鹿沼市から古峯神社へ続く古峰ヶ原街道の6キロメートル手前に、高さ約25メートルの一の鳥居があります。参道には、ゆず饅頭とたまり漬けの「栄屋」、こしあんと栗あんの古峯まんじゅうが特色の「天狗屋」、神域が高まる二の鳥居の内側に自家製天狗まんじゅうの「巴屋」が並んでいます。
大芦川の清流に掛けられた神前橋を渡り、手水舎で清めて本殿に向かいます。鳥居は聖域が高まるごとに設けられ、古峯神社の本殿までは、6つの鳥居をくぐるので神域の高さがうかがえます。御祭神は日本武尊。かつては、修験者の修行の地であった神社内には、天狗の木像や面が数多く掲げられています。
古峯神社は、20種類以上のアートな御朱印がいただけると有名な神社。個性ある朱印はそれぞれ書き手が異なるため、社務所の前にはその日もらえる御朱印が張り出されます。人気の御朱印を戴くにはかなりの時間がかかりますが、参籠であれば時間を気にせずいただくことが出来ます。参籠の記憶を人気の御朱印で残せるのも楽しみの一つです。
宿泊所は本殿と廊下続きの建物内にあります。グループ向けの部屋には、高さ2メートル幅1メートルの大天狗と烏天狗の面が掲げられた“天狗の間”があります。2つの天狗に見守られながら過ごす一夜はどのような感じなのでしょうか、こちらの部屋も気になります。
廊下の角に「古峯神社不滅の御神火」があります。創祀以来絶やしたことがない御神火の爐には、直径70センチの大湯釜が掛けられ「爐より立つ霊気(湯気)に当たれば無病息災で過ごすことができる」と書かれています。ここではその霊気(湯気)を全身で浴びてください。
家族向けの個室は、大広間や一般の間とは別棟にあります。1〜9名が利用できる室は、洗面所とトイレがあり、暖房設備とテレビがあります。お風呂は大浴場があり、宿泊者が少数の場合、小浴場を使えます。お風呂には、シャンプーとボディーソープが備えてあります。
入浴で、身を清めた後、午後5時頃に神楽舞が行われます。神楽鈴と扇の舞は優雅で心が癒されます。通常の神社では、拝殿と神楽殿は別棟ですが、古峯神社は同じ建物内にあります。この神楽舞は参籠者だけでなく一般の参拝の人でも後方から見ることが出来ます。
拝殿の両脇には、一刀彫の大天狗と烏天狗が納られています。高さ2.5メートルの大天狗の作者は台湾の彫刻家“陳義雄”、烏天狗は「宮内庁の御料林より下附された桂の木で作られた」と書かれています。天狗は祭神の使いで崇拝者の災厄を除き開運を招きます。それぞれ500キロ弱の彫刻の奉納時は人手によって運び込んだそうです。
身を清められた後の、夕食は神饌(しんせん)料理。湯葉と刺身蒟蒻のお造りに、がんもどきと凍り豆腐、生麩の煮付、椎茸やカボチャ、ピーマンの天ぷらに、けんちん汁と白米に「古峯神酒」のラベルの日本酒が添えられています。いただく素焼きの杯は持ち帰ることが出来ます。御神水でふっくらと炊かれたご飯と、熱々のけんちん汁はお代わり自由です。
古峯神社参籠の夜は、午後9時が基本の就寝時間。室内の電気が消えることはありませんが、建物の入り口にカギが掛けられ、廊下の照明は消されます。個室も窓を閉ざすと、大芦川の流れも聞こえてきません。御祭神の日本武尊とその使者の天狗の懐に身を任せると、心穏やかな一夜が過ごせます。
そして翌日、眠りから覚め窓を開けると大芦川の流れる音が聞こえ、朝の陽ざしを浴びた境内はとても新鮮です。朝の一番祈祷の基本は午前8時ですが、日によって違います、1月1日は、午前6時、1月2〜3日は午前7時、2月〜12月の1日は午前7時です。一番祈祷の時間によってチェックアウトの時間が変わるので、社務所で確認をお願いします。
朝一番の祈祷の拝殿は、明かりが無く本殿も閉ざされています。時間になると、大太鼓が鳴らされ正面に「神垂」が掲げられた本殿が現れます。宮司の奏上から始まり、巫女の神楽鈴の舞、大麻(おおぬさ)のお祓いと続き、最後は、玉串拝礼で終わります。凛とした空気の中、御祭神と共に迎える朝は特別です。
お籠り明けは古峰園(こほうえん)散策です。約8万3千平米(東京ドーム1.8個分)の庭園は、大芦川の清流を引き込んだ“峯の滝”と“峯の池”を中心とした回遊式日本庭園。春の梅に始まり、桜、ヤマブキ、しゃくやくと続き、秋の紅葉と1年を通して様々な植物を楽しめます。
庭園全体を見渡せる“峯の茶屋”では、湯葉のお造りに、根野菜に田楽の煮物、野菜の天ぷらなどの揚物の懐石料理(予約が必要)や、けんちん汁の古峯定食やけんちんうどん、里芋にお味噌を塗ったいも串やみそ田楽などの食事と葛きりやお汁粉などの甘味がいただけます。
茶室“峯松庵”では、茶室やテーブルで抹茶がいただけます。抹茶は、先に配膳されたお菓子を戴き、口の中が甘くなった状態で、お茶を戴くと、渋みが和らぎ美味しく頂けます。古峰園は、この茶室を中心に造られたそうです。朝の澄んだ空気の中でお茶を戴き、茶室の方のお話を聞いていると優しい気持ちになります。
古峯神社は大芦川の源流に近い渓間、古峯ヶ原の山々の山麓に立つ1300余年もの歴史ある千古の神社。かつては日光山を開山した勝道上人の修行の地として、修験者の聖地として1000年もの歴史ある地です。
神社は古くから“天狗使いの里”や“天狗の杜”と言われ、祭神のお使いである天狗は崇拝者に降りかかる災難を、空を飛び取り除いてくれる大きな力の持ち主です。参籠(お籠り)又は、宿坊と聞くと特別な人しか利用できないのではないかと思われますが、古峯神社は誰でも利用できます。
宿泊の予約はインターネットでも可能ですが、個室希望の場合は神社の社務所で予約してください。祭神の懐で過ごす一夜は特別です。
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