現在は長野県松本市に合併された旧奈川村は、野麦峠を通じて岐阜県高山市と接する山間にあります。渓谷沿いに集落が点在する静かな山里は、上高地や白骨温泉などの観光地からも近く、あたりは2000m級の山々に囲まれています。夏はキャンプ、冬はスキーを楽しめるアウトドアスポットとしても人気の地域です。
昔はどこの家庭でも蕎麦が打たれていたという奈川地区。標高の高い場所で生産された蕎麦は甘みが強く香りが高いと評判ですが、生産量が少ないため「幻のそば」とも言われています。
そんな蕎麦の生産地で生まれたのが「とうじそば」。山の幸がたっぷりと入った温かいお汁と一緒に頂くお蕎麦は、冷たいざるそばとは趣の異なる美味しさです。
松本市街地からは車で約1時間。渓谷沿いの山道を進み、大きなトンネルをぬけていきます。それはまるで蕎麦に「会いに行く」道のりのように感じるかも!?
奈川地区でお蕎麦を頂くことができるお店は7軒ほど。その中で、今回は温泉宿泊施設もある「仙洛」をご紹介します。
冬場はスキー客が多く訪れる仙洛は蕎麦のお食事処としても有名。生産量が少ない奈川産そば粉を100%使用しているのも人気の理由のひとつです。混んでいてすぐに席につけないことも多いので、到着したらまずノートに名前と人数を書いて待ちましょう。寒い時期は玄関にある大きな真木ストーブで暖がとれます。
お食事場所は玄関わきの大広間。座布団に座って頂きます。
「とうじそば」とは、奈川地区に伝わる伝統料理。寒い時期でも美味しくお蕎麦を頂こうした地元の方々の知恵から生まれました。季節の野菜や鶏肉などが入ったお汁を鍋にかけて温め、その中で小分けにされたお蕎麦を軽く温めてから汁と一緒にお椀にもっていただきます。
温め方は、とうじざると呼ばれる柄の長い小さな竹ザルを使ってお鍋の中でしゃぶしゃぶ。すでに茹でてあるお蕎麦ですから、サッと汁にくぐらせる程度で大丈夫です。
汁はお店によって味が異なりますが、仙洛は後を引く甘めのお味。そこに山菜などの具材がたっぷり入っています。毎年秋に行われる新そば祭りの期間中はマツタケもはいります!
「でもやっぱり冷たいお蕎麦も味わいたいなぁ」という方は、盛そばも注文してみてはどうでしょう?本当に美味しいお蕎麦は、温かくても冷たくても旨いのです。
とうじそばのお楽しみは、お蕎麦を食べ終えた後も続きます。
お鍋に残ったお汁の中にご飯を入れて雑炊‼お好みで卵を加えるものアリです。山菜の風味が効いた甘めのお汁をしみ込ませたご飯は、クセになりそうな味。この雑炊が楽しみで、蕎麦を食べる時にお汁を多めに残す人もいるほどです。
地元の方によれば、雑炊を食べて最後はお鍋の中を空っぽにするのがツウの食べ方だとか。お鍋の中に入っているものは一切無駄にせず頂戴するのが、作る方にも食べる方にも嬉しい礼儀なのです。
ご飯や卵はお蕎麦とは別注文になりますが、せっかくとうじそばを食べるなら雑炊まで頂くことをお勧めします!
自然と食を満喫できる魅力あふれる山里、奈川地区。自然はそのままで美しく、食べ物はそのままが美味しい。
とうじそばは、珍しい食材が使われているわけではありません。具材に使われる野菜とそば、そのものが美味しいのです。だからこそ一度食べたら忘れられない味になるのかもしれません。
素朴な場所の素朴な味に、会いに行ってみませんか?
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