ロシア・エルミタージュ美術館でルネサンス美術を見る!

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ロシア・エルミタージュ美術館でルネサンス美術を見る!

ロシア・エルミタージュ美術館でルネサンス美術を見る!

更新日:2017/02/01 14:35

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家

ロシアのサンクトペテルブルグ観光の中心であるエルミタージュ美術館の大きな魅力は、ルネサンス絵画が豊富にあることです。そこで、観光時間が少ない場合、集中的にルネサンス美術を見て回ることをおすすめします。一番人気の美術品で見学者も多いので、展示場所をあらかじめ頭に入れておき効率的に回ってください。

エルミタージュのルネサンス美術概要

写真:菊池 模糊

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エルミタージュ美術館のルネサンス美術品は、主に旧エルミタージュの2階にあります。大使の階段から二階に上がり、建物の外側を回る感じで見て行きます。

内容的には、初期ルネサンス、盛期ルネサンス(三大巨匠)、ヴェネチア派ルネサンス、北方ルネサンスという形で、テーマ別に見学すれば、非常によく理解できますので、そのポイントを紹介します。

なお、エルミタージュ美術館の全体的な概要や注意点については、下記メモ欄から「【たびねす】世界最大規模!ロシア・エルミタージュ美術館を完全制覇」を参照してください。

写真:菊池 模糊

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ルネサンスとは、14〜15世紀のイタリアで古代ローマやギリシアの芸術や学問の復興をめざす文化潮流が興り、ヨーロッパ各地に波及していったもの。その後、18世紀にロシアのロマノフ王朝の女帝エカテリーナ2世は、啓蒙君主としてロシアの文化を高めようと、ルネサンスを中心とした西欧の美術品を収集したのがエルミタージュ美術館のはじまりです。したがってエルミタージュは、ロシアの西欧へのあこがれが詰まっていると言えるでしょう。

エカテリーナ2世は、ヴァチカン宮殿の回廊に描かれたラファエロのフレスコ画を気に入り、その複製を注文。そして、エルミタージュにヴァチカンを模した回廊をわざわざ造り、複製絵画をはめこんだのです。これが写真の「ラファエロの回廊(開廊)」で、今ではヴァチカンのフレスコ原画は一部失われてしまったので、非常に貴重なものとなっています。

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ラファエロの回廊に続いて、ラファエロの間があります。中心にはルネサンス期のイタリアの陶器であるマジョリカ焼(マヨルカ焼)が大切に飾られており、その周りにルネサンス絵画があります。インテリアとしての内装も素晴らしく、天井構造も見事。このようにルネサンスの芸術品は、部屋そのものも素敵な場所にありますので、全体的な雰囲気も味わってください。

初期ルネサンス絵画も豊富!

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フラ・アンジェリコ『聖母子と天使』

エルミタージュ美術館の初期ルネサンス美術群も注目に値するものです。多くの作品が展示されていますので、時間の許す限り、ゆっくりと鑑賞してください。

フラ・アンジェリコは、15世紀前半に活躍した修道士画家で、その優しい画風と優れた人格からとても人気があります。『聖母子と天使』は、聖母子の周りに天使たちを配して、いかにもフラ・アンジェリコらしい作品。古いゴシック的要素と新しいルネサンス的要素が混在しており、古色を残した雰囲気が素朴感を漂わせています。額装と一体化しており、祭壇画の中心部パネルであった可能性もあります。

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ポッティチーニ『聖女バルバラと聖マルティヌスのいる幼児キリストの礼拝』

ポッティチーニは、ボッティチェリとほぼ同年代で名前が似ているため、混同された画家ですが、最近ようやくそのアイデンティティーが整理され、研究途上にあります。この『聖女バルバラと聖マルティヌスのいる幼児キリストの礼拝』という作品は、完成度が高く大型であることから、きわめて貴重なもので、今後注目されていくことが期待されます。

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ヴェロッキオ『聖母子』

ヴェロッキオは、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめボッティチェリ、ペルジーノ、ギルランダイオらの師匠で、当時フィレンツェで最も優れた美術工房を運営していました。『キリストの洗礼』という作品を描いた時、弟子レオナルドにキリストのローブを捧げ持つ天使を担当させたのですが、レオナルドがあまりに見事に描いたことから、師ヴェロッキオは二度と絵画を描くことはなく彫刻に専念するようになったそうです。

写真の『聖母子』を見ると、すでにゴシック的な古さは無く垢抜けしており、ルネサンス絵画の描き方になっています。ヴェロッキオの工房から出た画家たちが、ルネサンス盛期をかざる作品を描く時代が到来したことを感じさせます。

ルネサンス三大巨匠に陶酔!

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レオナルド・ダ・ヴィンチ『リッタの聖母』

エルミタージュ美術館には、もちろんルネサンス盛期の三大巨匠の作品があります。レオナルド・ダ・ヴィンチが二点、ラファエロが二点、ミケランジェロが一点ですので、忘れないように見学してください。

一番人気は、天才レオナルド・ダ・ヴィンチの『リッタの聖母』です。レオナルドの描いた聖母の中で最も美しいとする見方もあることから、いつも観覧者が殺到しています。画面中央、幼児キリストが左手に持っているのが五色鶸(ゴシキヒワ)で受難の象徴。この作品の成立年代については諸説ありますが、レオナルドが発明したスフマート技法がふんだんに使われており、中期の作品である可能性が高いです。レオナルドが描いた元絵に、弟子たちによる加筆修正が加えられた可能性もあるとされています。

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ラファエロ『聖家族』

この作品は『髭の無い聖ヨセフのいる聖家族』あるいは『聖母子と髭のない聖ヨセフ』とも呼ばれています。ラファエロがペルージャ風を脱して、フィレンツエで巨匠たちの影響を受けて画風を変えていく時期に描かれたものです。ラファエロとしては数少ない「風景が見える窓が描かれた作品」でもあります。

ラファエロは、究極の聖母の画家であり、その優雅で調和に満ちた作品は、ルネサンスの古典的様式の頂点を体現しています。37歳でラファエロが夭折すると、安定感を脱したマニエリスム様式が主流となり、ラファエロの穏やかな世界から遠ざかっていきます。

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ミケランジェロ『うずくまる少年』

ミケランジェロの彫刻作品は、本国のイタリア以外ではほとんど見られないので、『うずくまる少年』は貴重なものです。この作品は前面の手足の指部分が彫られていないことから、未完の作品とする説が有力です。しかし、脚や背中の筋肉表現がミケランジェロらしい極めてリアルなもの。なぜ少年が、うずくまっている姿なのかについては諸説あります。

ミケランジェロは、彫刻のみならず絵画や建築にも大きな足跡を残したルネサンスを代表する巨匠で、「神から愛された男 」とも呼ばれました。ルネサンスの次の西洋芸術運動であるマニエリスムに最も影響を与えた芸術家でもあります。

ヴェネチア派の絵画も素敵!

写真:菊池 模糊

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ティツィアーノ『懺悔するマグダラのマリア』

エルミタージュ美術館にはルネサンス期に大きな光芒を放ったヴェネチア派絵画も多く展示されています。中でもティツィアーノの秀作がたくさんあります。

ティツィアーノは天才的な筆使いで、大胆かつ表現力豊かな絵画世界を展開したヴェネチア派最大の巨匠。『懺悔するマグダラのマリア』は、ティツィアーノ作品として宗教性と官能性を併せ持つことから、広く賞賛を受けたテーマで、何度も描かれました。エルミタージュ美術館のものは、マグダラのマリアが着衣姿であることが特徴で、表情も迫真的で、ティツィアーノ晩年の円熟した境地を示しています。

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ティツィアーノ『ダナエ』

『ダナエ』もティツィアーノが好んで描いたモチーフです。ギリシャ神話で、娘ダナエの生む子により殺さるという神託を受けたアルゴス王アクリシオスは、ダナエを幽閉しますが、オリンポスの主神ゼウスが黄金の雨となって部屋に侵入し、ダナエを妊娠させます。その結果、生まれたのがメドゥーサ退治を成し遂げた英雄ペルセウス。後に祖父アクリシオスを円盤投げ競技会の事故により殺します。

この絵は、ゼウスが部屋に侵入した瞬間を描いており、裸で横たわるダナエの右側で侍女が降り注ぐ金貨を集めようと布を広げています。エルミタージュ美術館には、全く同じテーマのレンブラントの作品もあります。時代は違いますが、二人の巨匠が描いた同名作品を比較して、どちらが貴方の好みか、鑑賞してみてください。

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ヴェロネーゼ『聖カタリナの神秘の結婚』

ルネサンス後期にはヴェネツィアを代表する画家としてヴェロネーゼが活躍しました。ティツィアーノの人間表現や色彩を受け継ぎ、神話や聖書逸話に題材をとった物語性豊かな作品を多く生み出しました。

聖カタリナは、4世紀はじめにアレキサンドリアで殉教した聖人で、イエスと結婚するという神秘的な幻想を体験しました。この絵では、聖カタリナが聖母マリアに抱かれた幼児キリストの祝福を受けています。

北方ルネサンスの巨匠クラーナハを満喫!

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クラーナハ『林檎の木の下の聖母子』

クラーナハは、ドイツのヴィッテンベルクで活躍した北方ルネサンスの巨匠です。日本でも大回顧展が開かれ、最近になって、よく知られるようになりました。エルミタージュ美術館には、クラーナハの逸品が多く展示されていますので、人気急上昇の画家の世界を楽しんでください。

宗教画も多く描いていますが、中でもこの絵は、クラーナハの聖母子像としては最高傑作。聖母の表情が柔らかく、パンと林檎を持つ幼児キリストはとても可愛いです。パンはキリストが自らの身体と見たてた聖体で、林檎とともにキリストによる救済の象徴です。
なお、この絵は、2017年3月より開かれる「大エルミタージュ展」の目玉作品として来日する予定になっています。

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クラーナハ『女の肖像』

クラーナハは、肖像画も手がけました。ザクセン選帝侯フリードリヒ3世に御用絵師として評価が高く、多くの貴族の肖像画が残されています。当時は宗教改革の嵐が吹き荒れた時代で、従来の宗教画の需要が減ったことから、肖像画に活路を見出したと思われます。

この絵では、大きな帽子を斜めに被り、腰の括れた細身の女性が描かれています。肖像画ではありますが、どこか妖しげな雰囲気があり、クラーナハ女性画の特徴が出ています。

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クラーナハ『ビーナスとキューピッド』

クラーナハは、裸婦像も多く描き、独特な官能美があることから、当時は大変な人気を博しました。神話や聖書に題材を取り、細長く不思議なプロポーションの美神像は、ヴェネチア派のティツィアーノをはじめとする豊満な女性像とは対照的です。

この絵でも、ビーナスの手が異様に長く、身長に対して顔が小さくなっており、クラーナハらしい誇張的表現がされています。イタリア・ルネサンスで完成された古典的様式を脱していく画家の表現の世界が見て取れます。

最後に

エルミタージュ美術館の総収蔵品は約300万点とされるため、詳しく見るのは不可能です。そこで、ある程度テーマを絞って、選択して見ていくことが大切です。その際「ルネサンス」というキーワードで歴史順に見ていくのが、最も分かりやすい見学方法ではないでしょうか。

ルネサンス期の有名作品を見た後は、個人的に興味のある芸術家やモチーフの作品を、じっくり見て回ってください。圧倒的な展示品量を誇るエルミタージュ美術館は、きっと貴方の期待に応えてくれるでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/20 訪問

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