写真:宮坂 大智
地図を見る台湾の台東空港から飛行機で15分、船だと富岡港から約1時間の場所に浮かぶ緑島は、かつて白色テロによって政治犯にされた人々の収容所があったことから監獄の島と呼ばれていました。しかし、現在ではその美しい自然と海洋資源を活かした一大観光地となっています。
緑島と聞くと、自然豊かな島を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、昔は「火燒島(huo shao dao|ホーシャオダオ)」という正反対の名前で呼ばれる島でした。火燒島と名付けられた由来には諸説ありますが、その中でももっともロマンを感じさせる伝説が今回ご紹介する「観音堂」にあります。
写真:宮坂 大智
地図を見る観音堂は天然の鍾乳洞そのものが寺院になっているという、非常に珍しい宗教施設です。中に入ると台湾の寺院で必ず見られるはずの神像の類はいっさい無く、石灰岩によって作られた石筍という高さ約1メートルの鍾乳石が観音様として祀られています。これは緑島に豊富にあるサンゴ礁が隆起して石灰岩の土地を形成し、雨水が長い年月をかけて削って鍾乳洞を作り、さらにその鍾乳洞の天井から垂れた石灰水を含んだ水が生み出した大変貴重なものです。
鍾乳洞が信仰の場とされている場所は他にもいくつかありますが、自然のままの石筍そのものが神様として祀られている場所は非常に珍しいです。また、鍾乳洞の中は他の寺院と異なり装飾がほとんどないため、いっそう神聖な雰囲気に包まれています。ここまで自然と同化した寺院が今でも受け継がれているのは外部と遮断された離島ならではです。
写真:宮坂 大智
地図を見る緑島は魚の豊富な黒潮に位置していますが、風と塩害のため陸地ではサツマイモとピーナッツ以外の作物はほとんど育てられませんでした。そのため、昔の人々は日常的に漁をして暮らしていました。しかし漁には常に危険が伴います。特に魚の釣れる時間帯は太陽が昇っていないことも多く、灯台のない時代の漁は命懸けの仕事でした。
そこで緑島に残る女と子どもは、海が見える高台にある観音堂のすぐそばで火を燃やし、緑島の場所を男たちに知らせる目印にしていたのです。この炎こそが、火燒島の由来となったと伝えられています。実は、火が焚かれていたのは、現在の観音堂となる鍾乳洞が見つかるよりも前からだと伝えられています。しかし、たまたまその近くに観音堂があるとは奇妙な偶然です。きっと観音様は昔から緑島の人々を見守ってくれていたのでしょう。
写真:宮坂 大智
地図を見る伝説から想像すると、観音堂は漁民の信仰を集めていると思われるかもしれませんが、現在漁民から特に信仰されているのは、海の女神様である媽祖を祀った南寮村の天后宮です。しかし、観音堂は今でも緑島の信仰の中心となっており、すべての島民が大切にしています。
初めて「火燒島」と聞いた時には、ほとんどの人が木のない荒涼とした風景を思い浮かべることでしょう。実際、緑島ではおよそ60年にわたり、家屋や家具を作ったり、暖をとるために森林伐採が行われ、森がほとんどない島になった過去があります。ですが、火燒島の名前にはこんなに美しい伝説もあるのです。
なお、現在の緑島という名前は、植林作業が進められ元通りの緑あふれる島になったことから、1949年に改称されたものです。
緑島に行くには、飛行機と船の2つの交通手段があります。飛行機は台東空港から15分で、船だと台東の富岡港から約1時間です。飛行機も船もそんなに大きくはないので、どちらも天候の影響を受けて大きく揺れることがあります。特に飛行機はわずか19人乗りと小さなサイズなので初めて乗る方は少し怖いかもしれません。
ですが、そんなアクセスも離島の楽しみです。なお、飛行機はネットから予約ができますが、1便につき4人分の席しか予約できません。飛行機で行きたい方は早めに予約をすると良いでしょう。航空券は2ヶ月前から予約ができます。
小型の飛行機は低空を飛び、窓からは海の美しさをじっくり堪能できます。が、風が強いと欠航することもしばしば。更に予定通りに出発しても機体がグラグラ揺れるため、風の強い冬に行かれる方は覚悟が必要です。
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(2024/4/26更新)
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