アカハチの見果てぬ夢と信仰の島〜沖縄県「波照間島」

アカハチの見果てぬ夢と信仰の島〜沖縄県「波照間島」

更新日:2017/03/23 14:37

波照間島は、沖縄県八重山諸島にある日本最南端の有人島であり、世界に誇れる美しいビーチ「ニシ浜ビーチ」や、日本で南十字星が見える島として知られています。美しい自然に癒される為に、毎年多くの観光客が訪れますが、この島には歴史と信仰に彩られた数々の物語が存在します。そんな不思議の島・波照間島をご紹介しましょう。

日本最南端の島・波照間島とは

日本最南端の島・波照間島とは
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波照間島は「果てのうるま(「うるま」=琉球、またはサンゴ礁の意味)の島」から取り、波照間島と言われています。日本最南端にあり、「星空に一番近い島」ともいわれ、満天の星空、そして時期によっては南十字星を見ることが出来ます。

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そして、一番の魅力は「ニシ浜ビーチ」に代表される美しい海です!琉球の伝承では、海の彼方には「ニライ・カナイ」という理想郷があると言われています。この浜を見ていると、まさにここがニライ・カナイなのではないかと思うほどの美しさです。

英雄・オヤケアカハチの見果てぬ夢

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波照間の人々が今も大切にしている人物が、八重山の英雄として今も親しまれ、沖縄名産の泡盛にもその名があるほど愛されている「オヤケアカハチ」。アカハチは琉球統一を狙う琉球王国への従属の印である「貢物」を拒み、独立を守る為に琉球王国へ戦いを挑んだものの、逆賊として一族郎党ごと殺されました。

確かにアカハチは負けましたが、最後まで琉球王国に屈せず、八重山を守るために戦った英雄として今も愛され続けています。彼の生誕地・波照間島には、生誕地を示す石碑(写真)が今も市内の森の中にひっそりと佇んでいます。

不思議な伝承が多く残る島・波照間島

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波照間島には一見なにげない風景にも、不思議な伝承が多く残っています。たとえば、上の写真の道「祖平花道」にはこんな言い伝えがあります。

人頭税を運ぶ馬艦船の船頭・祖平宇根は、ある日暴風雨にあって中国に漂着し、現地の千里眼を持つ女性と恋仲になります。彼が帰国する際、その女性は記念に航路図と波照間島の風水図を彼に渡しました。航路図に従って無事帰国を果たした彼は、風水図を基に道を作り、その道沿いにコート盛などを設置したところ、島に漂う気の巡りが良くなったのか、航路が安全になったそうです。

風水等の占いと実用的な建造物を融合させて都市計画を作ることは、平安京など多くの都市で見られる現象であり、非常に興味深いですね。

不思議な伝承が多く残る島・波照間島

先ほどの祖平花道の話に出てきたコート盛(写真)は、琉球石灰岩を積み重ねて作った遠見台です。琉球王朝時代に建造され、波照間北側の往来する船を監視し、有事の際は煙を上げて通報しました。今もコート盛周辺には高い建築物が無く、一面畑が広がっているのみですので、当時と同じように海が遥か彼方まで見渡せます。

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また、島の外れの鬱蒼とした森の奥にある古井戸にはこんな伝説が残っています。

この場所には昔「シムス村」という集落があり、この古井戸はその当時から使われていましたが、大干ばつが島中を襲った時も、この井戸の水だけは枯れなかったそうです。今もうっすらと水をたたえています。

このように波照間島には、数々の不思議や伝説が、鬱蒼とした森や町の片隅、思いがけない場所に静かに佇み、旅人の訪れを待っています。そんな波照間島の不思議探検を、宝探しのように楽しんでみては如何でしょう?

信仰が息づく御嶽(うたき)

信仰が息づく御嶽(うたき)
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波照間島を語る上で御嶽(うたき)を外すわけにはいきません。御嶽とは、琉球の神がおられたり、降臨したりする場であり、更に祖先神を祀る場所を言います。地域を守護する聖域ですので、許された御嶽以外は、観光客などの部外者は絶対に足を踏み入れてはいけません。

御嶽は神社や仏閣などの建物ではなく、上の写真のように森の空間や岩の間、または川や泉、島そのものの場合もあります。御嶽では神に仕える女性(「ノロ」と呼ばれます)が主に祭事を行い、琉球王国時代は男子禁制でした。現在もその多くが男子禁制ですので注意が必要です。

信仰が息づく御嶽(うたき)
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波照間島を含む沖縄諸島では、自分の祖先達を「祖先神」とし、自分達を見守ってくれる霊的存在と考えます。そして感謝の心を持って祖先神を崇拝することで、幸福や一族の繁栄が続くと信じられています。その祖先神とアニミズムが融合した「神」は、海の彼方「ニライ・カナイ」に棲んでいるとされ、今も沖縄の人々に信仰され続けています。

歴史と信仰が息づく島・波照間島

波照間島といえば「波照間ブルー」という言葉に代表される美しい海や、満天の星空が魅力の観光地です。しかし、波照間島には今もなお、祖先達の希望や絶望、子孫への祈りなど様々な思いが多くの物語となって生き続けています。そんな波照間の潮騒と共に聞こえる物語に、そっと耳を澄ませてみませんか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/07/12−2016/07/13 訪問

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