井波彫刻は、日本の伝統的工芸品にも指定されている富山県南砺市井波を中心に生産される木彫工芸の伝統技術です。その発祥は江戸時代、宝暦・安永年間の井波別院瑞泉寺の焼失と再建が関わっていると言われています。
瑞泉寺が火災のために焼失した際、再建のために京都の本願寺から彫刻師が派遣されました。その技法を井波の大工たちが受け継いだのが井波彫刻の始まりとされています。
当初は寺社彫刻が主流であった井波彫刻ですが、時代と共に一般向けの製品もつくられるようになり、現代は欄間や置物の他にも、ギターの受注生産や、テレビ番組向けの肖像彫刻など、その作品は多岐に渡ります。
瑞泉寺にある唐破風(からはふ)造りの式台門を飾る彫刻は、井波の大工であった北村七左衛門(番匠屋九代)が彫ったもので、井波彫刻の原点とも言える名作です。
この彫刻作品のモチーフになっているのは、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とし、試練を与えて成長させるという「獅子の子落とし」を表現しており、動きのあるダイナミックな構図が特長です。
もともと式台門とは、勅使の来訪を迎えるための入り口であるため、限られた人しか通ることを許されませんでしたが、近年ではしだれ桜祭りの期間(4月上旬)に一般の人も通れるようになりました。
井波別院瑞泉寺は真宗大谷派の寺院で、明徳元年(1390年)に建立されました。
何度か焼失と再建を繰返す過程で、寺院を装飾するための木彫刻の技術が発達し、それが井波彫刻につながりました。瑞泉寺では、井波彫刻のすぐれた作品を見ることができる他、国指定重要文化財や重要美術品なども展示されています。
また、周防正行監督による1989年公開の映画『ファンシイダンス』のロケ地としても知られています。
「木彫りの里 八日町通り」。瑞泉寺に通じるこの石畳の通りに面して、井波彫刻の工房が軒を連ねています。
町を歩いていると、新旧さまざまな彫刻を目にします。この通りに立つ電話ボックスの彫刻もぜひ見てみてください。
耳を澄ますと、木槌の音が聞こえてくるかもしれません。
瑞泉寺から約1kmのところにある「井波彫刻総合会館」では、井波彫刻に関する資料展示や企画展に加え、作品の販売も行っています。
井波彫刻総合会館に隣接する「芸術の森公園」には、地元で4年に一度開催される「南砺市いなみ国際木彫刻キャンプ」で制作された作品なども展示されており、現代の作家による木彫作品を鑑賞することができます。
井波彫刻で知られている、富山県南砺市の井波。600年続く木彫の伝統工芸は、現在も300人いる彫刻師たちの手によって、脈々と受け継がれています。
木彫りの歴史を感じつつ、町のあちこちにある木彫作品を鑑賞しながら散策してみましょう。
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索