朱塗りの“清水の舞台”!?房総の穴場寺院「浪切不動」

朱塗りの“清水の舞台”!?房総の穴場寺院「浪切不動」

更新日:2016/11/15 16:11

井伊 たびをのプロフィール写真 井伊 たびを 社寺ナビゲーター、狛犬愛好家
「海の守り神」として信仰を集めている「浪切不動」は、その昔「行基」が難破船の海難除けとして不動尊像を刻んだものを、弘法大師が「石塚山」に移し開眼供養し寺を建てたのが始まりとされている。

朱塗りの「仁王門」をくぐり長い石段を登ると、京都の清水寺と同じ、懸崖造りの本堂に辿り着く。その回廊から山武市成東の街並みが一望できる。

ときには、荒波に見舞われる人生航路の順風満帆を祈願に行こう!

立派な朱塗りの「仁王門」が、出迎えてくれる

立派な朱塗りの「仁王門」が、出迎えてくれる

写真:井伊 たびを

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「房総の清水の舞台」は、正式名称「成東山不動院長勝寺」で、千葉県山武市成東にある。JR総武本線の成東駅からだと、歩いて10分足らず。真言宗智山派の寺だが、通称「浪切不動」と親しまれ、長く信仰されている。もともとは下横地村(現在の山武市下横地)にあった「円頓寺」の末寺だった。

ちなみに、その本寺「円頓寺」は、江戸時代中期の儒学者で、思想家で文献学者でもある荻生徂徠が、朱子学の基本書ともいえる「四書大全」を学んだところとされている。残念ながら本寺「円頓寺」は現存せず、現在では公民館になっている。

目に飛び込んでくる本堂は、朱塗りの懸崖造り

目に飛び込んでくる本堂は、朱塗りの懸崖造り

写真:井伊 たびを

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仁王門をくぐり、きちんと清掃された境内を進み行けば、石塚山の中腹の岩石上に建てられた、朱塗りの本堂が目に飛び込んでくる。こちらの本堂は、「懸崖造り(けんがいづくり)」である。懸崖造りの代表は、誰もが知っている京都の国宝・清水寺。だから、「清水の舞台」を彷彿とさせるのだろう。

この本堂は、入母屋造瓦葺き、間口三間(約5.5m)、奥行四間(約7.3m)、欄干、回廊をめぐらし、石積みの基壇の上に本堂内陣まで貫通している「通し柱」2本を含め、26本の柱によって支えられている。江戸時代初期に建立されたと記録されている。

本尊はもちろん不動明王だが、「こんがら」「せいたか」の二童子も安置されている。本堂正面の小窓から覗き見、拝むことができる。

「石塚の森」に抱かれる本堂に魅せられる

「石塚の森」に抱かれる本堂に魅せられる

写真:井伊 たびを

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本堂のある石塚山は標高30m。その山を覆う「石塚の森」は、スダジイ林で構成されており、千葉県指定文化財天然記念物に指定されている。スダジイの平均樹高は10m前後である。

ちなみに「スダジイ」とは、ブナ科で別名「シイ」であり、沿岸型の常緑高木。花は5月〜6月頃に咲き、果実は翌年熟す。「石塚の森」には、ほかに北斜面にはカシ類が、東斜面にはイロハカエデ、ムクノキ、エノキなど落葉広葉樹が自生し樹種も豊富だ。

この緑の「石塚の森」の存在が、朱塗りの浪切不動をより際立たせ、その荘厳さに信仰心をより醸成させているのだろう。

回廊から山武市成東の街並みが一望できる

回廊から山武市成東の街並みが一望できる

写真:井伊 たびを

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本堂に設けられた回廊からの眺めは最高。山武市成東の街並みが一望できる。大した高さでないと思われがちだが、意外にも足が竦むほどの高さ!。高所恐怖症気味の方は、しっかり欄干に掴まりながら、眺望を楽しむことをお勧めする。

かつてはこの本堂の真下まで海があり、波を切る巌の上に建てられたことより「浪切不動」と呼ばれるようになったとか。その証拠に、むかし遭難しそうになった船が、寺の常夜灯の灯りに導かれ救われたという逸話も残されている。しかし、現在は海岸線が後退したため海上からは見えない。

新上総国三十三観音霊場第三十二番の札所

崖の上にある本堂へ向かう登坂の途中に、「新上総国三十三観音霊場第三十二番の札所」がある。こちらには「ぼけ封じ観世音菩薩」と「子育水子観世音菩薩」が祀られている。

その前には「ぼけにかつ」の看板と共に、磨きこまれた御影石の「球体」と「ハート」が。球体には「珠に手を添へ 祈りを 願いを 心の安らぎを」、ハートの傍には「ハートに手を添え 観音様のお慈悲を お受けください」とそれぞれ案内がある。それぞれ、「ぼけ封じ」と「良縁・子授」の祈願をすることができる。

新上総国三十三観音霊場第三十二番の札所

写真:井伊 たびを

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房総の「清水の舞台・浪切不動」には、人生決断のときに訪れたい!

浪切不動の西隣には、成東城址公園があり、その園内には『里の秋』の歌碑がある。童謡「里の秋」は、成東町が生んだ作詞家「斎藤信夫」の作詞である。そのしんみりとした歌詞になぞられて、深まる秋に訪れるのもいいし、梅の咲く時期や桜の時期は、もっと華やかでいいかもしれない。

ところで、思い切って大きな決断をすることのたとえに、「清水の舞台から飛び降りる」という諺がある。これからの人生において、大きな決断に迫られ、迷い悩んだときなど、ぜひこちらを訪れ回廊からの眺望を味わいながら、「大きな決断!」をしてみてはいかがだろう?

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/11/06 訪問

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