写真:島塚 渓
地図を見る八岐大蛇(やまたのおろち)伝説のもとになったと言われる、斐伊川(ひいかわ)のほとりにある陶器製造所が「出西窯」。
開窯は昭和22年ということなので、備前や有田といった歴史あるエリアのものと比べると、比較的新しい窯元と言えます。
もともと戦後の混乱期に、5人の若者によって作り出された工房であり、集団としての連帯感を大切にした温かみのある雰囲気が魅力。また、早くから「民藝運動」の影響を受けていることもあって、手仕事によって作られる日用品を中心に扱っています。
いまでも美術館などでときどき耳にする「民藝運動」とは、もともと思想家“柳宗悦(やなぎむねよし)”を中心に展開された活動。それまで注目されることのなかった無名の職人さんたちによる工芸品の美しさを取り上げ、広く世の中に紹介していったのが柳宗悦でした。
「出西窯」もこの活動に影響を受け、実際にバーナード・リーチや濱田庄司(はまだしょうじ)といった「民藝運動」の中心的な陶工から指導を受けています。
普段使われる道具にこそ美が宿るという「民藝運動」の考え方を基本にして、親しみやすく、それでいて美しい陶器を製作し続けているのが「出西窯」なんです!
写真:島塚 渓
地図を見る「出西窯」では工房内に入ることができ、元日と日曜日以外は職人さんたちの仕事をする姿が見学できます。
ここでは原料となる粘土の精製から、窯焚きまですべて自前の工房で行うという徹底した陶器づくりがなされています。さらに、土や釉薬、窯焚きに使用する薪まで地元産のものを使うというこだわりも。
これは、設立当初から受け継がれている「郷土の土や釉の原料を大切にする」という職人さんたちの願いによるもの。時代を通して守られ続けている、手仕事への愛着を感じることができます!
写真:島塚 渓
地図を見る工房の隣にあるのが、展示販売館「くらしの陶・無自性館」。「無自性」とは、“自分の手柄などどこにもない”という意味で、職人さんたちが心のよりどころにしている言葉だそうです。
この販売所は明治初期の米蔵を改装して作られ、吹き抜けの館内は開放感抜群!リラックスして商品を選べるよう、木の風合いを活かした内装になっています。常時数千点の陶器が置いてあるので、手にとって感触を確かめ、ぜひ自分好みの一品を探してみてください!
「出西窯」の器を実際に見てみると、装飾が少なくシンプルなものが多いことに気付くと思います。これは日用品としての使い勝手の良さを、どこまでも大切にしているから。どの商品も手にしっくりとおさまるよう、工夫して作られたものばかりです。
さらに現代の暮らしに合わせて、電子レンジや食洗器にも対応しているのも嬉しいところ。美しさだけではなく、あくまで道具としての実用性にこだわっています。
そんな数ある「出西窯」の器のなかでも、特に人気なのが“出西ブルー”と呼ばれる青色のお皿。瞬時に目を引くこの鮮やかな青色は、“呉須(ごす)”という顔料を使ったもの。
つやと深みのある色合いで、多くのファンを持つ定番商品です!
写真:島塚 渓
地図を見る「出西窯」では陶器の焼成に使う、登り窯も見学することができます。工房に入って奥に進むと見えてくるのが、使い込まれた大きな窯。
これが登り窯と呼ばれるもので、江戸時代に日本に広まった連房式の窯です。「出西窯」では現在でも電気窯や灯油窯と併用しながら、登り窯も使っているとのこと。
1 回の窯焚きで5000個ほどの陶器ができるということなので、これがいかに巨大なものか想像がつくと思います。
登り窯は工房と同じく自由に見学でき、タイミングが良ければ職人さんたちによる説明を聞くこともできます。
「出西窯」は見て・触って・買って、という日常で使う陶器を総合的に楽しむことができるスポット。
工房を覗いたり、実際に焼き物を手に取ったりすることによって、職人さんたちの技術や思いがひしひしと伝わってくる場所になっています。ここに来ると、普段何気なく使っている器のことを、改めて深く考えさせられます。
日常の暮らしの道具をグレードアップしたいと思っている人は、ぜひ「出西窯」に出かけて、自分のスタイルにあった一品を見つけてみてはいかがでしょうか。
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(2024/4/27更新)
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