日本最初の公園、東京・王子の「飛鳥山公園」は通年遊べる博物館の宝庫

日本最初の公園、東京・王子の「飛鳥山公園」は通年遊べる博物館の宝庫

更新日:2017/02/03 11:33

東京には8代将軍徳川吉宗によって整備された有名な桜のお花見スポットが3か所あります。それは台東区の上野公園、隅田川沿い、そして北区にある「飛鳥山公園」です。上野公園と一緒に日本初の公園として明治6年に指定されたこの公園の魅力は、実は桜だけじゃないんです。園内に3つも博物館がある通年スポットなのです。今回はその博物館を「紙の博物館」「北区飛鳥山博物館」「渋沢史料館」の順番でご紹介いたします。

そもそも飛鳥山って何?

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飛鳥山公園はその名の通り、JR王子駅そばに山のように盛り上がった丘陵地帯にある公園です。そのため園内に入るには石段を登って入りますが、せっかくなので、ここは飛鳥山名物の「アスカルゴ」に乗っていきましょう。

アスカルゴはエスカルゴに形が似た自走式昇降モノレールで、エレベーターのように無料で利用できます。中に入ると飛鳥山の楽しみ方のアナウンスが流れます(冬場のアナウンスによるオススメはもちろん3つの博物館!)。アスカルゴを利用できる時間帯は午前10時から午後4時までと限られておりますので、その点だけはご注意を。

ちなみに飛鳥の由来ですが、昔この地に飛鳥明神の祠があったため、そのように呼ばれるようになったそうな。そのあたり詳しく知りたいなら次の写真にどうぞ。

そもそも飛鳥山って何?
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アスカルゴで公園内部に到着したら、早速博物館に向かって歩いていきましょう。ただし道中にも見どころがあるので見落とさないように!

例えば、この岩!?なんだろうと思って近づいてみると吉宗公によって、遊園として庶民に一般開放されたことを記念して、地元の金輪寺の住職が建てた記念碑だったりします。江戸時代(1737年)に建てられた貴重な碑ですので、確かに雨ざらしにはできませんね〜。

そして前段落でお伝えした飛鳥山の「飛鳥」の由来もこの碑に書いてあるらしいですが・・・よ、読めない。実はこの碑文、当時の人にとっても難解な碑文で、「読めないこと」で有名になり、川柳(「飛鳥山何と読んだか拝むなり」、などが有名)で、そのことをネタにされまくったという面白い歴史があります。

まずは「紙の博物館」から

まずは「紙の博物館」から
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さて飛鳥山の博物館ですが、まずは「紙の博物館」から紹介していきますね。王子といえば、日本の製紙工業の先駆けとなった王子製紙で有名な場所ですからね。
ここではエジプトのパピルスに始まる歴史的な展示物に加え、これも紙でできているの!と驚くような芸術作品も展示されています。

例えば、この「金唐革紙」を用いた作品。和紙に油を塗ることで革のように見える紙でできており、明治5年に東京で開発されたこの「金唐革紙」の技法は鹿鳴館やイギリスのバッキンガム宮殿の壁紙に導入されるなど一世を風靡したそうな。今まで目にしたことのない紙があるもんですね。

まずは「紙の博物館」から
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紙の博物館では企画展も催されており、2017年3月5日までは「紙で旅するニッポン」と題して、日本各地の製紙業を取り上げており、目を見張るものがあります。

例えば、九州の八女和紙を用いた山鹿灯篭(強靭な手すき和紙を用いて灯篭の模型を造る伝統技術)による熊本城の模型など圧巻です。紙と糊以外一切使っていないというのは驚きですよね。こういった紙にまつわる技術にも出会えるのが、紙の博物館の魅力ですね。

ちなみにお子様向けのコーナーも用意されていますので、家族連れでも楽しめます。

区営と侮るなかれ!飛鳥山博物館は見何処満載!

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もし、時間の都合などで3つの博物館を見て廻ることができなそうなら、この「北区飛鳥山博物館」から見てください。

実は北区周辺は縄文時代から人が住んでいたことが分かっており、縄文人の人骨や土偶などが多数見つかっているんですね。それらがきれいに展示されているだけでなく、その発掘時の地層をそのままべりっと、はぎ取った形で展示もしてあり、驚かされます。

区営と侮るなかれ!飛鳥山博物館は見何処満載!
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この飛鳥山博物館の特徴は大がかりな展示にあります。写真は、北区が豊島区とともに豊島郡衙と呼ばれていた奈良・平安時代のころの正倉を模した実物大の模型です。

武蔵野国の豊島郡衙は豊島氏が治めていたためそのように呼ばれ、源頼朝にいち早く味方したことから、鎌倉時代には有力御家人として名を馳せました。え、豊島氏なんて知らない!?それもそのはず、豊島氏は戦国時代初期には江戸城(今の皇居ですね)の築城で知られる太田道灌によって滅ぼされてしまったので、歴史の教科書にはあまりでてこないかもしれませんね。

ただ徳川家康が江戸に移る前は何もなかった、というような認識だったならば、それは誤り、ということですね。

区営と侮るなかれ!飛鳥山博物館は見何処満載!
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飛鳥山を有名にしたのは前述の通り、8代将軍徳川吉宗が多くの桜を植え、庶民に憩いの場として開放したことに端を発します。

飛鳥山は「全山無礼講」であったため、花見のシーズンには酒を飲んで良し、仮装(今でいうコスプレですね)しても良し、カワラケ(宴会用の土器)を山から投げて遊んで良し、と大盛況。人が多く集まることから料亭なども集まるようになり、前述の通り、江戸中心部から日帰りで来れるという立地も相まって、観光名所として認識されるようになっていったのです。

こういった歴史を映像で学べるのが、写真の金輪寺(前述の石碑を建てた、王子にあった寺)の御座所を模したコーナーです。御座所は将軍がこの地に御成りになった際、滞在する場所なので将軍気分で!?映像を楽しみましょう。

近現代も忘れずに!

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明治〜昭和初期の北区も見逃せません。往時の長屋住居を模したコーナーでは、どんどん中に入って行きましょう。中も精巧に当時の様子を再現しているだけでなく、荒川の治水の歴史を追う映像も流れているのです。

荒川はその名通り「荒れる川」で、北区のみならず東京の下町全域を幾度も氾濫して襲い、治水は重大なテーマでした。昭和5年に17年の歳月をかけた荒川放水路の工事が終わるまで、洪水と隣り合わせで暮らしていたのです。実際に家屋の天井に木のボートが釣り下がっているなど、洪水に備えた暮らしをこの家屋の展示からも伺い知ることができます。

ただ飛鳥山に避難できる恵まれた地形だったこともあり、北区の被害者は少なかったそうです。

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展示はこれで終わりではありません。最上階のアートギャラリーにも忘れずに寄っていってください。北区にゆかりのある現代アートや伝統工芸品の巨匠の作品が展示してあり、こちらは無料で自由に閲覧することができます。
このフロアにはカフェもありますので歩き疲れたら、ゆっくりくつろぎましょう。

渋沢栄一の偉業に触れる

渋沢栄一の偉業に触れる
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さて、最後の「渋沢史料館」ですが、ここも驚きの連続です。展示が派手という意味でなく、渋沢栄一の「偉業」にです。

幕臣として、最後の将軍徳川慶喜に仕え、その後明治維新の官僚として、または実業家として、日本に資本主義を根付かせた大人物です。

幕臣時代に行ったパリ万博で「株式会社」という制度を学び、明治維新にはその浸透を図るべく、500社以上の株式会社の設立に携わり、その企業は超有名どころばかりで、例を挙げればきりがありません。例えば、前述の王子製紙はもとより、第一勧銀、日本郵船、東京瓦斯、川崎重工、アサヒビール、清水建設などあらゆる産業の振興に携わっている経済界の重鎮なのです。

さらに偉業は続きます。教育にも熱心だった渋沢は一橋大学や国士舘大学、日本女子大学などの創立に関わるなど貢献した社会・公共事業はなんと約600!!ため息しかでませんね。

渋沢栄一の偉業に触れる
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そしてその渋沢栄一が居を構えていたのが、何を隠そうこの飛鳥山だったのです。

残念ながら太平洋戦争の空襲でその家屋の多くが失われ、現在残っているのは写真の青淵文庫(せいえんぶんこ)と晩香廬(ばんこうろ)という平屋のみです。いずれも国の指定重要文化財ですが、10:00〜15:45の間にかけ、中に入ることができます。また、かつて存在した渋沢庭園の配置は青淵文庫の中で見ることができます。

いずれの建物も「渋沢史料館」の近くにありますから、営業時間を鑑みて、先にこれらから見るのも良いと思います。

飛鳥山の3つの博物館の入館料はなんと720円!

衝撃のプライスですね。飛鳥山の3つの博物館は全て運営母体が異なるのですが、三館共通券を発行しており、大人一般720円とリーズナブル。すべての博物館の開館時間は10:00〜17:00となっていますが、仮に見られなかった博物館があっても券は3か月有効なので安心です。日本最古の公園は常に庶民に優しいですね!

飛鳥山は3つの博物館という通年楽しめるスポットがありますので、お花見の時期でなくてもぜひ訪れてみてください。JR王子駅に隣接していますので(そしてアスカルゴもあるので!?)アクセスも楽々です。

では気を付けて行ってらっしゃいませ〜

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/01/25 訪問

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