カサブランカから1dayトリップ!世界遺産「アル・ジャジーダ」〜大西洋を望む要塞都市

カサブランカから1dayトリップ!世界遺産「アル・ジャジーダ」〜大西洋を望む要塞都市

更新日:2016/12/27 10:16

モロッコはエキゾチックという言葉がぴったりの国ですが、異国情緒だけでなく、街や地域が変わると、景観や建物や、人々の(民族)衣装までががらりと変わる多様性も魅力です。そんな個性的な街の一つアル・ジャジーダは、かつてのポルトガルの植民都市。小粒ながら西欧にイスラム文化が重なり合った、独特の雰囲気を持っています。城壁から望む大西洋も、東の果ての国から来た私たちには、感慨深いものがあります。

アクセスは列車+タクシーで

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モロッコ北部の移動には列車が便利です。アル・ジャジーダはカサブランカのカサ・ヴォヤージュ駅から約1時間半。チケットは窓口か自動券売機で購入します。出発ホームは電光掲示板で確認しておきましょう。本数は1日に9本ほど、国鉄(ONCF)のホームページで時刻を調べておけば安心です。

日本と異なり、モロッコの駅には改札口がありません。ホーム出入り口で係員がチェックしている場合もありますが(旅行者にはとても親切で、出発ホームを教えてくれたりします)、列車内でも検札に回ってきますので、チケットは無くさないようにしましょう。

アル・ジャジーダ駅はお目当てのメディナ(旧市街)から離れているため、タクシーを利用します。アル・ジャジーダのタクシー乗り場は駅の出口付近ではなく、正面の道を少し歩いた先にあります。もうひとつ覚えておくといいのは、モロッコのタクシーは原則的に相乗りだということ。乗り込む前に「メディナまで」と伝えましょう。

ポルトガルの貯水槽をめざす

ポルトガルの貯水槽をめざす
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メディナの門を入ると、海に向かう道がまっすぐ伸びています。まずは開館時間が決まっている「ポルトガルの貯水槽」を目指しましょう。入り口は目立たないので通り過ぎてしまわないように。

この建物は、有事の際の水の確保のため、1542年に地下倉庫から貯水槽に改造されたもの。暗い内部は水をたたえ、リズミカルに続く柱と、天井を支えて弧を描くアーチを映し出しています。この幻想的な風景が「売り」なのですが、水がないときもあります。そんな時は、「ラッキー!」と思いましょう。結構な広がりの貯水槽の「底」を、思う存分歩き回ることが出来るのですから。

注目すべきはぽっかりと天井に開いた、空が見え、風が吹き込み、雨が降り注ぐ、丸い穴。全てが閉ざされ、あるのは、頭上から降り注ぐ円筒の光だけ。一瞬自分がどこにいるのか、いつの時代にいるのかわからなくなります。やはり切り取られた円空を戴く、二千年前にローマに建てられた巨大な聖堂、パンテオンを思い出す人もいるかもしれません。時と空間を超えためまいのようなものに襲われたとしたら、ここまでやってきた甲斐があるというものです。

西欧とイスラムの混交に触れる

西欧とイスラムの混交に触れる
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明るい通りに戻れば、そこは現代のモロッコ。このあたりの民族衣装なのか、オレンジ色のストライプの長衣姿の女性が、まっすぐ前を向いて通り過ぎて行きます。かと思えば、傍らでは、ジーンズ姿の若者が立ち話に興じています。

西欧的なものとイスラム的なものの混淆は、人々のファッションだけではありません。メディナに入ってメインストリートを歩き始めるとすぐ、円塔形の建物が目につきます。ヨーロッパの要塞に設けられた塔と同じような形を保ちながら、土で固められた壁はとてもモロッコ的です。

この塔がいっそうモロッコ的に感じられるのは、上部に、一面の赤の真ん中に緑の星のモロッコ国旗が掲げられていることと、壁に同じ色の組み合わせでアラビア語が書かれているからでもあります。けれどもその下にはPOSTE DE POLICE(警察署)と、フランス語も併記されていて、コテコテのイスラムに行こうとするのを、アルファベットがやんわりと、さりげなく拒否しているようでもあります。

西欧とイスラムの混交に触れる
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また、しっとりとしたヨーロッパ的な街並みの先には、カラフルな色合いやアラベスク模様で飾られた扉が並んでいたり。なかに濃い小豆色の上に真っ白なペンキで十字と新月が描かれた大きな扉があります。ここにもアラビア文字とフランス語の看板が並んでいて、薬局だと分かります。

西欧とイスラムの混交に触れる
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新月マークがイスラム社会で赤十字の意味だということを知っている人は、看板を見上げるまでもなく、ここが薬局だと気づくでしょう。興味深いのは、新月だけでなく十字も描かれていること。アラビア語とフランス語を併記するよりもいっそう強い主張、つまり、イスラムと西欧の共存の象徴のようにも見えてきます。

海につきでた稜堡(見張り台)へ

海につきでた稜堡(見張り台)へ
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アル・ジャジーダのメディナは、ポルトガル時代(1514年-1769年)の要塞としてはモロッコで最後に残ったもの。一辺300〜400メートルほどの城壁と四隅の稜堡(見張り台)で、今も完璧な矩形を保っています。貯水槽から北に向かってすぐ、突当りの登り口から城壁の上に出れば、メディナのなかではその気配すらなかった海が、いきなり眼前に現れます。据え付けられた大砲はすっかり錆びついていて、武器というよりも一風変わったオブジェのようです。

海につきでた稜堡(見張り台)へ
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現代の要塞の主役は、カモメと、カモメに餌を投げる少年と、おこぼれにあずかろうと寄ってくる猫たち。要塞がその役目を忘れ、時代から取り残されたような風景の一部になっていて、そこから西の果ての海をぼーっと眺めるのが、すこし肩すかしをくらったような旅情もあって、お勧めです。

世界遺産なのにこの地味さ!

アル・ジャジーダのメディナは本当に小さくて地味です。フェズやマラケシュの、地元っ子も観光客も一緒くたにかきまぜて飲み込んでしまうような猥雑なメディナに比べると、ここも同じモロッコなの!?と思うほどです。

でも、歴史を経た街並みが静かで、かつ観光地っぽさが薄いというのは、旅人には大変貴重なこと。流れた時間とそこに暮らす人々の営みに、素で触れることが出来るからです。

田舎の小さな街は治安が安定していますし、観光客が大挙しなければスリやひったくりも集まってきません。もちろん常にそれなりの注意は必要ですが、マラケシュやフェズを歩くような緊張感は持たずに済みます。この事からも、モロッコでのゲート都市カサブランカから日帰りで、あるいは半日だけ余分に時間を取って出かけるのに、おすすめの街なのです。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/10/25−2016/12/26 訪問

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