写真:鷹野 圭
地図を見る一級河川ながらもそれほど長いわけではなく、利根川や荒川などと比べると知名度が高いとはいえない酒匂川ですが、ご覧の通り河川敷は大変広く、背の高い草原に覆われています。さらに川岸へ近づくと、小石の堆積した昔ながらの河原が。泳ぎ疲れた水鳥はこうした陸地で休憩していることが多く、観察・撮影のチャンスです。また魚もよく現れるようで、釣り客の姿もよく見かけます。
写真:鷹野 圭
地図を見る上で「決して大きくない」といいました酒匂川ですが、河口近くはごらんの通り結構川幅が広くなっています。一方で水深はあまり深くなく、十分に足がつくため、川の中に佇んで魚を狙うアオサギやコサギの姿もよく見かけます。
特筆すべきは、写真の中央付近にも見られる川の中州。水鳥たちはずっと水に浮いていると身体が冷えてきてしまうため、手近で、かつ野良猫などが入ってこられない中州をよく利用します。脅かさないように気をつけつつ、川岸から観察・撮影しましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る酒匂川河口には東海道線と新幹線の鉄橋が架かっており、川のすぐ真上を列車が通過します。さすがに通過するときは騒音と震動が響きますが、それでも川の鳥たちが逃げていくことはほとんどありません。鉄道ファンの方にとっては、広い河原景観と列車のコンビネーションが魅力的かも?
写真:鷹野 圭
地図を見る海が間近で魚も多い酒匂川河口域には、カモメが多く飛来します。
ウミネコやユリカモメ、オオセグロカモメなど、白を貴重とした彼らの配色は河原でも一際よく目立つことでしょう。肉食性の傾向が強いカモメ達は、時に集団でカモ達を追い出して限られた足場を占拠してしまうことも!
また、夏場に集団でやってくるコアジサシ(後述)もカモメの仲間です。
写真:鷹野 圭
地図を見るカモといえば湖や池などでプカプカと浮かんでいる印象が強いですが、ここは緩やかとはいえ流れのある川。のんきに浮いていると押し流されてしまうので、写真のように岸辺で休んでいることが多いです。種類は多岐にわたり、この写真にもハシビロガモ、コガモ、ヒドリガモという3種類のカモが写っています。天敵から身を守るためか、はたまた冬の寒さを和らげるためか、それとも単に寂しいのか(汗)違う種ながらも同じカモ同士で仲良く(?)同じ足場を共有することが多いです。
また、カモたちはオス・メスでも色が全然違います(カルガモだけはあまり変わりませんが)。観察中に「あれは何?」となった時にすぐ調べられるよう、ハンディタイプの鳥図鑑などを持っていくといいでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真中央に移っている灰色の鳥はマガン。ガン(雁)というのは、学校の教科書にもよく登場し、童話として有名な「大造じいさんとガン」に登場する渡り鳥です。本来であれば東北や北陸などの寒冷な地域にのみ、冬になると群れで渡ってくるのですが(それでも最近は数が減りつつあるそうです)、時折こうして群れからはぐれた個体がやってくることもあるようです。
ガンもカモの仲間なので、形はとてもよく似ています。それゆえに、どこにでもいる鳥だろうとうっかりスルーしてしまうことも……? カモに限らず見たことのない柄の鳥を見かけたら、その都度図鑑でチェックしたり、記録用に写真を撮っておくといいでしょう。後で調べたら、思わぬレア種だったということもあるかもしれませんよ。
写真:鷹野 圭
地図を見る非常に距離があったために写りはイマイチですが、これはカワセミ。宝石にもたとえられるほどの、あまりにも有名な美しい小鳥です。かつては清流の中〜上流域でしか見られない時代もあったそうですが、最近では首都圏でも川の水がきれいになり、いたるところに出没するようになりました。ここ酒匂川河口も例外ではなく、魚を狙ってダイブする姿などをよく見かけます。「チー」という澄んだ鳴き声が特徴。声を聞いたら周りをよ〜くチェックしましょう。
ちなみにこの写真は、上にも登場している電車の高架橋の下。騒音・震動がさぞかし激しいだろうこんな場所すらも(汗)彼らは足場として利用してしまうのです。案外カラスと同じように、人の暮らす環境に慣れてきているのかもしれませんね。
写真:鷹野 圭
地図を見る河川敷に下りてそのまま下流へと道成りに進めば、やがて河口が見えてきます。写真で見える高速道路の高架橋の向こう側が河口。その先には広大な相模湾が広がっているのです。実際に河口へ行くには、途中、舗装されていない場所や草むらを歩く必要があるため、丈夫な運動靴などを履くようにしましょう。
川の水はここでもかなり澄んでおり、相変わらずカワセミが時折姿を現します。そのほか、サギやカモメ、カモの仲間達も頻繁に現れるので、見かけたら驚かさないよう、気をつけてそっと観察しましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るさあ、河口に到着です。目の前に広がるのは紛れもなく相模湾。周囲には建物や人工物、樹木など、視界を遮るものが何もないため、とても開放的です。このシーンだけを切り取ってみるとアフリカ辺りの海岸線に見えるかも?(写真右下の流れ着いた古木が、動物の骨のように見えるのがミソ)
写真:鷹野 圭
地図を見る夏、河口に水を飲みにやってきたアゲハチョウ。花の蜜だけではなく、私たち人間と同じで水も必要なのです。河口は砂と水以外にほとんど何もない空間ですが、こうした思わぬ生きものがやってくることもあります。
写真:鷹野 圭
地図を見る冬の酒匂川で多くのバードウォッチャーを惹き付けるのが、この鳥。カモの仲間なのですが、少しスリムに見えるかもしれません。これはカワアイサといい、冬場に北国からやってくるのは他のカモたちと同じですが、首都圏ではかなり珍しい鳥です。神奈川県内でもコンスタントに観察できるのはこの河口域だけといわれています。ちなみに手前で水に浮かんでいる頭の黒い方がオスで、奥にいる赤茶色の頭の個体がメスです。魚を好み、水に潜って捕まえるシーンが観察できます。
よく見かけるカモやカモメ達と違い、オス・メス共にとても警戒心が強い鳥。写真のように中州で休憩していても、迂闊に近づいて音を立てたりすれば即座に飛んで逃げてしまいます。鮮明に撮りたいのであれば望遠レンズが必要かもしれませんが、無い場合には極力姿を見せないように気をつけつつ、ある程度節度を保って遠方から撮影しましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る冬の主役がカワアイサなら、夏の主役はこのコアジサシ。カモメの仲間ですが、ウミネコなどに比べると身体は二周りほど小さく、スマートで、帽子を被ったかように頭頂部が黒いのが特徴です。夏になると南国からやってきて河川敷に住み着き、「小田原市の鳥」に指定されて人々から愛されていますが、日本のレッドデータブックでは絶滅危惧U類にカテゴリされるなど近年減少が心配されている鳥でもあります。彼らは夏になると河川敷などに巣を作って繁殖するのですが、そうした環境が開発などによって減ってしまったため、数が減っているといわれています。
ここ酒匂川河口域は繁殖に適した広い河原や中洲が残されており、加えて食べものとなる魚も豊富という貴重なスポット。小田原市でも、こうした環境を保全する活動を行っているそうです。
写真:鷹野 圭
地図を見る上空に舞い上がったコアジサシ。この状態から一気に川面にダイブし、水中の魚を捕まえます。名前のアジサシ(鯵刺)というのはこれに由来するもの。その狩りの様子はダイナミックで、小柄ながらもなかなか見ごたえがあります。
希少種とはいえ、ここでは夏になれば相当数飛び回っているのを見かけます。嫌でも視界に入ってくるほどです。とはいえ、やはり大事な子育てを妨害してしまうのは考えもの。観察や撮影の際には、無理に中洲に踏み込んだりせず、多少距離があるのは目を瞑って河岸から狙うといいでしょう。
名前のある公園ではなく、一般的な認知度が高いとはいえない酒匂川の河口域。小田原市のWebサイトなどでは僅かに触れられていますが、ガイドブックなどで紹介されることは滅多にないでしょう。逆にそうしたスポットだからこそ、コアジサシなどが毎年飛来するような良い環境が長らく維持されてきたともいえます。
鳥を観察するにあたっては、あくまで彼らの住処を「覗かせてもらう」という気持ちを持って、暮らしを邪魔しないように気をつけましょう。変に追い掛け回したりせず、時に鳥が来るのをジッと待つのも大事。動かないでいると、次第に鳥達も慣れてきて自然と近づいてきてくれるものです。
【アクセス】
JR東海道線「鴨宮駅」より徒歩約15分
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(2024/4/26更新)
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