天守もなければ石垣もない、茨城県水戸城跡をぶらり散策

天守もなければ石垣もない、茨城県水戸城跡をぶらり散策

更新日:2017/01/26 13:42

塚本 隆司のプロフィール写真 塚本 隆司 ぼっち旅ライター
徳川御三家のひとつ、水戸徳川家の居城・水戸城。地形を巧みに利用した大規模城郭ながらも、江戸期を通じて天守もなければ石垣もないというから驚きだ。今も残る空堀や土塁からは、御三家の堂々たる風格が感じられ、日本百名城に名を連ねることもうなずける。
ドラマでおなじみ、水戸のご老公こと水戸光圀ゆかりの地であり、幕末ファンなら無視できない水戸学の地・藩校弘道館など、見どころ満載の水戸城跡を巡ってみよう。

知らなきゃ損、水戸城跡めぐりのコツ

茨城県水戸市の観光スポットといえば、日本三大庭園のひとつ「偕楽園」と水戸城三の丸跡にある「弘道館」だろう。どちらも行くなら、事前に知っておきたい、お得な情報がある。

水戸城跡は、JR水戸駅のすぐ北側。1時間くらいでぶらり巡ることができる。一方、偕楽園は水戸駅から西におよそ2キロメートルと少し離れている。レンタル自転車で千波湖畔を走りながら水戸巡りをするのもいいだろう。
バスでなら15分ほどで行ける。そこでオススメしたいのが「水戸漫遊1日フリーきっぷ」だ。通常、水戸駅〜偕楽園間の往復バス運賃が480円のところ400円に。対象区間が1日乗り放題なるうえ、偕楽園好文亭や弘道館など協賛施設の入館料金が割引になる特典もあるので、先に弘道館へ行く場合でも、「水戸漫遊1日フリーきっぷ」を買ってから行くとよい。
JR水戸駅・北口バス停7番のりば前「茨城交通水戸駅前案内所」で購入できる。

車での観光なら、偕楽園も弘道館も駐車場代無料。しかし、弘道館には13台ほどの駐車スペースしかないため、弘道館西隣にある茨城県三の丸庁舎駐車場を利用しよう。有料駐車場だが、弘道館料金所で駐車券を提示すれば3時間無料で利用ができる。

知らなきゃ損、水戸城跡めぐりのコツ

写真:塚本 隆司

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日本最大の藩校・弘道館、水戸の心ここにあり

水戸城は、北を流れる那珂川と支流の桜川によって浸食された舌状台地の先にある。南には、千波湖が現在のJR水戸駅南一帯まであり、水に囲まれた天然の要害だった。
水戸駅北口に立つと、ご存じ「水戸黄門助さん格さん像」。3人にあいさつしてから水戸城跡へと目指すことになる。

日本最大の藩校・弘道館、水戸の心ここにあり

写真:塚本 隆司

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水戸城跡は台地になっており、西から三の丸、二の丸、本丸と連なる。水戸城跡巡りの最初にオススメしたいのが、三の丸にある弘道館だ。徒歩でおよそ8分。銀杏坂(国道50号)の大イチョウが曲がり角の目印になる。
弘道館は、異国の脅威がせまる1841(天保12)年に、9代藩主徳川斉昭が開いた藩校だ。全国に2〜300あったという藩校の中でも、他藩には類を見ない総合大学のような教育内容で、規模としても日本最大級だったという。

日本最大の藩校・弘道館、水戸の心ここにあり

提供元:茨城県水戸土木事務所 偕楽園公園課 弘道館事務所

http://www.koen.pref.ibaraki.jp/park/kodokan01.htm…地図を見る

現在は、幕末期の貴重な資料を展示する資料館になっている。諸役会所に飾られた「尊攘」の掛け軸を目にすると、幕末ファンの心はザワザワと騒ぎだすことだろう。
国指定特別史跡・重要文化財で、2015年4月には、足利学校跡(栃木県)・旧閑谷学校(岡山県)・咸宜園跡(大分県)とともに、日本遺産<近世日本の教育遺産群−学ぶ心・礼節の本源―>に認定されている。

日本最大の藩校・弘道館、水戸の心ここにあり

写真:塚本 隆司

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水戸城の威容を今に伝える空堀

水戸城の威容を今に伝える空堀

提供元:茨城県水戸土木事務所 偕楽園公園課 弘道館事務所

http://www.koen.pref.ibaraki.jp/park/kodokan01.htm…地図を見る

水戸城三の丸跡には、弘道館の他に茨城県三の丸庁舎や茨城県立図書館、茨城警察署、水戸市立三の丸小学校が建っている。この辺りは、梅や桜の名所だ。弘道館の北、文館跡の梅林を通り、西へと歩を進めると城めぐりファンおすすめのスポットがある。

水戸城の威容を今に伝える空堀

写真:塚本 隆司

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茨城県三の丸庁舎や茨城県立図書館への入口に、深くて広い空堀や土塁が残っている。その規模の巨大さは必見。徳川御三家の城にふさわしい威容を誇っていたことがうかがえる。幕府から石垣を築くよう指示があり準備を進めたようだが、築かれることはなかった。春には桜、秋には黄銀杏が彩りを添える。

水戸城の威容を今に伝える空堀

写真:塚本 隆司

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三の丸歴史ロードなどぶらりと周り、弘道館入口から東に目を向けると、二の丸跡とをつなぐ橋・大手橋がある。二の丸が実質上の水戸城中枢で、大手門や御殿、御三階櫓などがあったが、明治初期の取り壊しや戦災で焼失した。今は枡形土塁が残っている。
写真は、現在の大手橋を下から見上げたもの。深い堀切には、道路が通っている。

水戸城跡二の丸に見る学びの精神

水戸城跡二の丸に見る学びの精神

写真:塚本 隆司

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水戸城跡には、幼稚園から小中高等学校あわせて5校1園が集まっている。城跡に学校を創った事例は全国至る所にあるが、ここまで集まっているのは珍しい。そのため、城跡巡りとしては立ち入り制限があるが、二の丸跡を貫くように延びる水戸城跡通りは、学校の塀が白壁になっていたり、門が冠木門になっていたりと歴史ある場所にふさわしく整備がされ、美しくて気持ちが良い。

水戸城跡二の丸に見る学びの精神

写真:塚本 隆司

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二の丸跡には、水戸彰考館跡の碑が建っている。水戸彰考館とは、2代藩主水戸光圀の発案で、大日本史編纂事業が行われていたところ。後世に水戸黄門漫遊記として、知られる物語の原型の地だ。この周辺に学びの舎が立ち並んでいるのも偶然ではないだろう。
碑の隣にある二の丸展示館には、出土品や地元の生徒たちによる観光スポットやゆかりの人物紹介が掲示されている。手書きで書かれた生徒たち目線の観光情報からは、地元愛が感じられるので必見だ。

堀切に電車が!?

堀切に電車が!?

写真:塚本 隆司

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水戸城跡通りを東へと進むと復元された杉山門跡、その先には本城橋があり、本丸跡へと続く。本城橋は、二の丸跡と本丸跡の間の堀切に架かっている。深い堀切を通るのは、JR水郡線だ。

堀切に電車が!?

写真:塚本 隆司

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橋の向こう側、本丸跡は県立水戸第一高等学校なのだが、入ってすぐの所にある薬医門だけは、史跡見学ができる。この薬医門は、唯一現存する水戸城の建築遺構だ。市内の神社に移築されていたものを、1981(昭和58)年に現在地へと移された。

堀切に電車が!?

写真:塚本 隆司

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二の丸跡に沿って、駅のある南へと続く坂を下っていくと復元された柵町坂下門。さらに下がれば、葵の紋がデザインされた街灯や水戸光圀生誕の地を示す像が建つところにでる。
近くには、水戸黄門神社があり、ここに参らずに帰るわけにはいかない気がするのも不思議なものだ。

過去と現在、未来までも見える水戸城跡巡り

天守もなければ石垣もない。だが、水戸徳川家が守ってきた城は、大日本史編纂事業や幕末の志士に影響を与えた藩校・弘道館など、歴史を見守り育んだ場所。今もこれからも、城跡で学ぶ子どもたちに受け継がれていくのだろう。
駅前の水戸黄門像から始まり、生誕の地で終わる水戸城跡のぶらり散策。ちょっと他とは違う魅力が、水戸城跡にはあるようだ。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/12/09 訪問

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