カンボジアの大地を見下ろす絶景の世界遺産「プレアヴィヒア寺院」

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カンボジアの大地を見下ろす絶景の世界遺産「プレアヴィヒア寺院」

カンボジアの大地を見下ろす絶景の世界遺産「プレアヴィヒア寺院」

更新日:2016/11/24 17:32

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター

カンボジア北端、タイとの国境に連なるダンレク山地に「プレアヴィヒア」という寺院が存在します。クメール語で「聖なる寺院」という意味を持つプレアヴィヒアは標高625mの断崖絶壁の上に伽藍が築かれており、山頂からの絶景ぶりは「天空の寺院」「アジアのマチュピチュ」などと称されるほど。まさに秘境という言葉がふさわしい世界遺産です。

ようやく決着したプレアヴィヒアを巡る領土問題

写真:木村 岳人

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プレアヴィヒア寺院はタイとの国境というシビアな位置にあり、昔からカンボジアとタイがそれぞれ領有権を主張していました。1962年には国際司法裁判所によってカンボジア領と認められたものの、遺跡周辺の一部地域は帰属が未確定のままであり、領土問題の火種はくすぶり続けていたのです。

2008年、プレアヴィヒアがカンボジア政府の推薦により世界遺産になったことで領土問題が再燃。武力衝突が勃発し、度々の銃撃戦により死傷者が出る事態となりました。しかしタイ側が紛争の解決に向かって動き始め、また2013年には国際司法裁判所によって帰属が未確定のままであった遺跡周辺の土地についてもカンボジア領と認められ、プレアヴィヒアを巡る領土問題はようやく決着がついたのです。

そのような経緯もあり、かつてプレアヴィヒア寺院へ行くにはタイ側からアクセスするのが一般的でしたが、現在は国境が閉ざされており、カンボジア側からしか立ち入ることができません。以前のカンボジアは赤土剥き出しの未舗装路ばかりで移動に物凄く時間がかかりましたが、近年の道路整備の進捗は目覚ましく、現在はプレアヴィヒアへの道はすべてが舗装されてます。遺跡巡りの拠点であるシェムリアップからは車で3時間半から4時間ほどと、日帰り観光も可能となりました。

現地ではまず山の麓にある観光管理所でチケットを購入し(要パスポート)、ピックアップトラックに乗り換えて山上へと向かいます。麓から眺めるプレアヴィヒアの山容は雄大かつ壮大。山頂には尾根に沿って剥き出しの岩盤が連なるのも確認でき、それはまるで城壁のようです。この景色はカンボジア側からでないと見ることができません。

山頂に向かって一直線!プレアヴィヒアならではの伽藍配置

写真:木村 岳人

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プレアヴィヒア寺院の始まりは9世紀、カンボジア一帯を支配していたクメール王朝によって創建されました。今に残る建物はその後の10世紀から12世紀にかけて築かれたもので、特に11世紀前半の王であるスーリヤヴァルマン1世と、12世紀前半の王であるスーリヤヴァルマン2世の時代に築造されたものがほとんどです。当初はシヴァ神を祀るヒンドゥー教の寺院でしたが、その後クメール王朝でヒンドゥー教が衰退すると仏教寺院になりました。

一般的なクメール王朝の寺院は東西を軸として東向きに建物を配すのに対し、プレアヴィヒアは南北を軸として北向きに建物を建てているのが特徴です。北側以外の三方を断崖絶壁に囲まれている地形を巧みに利用した、プレアヴィヒアならではの伽藍配置といえるでしょう。この自然環境と融合するように築かれた聖地という点も、世界遺産になる際に高く評価された点のひとつです。

山頂に向かって約800mの参道が一直線上に伸びており、その一番奥にたたずむ中央祠堂から手前に第一塔門、第二塔門、第三塔門、第四塔門、第五塔門が置かれています。寺院の入口から山頂までの高低差は120mもあり、中央祠堂までの参拝はちょっとした登山のよう。それもそのはず、プレアヴィヒアはヒンドゥー教の世界観において世界の中心に聳えるという「須弥山(しゅみせん)」をその伽藍全体で表現しているといわれています。

参道は石畳で舗装されており、その両脇にはシヴァの象徴である男根をかたどった「リンガ」が並んでいます。現存する数はまばらですが、かつては60以上ものリンガが参道に立ち並んでいたとのこと。また各塔門の前には石段が設けられており、次の塔門をくぐらないとその先が見えない構造になっている点も注目です。塔門をくぐる度にそれまでとは異なった視界が目の前に開ける、なんとも心憎い演出じゃないですか。

趣きが異なる五つの塔門の建築美

写真:木村 岳人

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寺院の入口から参道を進んでまず最初に現れるのが第五塔門です。プレアヴィヒアに現存する建物では最も古い10世紀初頭のコ・ケー様式で、基壇の上に建ち並ぶ柱と梁の造形が美しく、カンボジアの紙幣である2000リエル札にもその姿が描かれています。また第五塔門下の参道には状態の良いナーガの欄干が七つの首をもたげていますので、こちらも忘れずチェックしましょう。

続く第四塔門の左手前には幅18m奥行き幅36mもの巨大な貯水池が築かれています。岩山の上に位置するプレアヴィヒアでは水の確保がまさに死活問題。常に干上がることがないよう、境内には全部で三つの貯水池が設けられているのです。いずれも石積によって階段状に整備されており、水位が変わっても水を汲みに降りられるように工夫されています。

第三塔門は水平に長い建物で、翼のように左右に伸びるフォルムが目を引きます。特に背面から見る姿が美しく、赤みを帯びた石材のコントラストと相まって、女性的な華やかさと繊細さが感じられます。第三塔門を出た後はすぐに第二塔門へと入るのではなく、一呼吸おいて背後を振り返ってみてください。息を飲むような「水平美」を目にすることができるでしょう。

第二塔門と第一塔門は壁で連結されており、その内部は閉鎖的かつ重厚な雰囲気で、まさにプレアヴィヒアの中枢というような厳かな雰囲気。その最奥に鎮座する中央祠堂には現在は仏像が祀られており、袈裟を着た僧侶が祈りを捧げています。プレアヴィヒアの建物は屋根が木造であったことから現在は天井がなく壁や柱だけが残っていますが、この中央祠堂とその周囲を取り囲む回廊は屋根も石積で築かれており、今もなお在りし日と変わらない姿を残しています。

各所に残るレリーフは類を見ない美しさ

写真:木村 岳人

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プレアヴィヒアに残る建物には、いずれも出入口上部のまぐさ石(水平部材)や破風などにレリーフが施されており、その質の高さは他に類を見ないと評されています。これらの精巧なレリーフもまた、プレアヴィヒアが世界遺産になった理由のひとつ。

特に第四塔門北側の破風に刻まれた乳海攪拌(ヒンドゥー教の天地創造神話)が素晴らしく、プレアヴィヒアを代表するレリーフとして知られています。乳海攪拌の下にあるまぐさ石のレリーフは、寝ている維持神ヴィシュヌのヘソから蓮の花が生え、そこから創造神ブラフマーが誕生したという創世神話の場面が描かれています。

他にも、第三塔門の北側には右手で山を持ち上げるクリシュナとガルーダに乗るヴィシュヌ神、同じく第三塔門の南側には聖牛ナンディに乗るシヴァとインドラ、中央祠堂の入口には踊るシヴァなど、ヒンドゥー教の神話や故事にまつわる神々や場面が躍動感たっぷりに描かれています。繊細なクメール美術をじっくり楽しみながら見て周りましょう。

誰もが必ず息を呑む!頂上に広がるパノラマ絶景

写真:木村 岳人

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中央祠堂から回廊を抜けて裏手に出ると、視界が開けた断崖絶壁の山頂に出ます。空中にせり出したテラスのような岩の縁から見る眺めはまさに絶景の一言。たとえ遺跡にまったく興味がない人であっても、この景色を見れば「来てよかった」ということ間違いなし。

左右にはカンボジアとタイの国境を縁取るように続くダンレク山地の山並みが連なり、そして正面にはどこまでも広がる緑色の大地。文字通りカンボジアの最果てまで来たのだという実感が持てます。ほぼ360度の眺望が利くパノラマ絶景、どれだけ見続けても飽きることがありません。

古今東西、眺望の利く険しい山は軍事や宗教の拠点として利用されてきました。クメール王朝もまた、極めて眺めの良いこの場所を重視して寺院を築いたに違いありません。いわばこの絶景こそ、プレアヴィヒアを聖地たらしめる一番の価値といえるでしょう。

シェムリアップからカンボジアの果てへ

精巧なレリーフに見事な絶景の「プレアヴィヒア寺院」。タイとの国境に位置するということもあり、まさに秘境好きにはたまらないロケーションの世界遺産です。

シェムリアップからプレアヴィヒアまでの直線距離は約120kmですが、その道のりはアンロンベン経由で約250km。車で片道3時間半から4時間ほどかかる距離ですので、シェムリアップの旅行会社やゲストハウスが主催するツアーに参加するか、車を一日チャーターして行くのが一般的です。

プレアヴィヒアの参道は傾斜が急な箇所が多く、汗をかきやすいので必ず飲み物を持参していきましょう。滑りやすい箇所も多いので、動きやすい服装と底がしっかりした靴がいいでしょう。また山上の天候は変わりやすく、折り畳み傘などの雨具があると安心です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/11/08 訪問

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