奈良県の中部、北葛城郡河合町の「廣瀬大社(ひろせたいしゃ)」(またせ広瀬神社)は、崇神天皇9年(紀元前89年)の創建と伝わる古社です。大和盆地を流れる河川が合流する重要な地で水の神を祀り、五穀豊穣の神として篤く信仰されてきました。
毎年2月11日(祝日)に催される「砂かけ祭り」は、五穀豊穣を祈願する「御田植祭(おたうえさい)」の一種ですが、境内に敷き詰められた砂を雨に見立ててかけ合う奇祭です。
水の神を祀る神社ですが、水を掛け合うのではなく、あえて砂を使うのがユニークです。
砂かけ祭りは、拝殿で行なわれる「殿上の儀」が11時から。拝殿前の広場で砂をかけ合う「庭上の儀」は14時から行われます。拝殿前の広場には4本の青竹と注連縄で、田んぼに見立ててあり、ここを中心としてお祭りが繰り広げられます。
主役となるのは、さまざまな農具を手にした「田人」と「牛」。稲作の所作を行っていきます。そして、太鼓の合図とともに、参拝者と砂をかけ合っていきます。次の太鼓で一旦終了。1回が5分ほどで、田人たちは退場します。これを「計10回」繰り返します。
田人や牛たちは、境内をフルに使って大暴れ。盛大に砂が撒かれます!
「砂を撒く」という行為には、「田植えに必要な雨が充分に降るように」という願いが込められています。近づいていくと砂まみれになるのはもちろんですが、境内の端から眺めている人たちに対しても容赦はありません。わざわざ近くまで行って砂をかけていきます。
牛たちは、この日のために足元に敷き詰められた砂を、鋤で高々と撒き散らしていきます。砂まみれになるのは必至。地元のお子さんたちは、雨がっぱ+水泳用ゴーグルなどを装着し、万全の体制で挑んでいたりします。砂が飛び散る軌跡も美しいですね!
砂かけ祭りは、田人や牛から逃げ回り、砂を掛けられるだけではありません。参拝客は彼らに対して砂を投げつけます。地元のお子さんが牛の背後から近寄って見事に背中にヒット!周りにいる人間がみな砂を投げるので、どこから飛んでくるか予想できず、砂まみれになることはほぼ避けられません。
うかつに近づいて、写真を撮っていたりすると……。
直撃!もちろん全身が砂まみれ!
砂の掛け合いが終わると、早乙女が登場して田植えの所作を行います。稲の苗に見立てた松葉「松苗」が置かれ、これを持ち帰ると福が訪れるとされています。
最後には中央に高い台を登場して「松苗」と「田餅(たもち)」が撒かれます。縁起物ですのでぜひ手に入れたいですね!
●100円ショップの雨がっぱを着る、水泳用ゴーグルを付けるなど、砂対策をしておくといいでしょう。とはいえ、いずれにしても砂まみれになりますので、開き直って普段着で挑むのもいいでしょう。
●カメラなどの砂対策は必須です。雨の日の撮影のように、ボディにシャワーキャップを被せるなどする必要があります。たくさんの人で押し合いになりますし、田人が振り上げた鋤が当たったりする可能性もありますので、壊れても諦めのつくカメラを持っていくのがいいでしょう。
●スマートフォンで撮影するのであれば、イヤホンジャックとケーブルの差込口を塞いでおきましょう。生活防水機能がある機種であれば、砂が内部に入ることを(ある程度までは)防げます。とはいえ、やはり破損の危険性はありますので、くれぐれも気をつけましょう。
●砂かけ祭り当日は、巡回バスも運行されます。また、廣瀬大社に隣接する「株式会社ヒラノテクシード」さんが駐車場を無料開放してくれますので、車でも行くことはできます。駐車場はかなり広々としていますが、余裕を持って早目に行くようにしましょう。
●この日、参道には地元のお店の出張販売などもあります。地元の食材を使った軽食や温かいコーヒーなどをいただくこともできます。
砂をかけたり、かけられたり。全身砂まみれになりますが、これがとても楽しいんです。参加している人たちみな笑顔になる、晴れやかなお祭りですね。
古くから水不足に苦しんできた大和盆地の人々にとって、雨に恵まれることは切実な願いでした。そんなことを想いながら、ぜひ盛大に砂を撒き散らしてください!
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