道風景は、鉄道ファンではなくてもワクワクします。

手作り感満載!心も体もポッカポカ、三陸リアス式海岸を縫うように走るこたつ列車

提供元:三陸鉄道

http://www.sanrikutetsudou.com/

車内イベントとして大好評なのが「なもみ」です。「なもみ」は秋田県のなまはげに似た岩手県北部に伝わる小正月行事の風習で、どこかのトンネルで突然車内が真っ暗になり出現します。

衣装の蓑や、手に持つ巨大な包丁まですべてはおもてなしの為の手作り。足元のわらじまで忠実に再現、ディテールのこだわりもお見逃しなく。

手作り感満載!心も体もポッカポカ、三陸リアス式海岸を縫うように走るこたつ列車

「なもみ」出現の後は、なんとその正体が明らかに。「なもみボランティア」というボランティア団体の皆さんが、毎回交代しながら無償でこのイベントを支えてくれています。赤字路線だからボランティアということではなく、こういった文化の啓蒙活動が素晴らしいですね。

写真はそのボランティアの一人である木村さん。この後、終着の宮古駅まで一緒に過ごし、三陸の様々な話をこたつ席を回りつつ話しかけてくれます。耳慣れない方言を聞くのも旅の醍醐味です。最後には乗車証明書ももらえて良い思い出になります。

往路の宮古駅着は13:54。到着の後、こたつ列車は折り返しの為、宮古駅で待機になりますので、ゆっくり記念写真を撮ることもできます。宮古駅構内では三陸鉄道のオリジナルグッズなどの販売もしており、地元の人気店とのコラボ飲料やスイーツ、小物アクセサリーなど、お土産も充実しています。沢山のお買い物をして地域貢献をお勧めします。
三陸鉄道1日フリー乗車券なら乗り放題。更に三陸鉄道北リアス線の復路をお楽しみください。

日常と非日常を一緒に運ぶローカル線

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三陸鉄道北リアス線、宮古駅発はこたつ列車の復路にあたります、三陸鉄道は地域の足となっているので普通車両との2両編成なのです。この時間帯は学生さんたちの利用もあり、待合室は少々賑やかです。

往路の久慈発の場合ちょうどお昼に走行するのでお弁当を楽しむという醍醐味もあり人気なのですが、復路というのは実は乗客は少なめなの。でも、そこが実はいいところ!手作り感満載の心温まる復路の旅を楽しみましょう。

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復路から予約のお客様なら、乗車券と指定席券を受け取るため発券のお姉さんに一声かけましょう。開放的な窓の大きさに親近感を感じます。味のある発券場は必見、あえて次の機会にはこのアナログな券売機で切符を買ってみるのもいいですよ。

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改札をくぐると目の前が出発ホームで、往路の車両がそのまま停車しています。早速乗車というところですがお決まりの記念撮影をどうぞ。久慈駅発の時には大漁旗でお見送りのサプライズがありますが、復路の宮古駅ではそれはなし。代わりに目の前で運転士さんが出迎えてくれています。勇気を出して写真撮影をお願いすれば快く応えてくれます。

お買いもので地産地消を応援

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こたつ列車にとって宮古駅発は復路にあたります。復路の乗客のほとんどは久慈駅からの折り返しのお客様なので、ほぼ同じガイドをさかさまに聞くことになるのです。車内イベントの「なもみ」も登場、役を演じ終えたなもみボランティアの皆さんも、お面を外し往路以上に気さくに歓談してくれます。

実は復路ならではの楽しさの秘訣があるので少しご紹介しましょう。(1)車内ガイドさんと仲良くなれる(2)なもみボランティアさんと仲良くなれる(3)乗客同士仲良くなれる(4)結果的に車両内が和やかになる。良いこと尽くしです。

さらに、写真の様子がおかしいことに気づくでしょうか、乗客は全員進行方向右側ですね、これは車窓からの風景が右に海が広がるからなのです。三陸鉄道の粋な計らいです。

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宮古駅発限定の予約スイーツセット(700円)があるのですが、予約なしで買える車内販売もおすすめです。さんてつサイダーは地元の老舗飲料品メーカーとのコラボ飲料。ここでしか味わえない爽やかな味です。ガイドさんお勧めの黒豆ゼリーは180円、豆の存在感が絶妙。他にも山葡萄ゼリーがあります。

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いよいよ終着の久慈駅に近づくと、東北の冬は日没も早く薄暗くなり、ローカル線の旅情もさらに増してきます。久慈駅到着は16:46。この時間からのお買いものは、駅周辺のお店がどんどん閉まってしまいますのでご注意を。

お土産は駅舎構内の売店がおすすめ、手作り感満載のストラップは500円。旅の締めくくりまで三陸鉄道のおもてなしにどっぷり浸ってください。

三陸鉄道から生まれるアイデアは一つ一つに注目の価値あり

いかがでしたか、三陸鉄道北リアス線は駅員の皆さん一人ひとりの思いのこもった運営をされています。赤字せんべいというユニークなせんべいも販売、赤字をもネタにしてしまうバイタリティーがあるのです。さらに、こたつ席ごとにアンケート用紙もあますが、よく見ると車両デザインの用紙トレイはなんと手作り。温かみを感じる瞬間。これは一言書かずにはいられませんね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/01/29 訪問

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