「日本へ舵をとれ!」神戸スイーツの原点を神戸レ雌ーミュージアムで

「日本へ舵をとれ!」神戸スイーツの原点を神戸レ雌ーミュージアムで

更新日:2017/02/09 17:24

万葉 りえのプロフィール写真 万葉 りえ レトロ建築探訪家、地域の魅力伝え人
人口の割合でいくと、国内で一番洋菓子店が多い都市はどこかご存知ですか?それは神戸!「神戸スイーツ」という言葉がすっかり定着した街ではケーキ店を周るスイーツタクシーもあり、どの店にしようかと迷うほど。東京の人形焼きのルーツさえ神戸が関係しているのです。
でも、神戸がそんなスイーツの街になったのはなぜ?・・・それは、無料で見学できる神戸レ雌ーミュージアムをご案内しながらお答えしていきましょう。

老舗がいっぱいの元町。人形焼きのルーツも、なんと神戸!

老舗がいっぱいの元町。人形焼きのルーツも、なんと神戸!

写真:万葉 りえ

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開港からすでに150年を超える歳月を重ねた神戸港。
外国人居留地ができ、明治初めから様々な商品を取り扱う店舗が集まって元町商店街が作られていきます。その店の一つである亀井堂總本店では卵や砂糖など洋菓子の材料で作ったせんべいが爆発的な人気となり、東京へも出店したほどでした。

じつは神戸銘菓としてロングセラーの人気がある亀井堂總本店の「瓦せんべい」は"日本の洋菓子のルーツ"と言われているのです。似たような菓子がほかの地域で出されていても、元祖はここなんです。それだけでなく、同じ生地をカステラのように焼いたタイプも出したら、それは、なんと「人形焼き」のルーツに!
そんなハイカラな店が集まる元町の商店街に、1897年に開店した神戸レ雌ー。現在は本店のすぐそばに、店の歴史をたどれるミュージアムができています。

老舗がいっぱいの元町。人形焼きのルーツも、なんと神戸!

写真:万葉 りえ

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西欧から入ってきた文化は洋装だけにとどまりませんでした。居留地にあるホテルでは洋食とともにケーキ類も作られだしたのです。しかしそれはあくまでも外国人向けの物。日本人には手が出ない高級品だったのです。

そんな洋菓子を庶民に広めてくれたのが、神戸レ雌ー!ようやく日本人に向けた、ワッフルやシュークリームなど本格的なケーキ類が販売されたのです。館内には現在の中学校の歴史教科書が置かれていますが、明治の開港についてのページには神戸レ雌ーが写真付きで掲載されているのです。

やがて、洋菓子の技術の高まりがゴーフルの誕生につながっていきます。ゴーフルとは、優しい甘さがあり、パッケージの缶のデザインもお土産として人気がある神戸レ雌ーの菓子。ご覧いただいているのは手作りだった頃使われていたゴーフルの型やクリーム塗台です。職人さんの魂が入っているからでしょうか、今もピカピカ。

育てて、伝えていく港町の技術

育てて、伝えていく港町の技術

写真:万葉 りえ

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ミュージアムに入って、多くの人が初めに目をとめるのが昭和の町のジオラマです。路面電車が走る表通りの角にあるのはあの百貨店でしょうか。にぎわう表通りだけでなく、裏に回れば空き地で遊ぶ子供たちの姿があり郷愁誘う世界が広がっています。

これはすべてお菓子。細部まで技が光る工芸菓子です。神戸レ雌ーのような大店のお菓子は工場で作られているものばかりだとお思いかもしれませんが、このようにしっかりと技術の継承がされているのです。

洋菓子だけでなく、和菓子の技術の伝承も

洋菓子だけでなく、和菓子の技術の伝承も

写真:万葉 りえ

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技術の継承は洋菓子だけではありません。神戸レ雌ーは洋菓子のイメージが強いかもしれませんが、じつは和菓子もずっと作られ続けているのです。ですからこのミュージアムでは、和菓子の製造過程もガラス越しに見学可能なんです。

洋菓子だけでなく、和菓子の技術の伝承も

写真:万葉 りえ

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作られているのは庶民的なものだけではありません。茶席などで用いられる、うっとりするような創作生菓子も。日本人向けに他に先がけて洋菓子を売り出した神戸レ雌ーですが、和菓子に使われた木型などもミュージアム内でご覧くださいね。

世界中へ美味しさを届け、そして世界から美味しさを吸収してきた神戸スイーツ

世界中へ美味しさを届け、そして世界から美味しさを吸収してきた神戸スイーツ

写真:万葉 りえ

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さて、全国の百貨店のデパ地下にはいろいろな洋菓子店が出店していますよね。その先駆けとなったのも神戸レ雌ーをはじめとする神戸の洋菓子店でした。モロゾフ、ゴンチャロフ、ユーハイムなど今では全国区の洋菓子店も、本店は神戸。
では、なぜ神戸で横文字の社名の洋菓子店が増えたのでしょう。

「ゴンチャロフ」は、ロシア革命から逃れて日本に亡命してきたロシア人のゴンチャロフ氏が1923年に神戸に菓子店を構えたのが始まり。日本で初めてバレンタインチョコレートを販売した「モロゾフ」も、始まりはロシア人のモロゾフ氏が神戸に出した店からです。そして、切り立てのバームクーヘンをぜひ味わってほしい「ユーハイム」は、関東大震災から逃れてきたドイツ人夫婦が神戸で開いたドイツ菓子の店が始まりでした。

港町という土壌に、菓子技術の伝承と、150年を超える間に積み重ねられた歴史。さらに、洋菓子に対して舌の肥えた市民と、切磋琢磨して腕を磨く菓子職人によって神戸のスイーツが育ってきたといえるでしょう。

ご覧いただいているのもミュージアム内にある工芸菓子ですが、新しい世界へと進んでいく様は、神戸スイーツを表しているようにも…。

世界中へ美味しさを届け、そして世界から美味しさを吸収してきた神戸スイーツ

写真:万葉 りえ

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こちらの写真でご覧いただいている人物は、神学者であり医師であったシュバイツァー博士です。1954年にノーベル賞を受賞した博士。贈り物でもらったゴーフルが大変美味しかったという手紙が残されています。
日本人に向けて出された洋菓子が、今度は海外へと旅立っていくようになったのです。

ミュージアムのあとは・・・

ミュージアムのあとは・・・

写真:万葉 りえ

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ミュージアムを見学した後は、神戸風月堂・元町本店へ寄りませんか。店内にある「サロン・ド・テ」はスイーツをワインとともに楽しめるという他にはない大人の空間。また、パティシエが目の前で仕上げてくれるという極上の一皿は、食べるのが惜しいスイーツの芸術品です。

そして、併設されているホールで開かれる様々な催しも要チェック!定期的に開かれている「もとまち寄席」も人気なので、旅の日程が決まったらホームページなどで確認くださいね。

中華街と併せて周りたい、神戸元町商店街

ユーハイムの本店があるのも、神戸元町商店街の中です。近くにはNHKの朝ドラ「べっぴんさん」のモデルとなったファミリアの元町本店もあり、角から北へ入っていく南京北路は神戸の中華街の中心である南京町広場へつながります。

開港当時からの老舗が今も伝統を伝える商店街と、神戸の中華街である南京町。隣り合う、趣が違う二つの神戸。ぜひ併せて楽しんでくださいね。

掲載内容は執筆時点のものです。

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