南禅寺塔頭「金地院」で大人の京都を楽しむ

南禅寺塔頭「金地院」で大人の京都を楽しむ

更新日:2017/01/12 14:23

しっとりと大人の京都を楽しみませんか?今回は南禅寺の塔頭「金地院」で禅の世界に触れてみましょう。簡素だけれど奥深い禅文化は、大人だからこそ心ときめきます。小堀遠州作の枯山水庭園「亀鶴の庭」や重要文化財の「東照宮」、狩野探幽・尚信や長谷川等伯の襖絵など「金地院」には見どころがギュッと詰まっています。忙しすぎる毎日にちょっとブレイク。ハイセンスな古都の風情を感じる旅に出掛けてみてはいかがでしょうか。

石川五右衛門「絶景かな」で有名な「南禅寺山門」のすぐ近く「金地院」へ

石川五右衛門「絶景かな」で有名な「南禅寺山門」のすぐ近く「金地院」へ
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京都五山「五山之上」とされる臨済宗南禅寺派の大本山「南禅寺」。その塔頭(たっちゅう)の一つである「金地院(こんちいん)」へは、南禅寺中門を入ってすぐ「南禅寺山門」の前を右に進むと分かりやすく、徒歩3分で到着します。「南禅寺山門」は京都三大門の一つ。歌舞伎で石川五右衛門が「絶景かな」と見えを切る場面の舞台として有名です。

金地院の「大門」を入ると、すぐに拝観受付があります。重要文化財である茶室「八窓席」や長谷川等伯の襖絵「猿猴捉月図」などを見るには、特別拝観を申し込む必要があります。ガイドブック等には事前申し込みが必要となっていますが、当日申し込みでも拝観可能です。しかし、混雑時には希望の時間に参加できないことがありますので、電話で申し込んでおくと安心ですよ。(tel:075-771-3511)

石川五右衛門「絶景かな」で有名な「南禅寺山門」のすぐ近く「金地院」へ

「金地院」には6つの門がありますが、拝観窓口のすぐ左にある小さめの唐門が「明智門」です。その名の通り明智光秀ゆかりの門で、光秀が母の菩提を弔うために同じ京都にある名刹、「大徳寺」に建立したものですが、明治になってここ「金地院」に移築されました。

それ以前はもっと豪華な門があったのですが、これが功を奏してか、金地院全体の簡素で奥深い禅文化と「明智門」が見事にマッチして、美しい風景になっています。

ゆっくりと時が流れる‥‥

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観光シーズンにはどこへ行っても観光客でいっぱいの京都ですが、ここ「金地院」はそれほど人も多くなく、穴場中の穴場!ゆっくりと過ごすことができます。その中でも特に見て欲しいのが、写真にあるような庭園。「庭を見るなら京都」と言われるように、市内には手入れの行届いた美しい名園が数多くありますが、その中でもここ「金地院」の「亀鶴の庭」は国の特別名勝に指定されていて、いつまでも眺めていたい美しさです。

「鶴亀の庭」は、崇伝和尚が徳川家光のために、小堀遠州に命じ5年をかけて作らせた蓬莱式枯山水庭園です。普通庭には四季を感じられる木々を植えるものですが、「鶴亀の庭」はすべて常緑樹。いつ見ても変わらず緑の美しい庭園は、徳川の不変の繁栄を表わしているとか。

ゆっくりと時が流れる‥‥

「鶴亀の庭」名前の由来は、方丈(本堂)側から見て、右手に鶴左手に亀が配されているから。先ほどこの庭には常緑樹しかないと説明しましたが、実は唯一、亀の背には落葉樹である古い柏槙の木が植えられています。鶴の背の青々と若々しい常緑樹との対比が面白いです。

「金地院」は、3代将軍徳川家光が訪れることを意識して造られたとのこと。実際に家光がここに来ることは無かったそうですが、将軍になったつもりで、しばし庭を眺めてみてはいかがでしょうか。

お寺の中に東照宮が‥‥

お寺の中に東照宮が‥‥
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東照宮と言えば日光東照宮を思い浮かべますが、実は家康の遺言により「東照宮」は3つあり、ここ金地院にも1つあるのです。これも「鶴亀の庭」と同じく小堀遠州の設計によるもので、重要文化財に指定されています。

東照宮とは、東照大権現である徳川家康を祀る神社。金地院東照宮の本殿には家康の遺髪と念持仏が納められているということです。今はだいぶ色あせてはいますが、建物正面には極彩色で彩られた透かし彫りが施され、創建当時は日光東照宮に比する壮麗さだと賞されたそうです。

今は木が茂ってよく見えないのですが、創建当時この「東照宮」は、「鶴亀の庭」中央に置かれた「遥拝石(ようはいせき)」から拝むことができるように造られました。遠州は、徳川家光がここ「東照宮」のある高台までわざわざ上がって来なくても、美しい庭越しに拝むことができるように、「鶴亀の庭」や「東照宮」を設計しました。しかし、家光が「金地院」を訪れることは一度もなかったといいますから、ちょっと遠州が気の毒な気がしますね。

お寺の中に東照宮が‥‥
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「東照宮」は、京都の神社では珍しい本殿と拝殿の間に石の間を置く「権現造」。拝殿の天井には、狩野探幽の筆による「鳴龍」が描かれています。

特別拝観の目玉、長谷川等伯の可愛いお猿さん

特別拝観の目玉、長谷川等伯の可愛いお猿さん

特別拝観の申し込みをすると、指定された時間までに方丈へ。荷物をロッカーに預けて、説明を受けながら進んでいきます。

正面に掲げられている「布金道場」の書は山岡鉄斎の筆。明治初期に起こった廃仏毀釈から守るため、仏教寺院ではなく道場であると書いたものです。

方丈の各部屋の襖や障子腰板には、狩野派による金地の障壁画があります。しかし、何と言っても一番の見どころは小堀遠州の設計で建てられた三畳台目の茶室「八窓席」と長谷川等伯の襖絵「猿猴捉月図」。

「八窓席」は三名席の1つに数えられ、茶室の中では皆平等であるとしたこれまでのものとは違い、茶室の中でさえ上下関係をはっきりさせた造りになっています。躙口(にじりぐち)前に縁を設け、正面に床と点前座を左右に並べた「遠州好み」の茶室の典型です。「八窓席」といいますが、実際の窓の数は6つです。

書院には「カチカチ」と鳴き縁起物とされる「濡烏屏風」。烏の表情が魅力的です。そして、長谷川等伯の襖絵「猿猴捉月図」。猿は日本猿ではなくテナガザル。竹を割いて作った筆で描いたとされるフサフサっとした毛と、顔の中央にギュッと集まった目鼻口がとっても可愛らしく、ほっと心が和みます。しかし、水面に映る月に手を伸ばして取ろうとする猿の姿は、形の無いものを追い求める愚かさへの戒めです。こんなに可愛い絵なら、教えを素直に受け入れられそうですね。

京都の武家文化を味わう

京都と言えば雅な公家文化、というイメージがあるかと思われますが、室町時代に入り臨済宗の寺院が建てられるようになると、簡素な中に知恵とセンスが感じられる武家文化が登場します。時にはひとりで、味わい深い禅宗寺院の枯山水庭園や襖絵を眺めて、ゆったりとした大人の贅沢な時間を過ごしてみるのもおススメです。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/11/13 訪問

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