信州「鹿教湯温泉氷灯ろう夢祈願」は、氷と炎と人の温もり

信州「鹿教湯温泉氷灯ろう夢祈願」は、氷と炎と人の温もり

更新日:2016/12/07 10:44

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
1997年から始まった「氷灯ろう夢祈願」は、手作りの氷灯ろうにロウソクの明かりを灯す幻想的な信州・鹿教湯温泉のイベントで、冬の風物詩として定着しています。願いを込めて灯されたロウソクの明かりが、澄んだ空気の中で輝くとても幻想的な行事です。雪景色の中の冬の夜を煌めきに変える明かりと一緒に温泉が楽しめる「鹿教湯温泉」に出かけてみませんか。信州の冬の楽しみはスキーやスノボだけではありませんよ。

鹿教湯温泉一番の名所「五台橋」から始まる「氷灯ろう夢祈願」

鹿教湯温泉一番の名所「五台橋」から始まる「氷灯ろう夢祈願」

写真:和山 光一

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『鹿が猟師に教えた温泉』と伝えられる信州上田にある鹿教湯温泉では、毎年12月末から翌年1月末の間、約200個の氷灯ろうに灯された火が、やさしく幻想的に町を包む冬の恒例行事「鹿教湯温泉氷灯ろう夢祈願」が行われています。山間の厳しい寒さで作ってできた氷を灯ろうにして街中に飾られるのです。

特に見て頂きたいおすすめの場所が、温泉街から背後に鹿教湯富士を頂く旅館街のある湯端通りを抜け、公共の湯『文殊の湯』へと続く湯坂を下ったところ、内村川に架かる『日本のマディソン郡の橋』と呼ばれる珍しい屋根付き木造橋の「五台橋」の屋根の下、そして文殊堂へと続く46段の石階段から薬師堂周辺まで続く均等に並ぶ氷灯ろうです。イルミネーションとは違った温かみのある光の路が出来上がっています。

期間中毎日、まだ辺りが明るい夕方の4時半頃からは、松明で約200個の灯ろうの中のロウソクに一つひとつ火が灯される灯火式が行われています。一般の参加者もその頃までに外湯の「文殊の湯」の前に集まると、誰でも無料で参加できるのが魅力です。暖かい服装で出かけてください。

温泉が身体に、風景が心に効く湯治場「鹿教湯温泉」

温泉が身体に、風景が心に効く湯治場「鹿教湯温泉」

写真:和山 光一

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鹿教湯温泉に行くには、上田市街を抜け、塩田平から松本平に抜ける国道254号線を鹿教湯トンネル手前から内村川にかかる鹿教湯橋を渡ります。

その昔、鹿に化身した文殊菩薩が、信仰厚い猟師に霊験あらたかな湯を教えたと伝わる、四方を豊かな自然に囲まれた「鹿教湯温泉」は、万葉集に「那須の湯」と記された古湯で800年の歴史を誇ります。1954年に始まった環境庁指定国民保養温泉地に選定されており、歓楽街的要素を持たない静かな温泉地は、周囲の山々の頂きは1500m前後と信州の中では低めで、あたりの自然は里山の風景を残しています。「鹿教湯来る時や/杖ついて来たが/今日は薬師の広場で踊る/鹿教湯小唄のほがらかさ」 西条八十による「鹿教湯小唄」の一節に、この温泉の持つ魅力が詠われています。全国でも数少ない国民保養温泉地に指定されていることから湯治客も多く見かけますよ。

浄土へと真っ直ぐに伸びる氷灯ろうの道標

浄土へと真っ直ぐに伸びる氷灯ろうの道標

写真:和山 光一

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昔から「現世と神の世界を結ぶ橋」としても知られ五台橋付近は、木々が生い茂り、川のせせらぎが心地良く響き、大自然にくるまれているような静けさと安らぎに満ちている神聖な趣のある場所です。五台橋より向こう側(川を挟んで反対側)は、仏様の住まわれる浄土といわれ、智慧を司る菩薩「文殊菩薩」を祀る文殊堂と医薬を司る仏・医王「薬師如来」を祀る温泉薬師堂が高台に肩を並べて建っています。

願いを込めて明かりが灯された直径25cm、高さ20cmほどの円筒形の氷灯ろうが、五台橋から薬師堂に向かって急な真直ぐの階段の両側に並び、まるで浄土に通じる道標のようです。その先にあるライトアップされた温泉薬師堂は、瑠璃光によって照らされる瑠璃光浄土の如く輝いていて、お堂の中には病苦から救ってくれる薬師如来と仏法の守護者である仁王が共に祀られています。

薬師堂の周りには病気平癒の願いとお札に千羽鶴やわらじが飾られていて、今も厚い信仰を集めているのがわかります。是非自分の健康をお願いしてみましょう。

行基が彫り込んだ文殊菩薩を祀る「文殊堂」

行基が彫り込んだ文殊菩薩を祀る「文殊堂」

写真:和山 光一

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その昔、鹿に化身した文殊菩薩が、信仰厚い猟師に温泉の存在を教えたことが名前の由来とされる「鹿教湯温泉」。もう一つの屋根付の橋「寺沢橋」をはさんで佇む文殊堂には、その文殊菩薩が祀られています。

奈良時代行基の弟子園行によって創立されたと伝わる文殊堂ですが、現在の文殊堂が建ったのは江戸時代中期の宝永6年(1709)といわれ、屋根に特徴のある入母屋造りの建築様式を用い、欄間や向拝などに多くの彫刻が施されています。またお堂の天井には江戸時代後期の日本画の大家。谷文晁作と伝わる竜の絵があり、夜な夜な川の水を飲みに石段を下ったという伝説が残っています。その折に切られたという首の傷跡を探してみてください。

温泉街を見下ろすように佇む文殊堂からは、夫婦杉の間を通り抜け、両側に並ぶ氷灯ろうに照らされた46段の階段を下って川沿いに五台橋に戻ります。

里山の温泉街を清々しさに包まれて歩く冬の道

里山の温泉街を清々しさに包まれて歩く冬の道

写真:和山 光一

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信州らしい里山に囲まれた鹿教湯温泉には健康的に里山歩きを楽しめるようにと、いくつかの散策ルートが用意されています。中でも人気は、田園の道や、真っ直ぐに伸びるカラマツ並木、ダム湖の景色を望む遊歩道、奇岩の威容を愛でる山の道などを歩きながら、文殊堂や温泉薬師堂など21カ所の名所を辿る「鹿教湯二十一番名所めぐり」と名付けられたスタンプラリーです。集印帳は旅館、土産物店で一冊200円で販売されています。全長13Kmを一日で廻ることも、また2〜3日かけてゆっくり散策することも、楽しみ方はいろいろですが、見事完歩した強者には賞状と記念品が進呈されるので挑戦してみてはいかがでしょうか。

温泉地内の名所のみを集めた1〜2時間で廻れる距離の短いコースもあります。因みに文殊堂の西にある紅葉橋と東のみどり橋は二つで夫婦橋とされ、夫婦で渡ると仲良く暮らせるといいますよ。

冬の寒さを癒してくれる湯に浸かりながら幻想の世界を楽しむ

「五台橋」のすぐそばの渓流沿いにある共同浴場「文殊の湯」の露天風呂からは川の水音を聞きながらこの氷灯ろうを眺めることができます。文殊の湯は、鹿教湯温泉の始まりである最古の源泉跡に建ち、浴槽には100%源泉の良質な湯があふれています。男女それぞれに内湯2つ、露天風呂1つあり、温度の違う3つの湯に入ることができます。泉温41℃前後の優しい肌ざわりで、じっくり長湯に最適な湯に浸かりながら氷灯ろうの幻想的な風景が楽しめますよ。ぜひお試しください。

また予約ではありますが、氷灯ろうに自身の願いを込め、自ら点灯することで成就を祈願できる「夢祈願氷絵馬」も鹿教湯交流センターにて参加料1000円で販売されています。きっと旅の思い出になること間違いなしです。

凍える寒さに空気がピンと張りつめる夜。寒ければ寒いほど美しく輝く信州鹿教湯の氷の世界と冷えた身体を癒す温泉を満喫してみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/01/31 訪問

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