地面に伏せた亀のような姿の巨石「亀石(かめいし)」。長さ3.6m×幅2.1m×高さ1.8mの巨石で、のんびりとした飛鳥の雰囲気を象徴する“飛鳥の元祖ゆるキャラ”というような愛らしい姿です。
どのような目的で作られたのかは不明ですが、こんな伝承があります。
その昔、大和が湖だったころに対岸の当麻の地との間で水争いが起こりました。亀石はその時に水を抜かれて亡くなった亀たちを供養するために彫られたもので、今は南西を向いているが、いざ西を向いて当麻をにらみつけたとき、大和盆地は泥沼になる(!)のだとか!ちょっと恐ろしいエピソードですね。
近づいてみると、小さな両目が出ていて、脇には手らしきものも見られます。全体的にとてもユーモラスで、アップで撮影しても可愛らしいですよ。長い間、飛鳥の地を護ってきた守り神のような存在ですから、ぜひ愛でてみてください!
明日香村平田の「吉備姫王墓」(第29代天皇「欽明天皇陵」のすぐ隣です)は、柵で囲まれた古墳です。その柵内に設置されているのが「猿石(さるいし)」と呼ばれる4体の石像です。
写真手前の「山王権現」は、にこやかに笑っているかのようで、しっかり男性のシンボルまで作られています。その奥には、シンプルに「女」と名付けられた像が。さらにそのお隣には「僧(法師)」「男」という像も設置されています。
この猿石たちは、もともとあったお墓の守り神というわけではなく、すぐ近くの田んぼに埋もれていたものがここに安置されるようになったのだとか。数奇な運命を感じさせないような飄々とした表情に癒やされます!
明日香村岡の「万葉文化館」のすぐ近く、小さな丘にある「酒船石遺跡(さかふねいしいせき)」では、2つの不思議な構造の石造物が見られます。
丘の上の岩に不思議な溝が刻まれているのが「酒船石(さかふねいし)」です。長さ5.5m×幅2.3m×暑さ約1mという花崗岩の巨石に、円と線が組み合わさった溝が掘り込まれていて、どこか「ナスカの地上絵」を連想させます。
水を流したことは想像できるものの、どんな用途で作られたものだかは不明です。酒をしぼる槽・油や薬を作るもの・庭園の水場周りの施設など、様々な意見があるようですが、見れば見るほど不思議です。
「酒船石」がある丘から見下ろせる位置に、2000年に発見されたのが「亀形石造物」と「小判型石造物」です(※拝観料300円の有料施設です)。
周囲は一面に石敷きがあり、石垣と石段で囲まれています。石造の水槽のようなものを木樋でつなぎ、水を流していたことは間違いありません。閉ざされたような空間のため、見て楽しむ庭園のようなものではなく、天皇祭祀にかかわる祈りの場だったと予想されるそうです。
やや遠目からになりますが、「亀形石造物」の亀は目がきょろっとしていて、4本の手足がはっきりと描かれています。何らかの願いを込めてこう刻んだのでしょうが、このユニークな造形を見ると、日本の「Kawaii(かわいい)文化」の原点を見るかのようです!
明日香村飛鳥の「飛鳥水落遺跡(あすかみずおちいせき)」は、『日本書紀』にも登場する、中大兄皇子が作った日本初の水時計「漏刻(ろうこく)」の跡地です。
現在は礎石などが遺っているだけですが、当時はここに建物があり、中国から取り入れた最先端の水時計で正確な時刻を把握しようとした、壮大な国家プロジェクトの舞台となった場所です。
この遺跡の一角が、真ん中に穴が空いた大きな礎石を中心として、放射状に石の列が伸びていく一角があります。これがジブリ映画『天空の城ラピュタ』のロボット兵のようで、とても不思議な印象です。
ここでご紹介した以外にも、鬼の俎・鬼の雪隠・二面石・マラ石・須弥山石・石人像などの石造物が見られますし、ここに巨大な古墳の石室が露出した「石舞台古墳」などもふくめてもいいかもしれません。さらには、お隣の橿原市には「益田岩船」が、高取町には「猿石」(明日香村の猿石の兄弟分)もあったりと、不思議な石造物の宝庫なのです。
いずれも、何を目的として作られたのか、今となっては不明なものがほとんどです。長い間、この地でずっと人々の暮らしを見守り続けてきた石造物たちには、不思議なパワーが感じられるでしょう。
明日香村の石造物は、自転車で気軽に周れる距離にあります。レンタサイクルなどを駆使して、ぜひ巡ってみてください!
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(2024/4/26更新)
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