愛媛県今治市の沖合にある海域は現在も大阪と九州を結ぶ最短航路にあり、船舶の往来がとても多い場所です。
瀬戸内海というと穏やかなイメージを持つ人も多いのですが、多くの島が入り組むことにより潮の流れが早くなるこのエリアは、実は「海の難所」としても知られています。
和田竜氏の小説「村上海賊の娘」で注目された村上水軍は、この海域にある「能島」を居城とし、潮の流れを熟知することで瀬戸内海を制圧していたとも言われています。
村上水軍の要塞であった能島の周囲では、最大10ノット(時速約18km)もの潮流が渦巻いていたことから、能島は「天然の要塞」とも呼ばれていました。
その急流を間近で体験できるのが、「宮窪瀬戸潮流体験」です。
大島の北側、宮窪桟橋から2kmほど東方向に進んだ海岸沿いにある「物産館兼魚食レストラン能島水軍」が、観潮船の出発場所です。館内で受付を済ませたら、集合時刻に桟橋へ向かいましょう。
配られたライフジャケットを着たら、船に乗り込みます。急流が渦巻く急流の海峡へ、いよいよ出航です!
村上水軍博物館前を出航した観潮船は、能島城跡〜船折瀬戸〜見近島〜伯方・大島大橋のルートを約40分かけてめぐります。
この一帯は「宮窪瀬戸」といわれ、来島海峡と共に「四国の水辺八十八ヶ所」にも選ばれている景観の美しいエリアです。テープのガイダンスを聞きながら、次々と現れる絶景を堪能していきましょう。
40人乗りの船は、激しい波しぶきが入らないよう、少し高めのガードがつけられています。濡れるのが心配な人は、乗船前にレインコートを借りておくことをおすすめします。
築港を出た観潮船は一気にスピードを上げ、急流を目指して進んでいきます。船を操縦するのは、地元の漁師さん。潮の流れを熟知した舵捌きで、どんどん急流へと分け入っていきます。
能島近くの潮流ポイントに到着すると船のエンジンが切られ、轟音を上げる潮の流れがすぐ間近に迫ります。
戦国時代、エンジンもない船がこの海を往来することが、どれだけ難しかったことでしょう。潮流に乗った船はぐるぐると回転し、スリル満点。不規則に流れる潮の流れを、船の動きで体感することができます。
激しいしぶきを上げる潮流は滝のように流れ落ち、まさに迫力満点の一言。海面に大きな段差が見えると、思わず感嘆の声を上げてしまいます。運が良ければ、あちこちに渦潮が見えることもあります。
潮の変わり目に発生する潮流はまさに「動」ですが、一方で、そのすぐ横に波が少なく、静かでぽっかりと空いたように見える箇所があります。
これは「わき潮」と呼ばれ、実際に海底から潮が噴出しているわけではなく、海底の岩礁に当たった海水が上方へ押し出されることによって潮が湧き上がるように見える、というものです。
島や海底の岩礁により流れが変えられた潮が四方八方に流れることで、潮の「動」と「静」を生み出すのです。刻一刻と表情を変える迫力があるのはもちろんですが、まさに自然が作り出す芸術といっても過言ではありません。
観潮船は往路が能島の北側、復路が南側を通り、能島をあらゆる角度から見渡すことができます。現在は天守閣はありませんが、当時の島のを再現する工事が進められており、水軍城としての姿を取り戻そうとしています。
この能島の近辺は潮の流れが早く、中でも能島のすぐ隣にある「鯛崎島」の周りでは、潮がモンスターのようにうねっています。
鯛崎島はまんが日本昔ばなしで放送された民話「クジラのお礼参り」の舞台と言われていて、ガイダンスではその民話を愛媛方言で聞くこともできますよ。
能島と鯛崎島はどちらも無人島で、立ち入ることができるのは能島のみです。
残念ながら、通常の観潮船ツアーでは能島に上陸することができませんが、10名以上の団体予約があった場合に運航される「能島上陸&潮流クルーズ」なら、能島に上陸し、散策することができます。団体旅行で大島を訪れることがあれば、ぜひ組み入れたいイベントです。
船折瀬戸はその名の通り、船が折れるほどの急流が体感できる場所です。
ここでも観潮船はエンジンを止めてくれますが、再びぐるぐると潮に乗るのを体感できます。
かつて水軍たちが「船に乗るより、潮に乗れ」と言うほどの難所で、潮の流れを熟知していた村上水軍は、ここを通る船から通行料を取ったり水先案内人として警護にあたったりしながら、この海域の治安を維持していたと伝えられています。
能島を過ぎると、大島大橋が目の前にそびえ立ちます。大島大橋は1988年に開通、大島と伯方島を結ぶ全長900m余の吊り橋です。
橋から見下ろす瀬戸内海の姿は、貨物船や釣り船がのんびりと行き交って一見穏やかそうに見えるのですが、観潮船に乗ってみると、実はかなりの早さで潮が流れているのがわかります。
エメラルドグリーンの潮流と白い吊り橋のコントラストは必見です!
急流といっても、潮流の規模は潮の満ち引きにより大きく変化します。せっかく体験するなら、より潮の流れが早い日を狙いたいものです。
潮の状況をざっくりと確認したいなら、今治の満潮時刻をインターネット等で検索して、「大潮」の日の満潮前後の時刻を狙いましょう。潮の満ち引きが一番大きいため、潮の流れも早くなりやすく、運が良ければ大渦を見ることができるかもしれません。
予約受付をしている「レストラン能島水軍」でも見頃の時期や時間を教えてもらえますので、予約時に潮の状況や出航予定なども含め、事前に電話で確認しておくのをおすすめします。
出航前や乗船後に空き時間があれば、観潮船発着場所のすぐ向かいにある「村上水軍博物館」で歴史を学んだり、「レストラン能島水軍」で海鮮バーベキューを楽しむのもいいですね。
体験料金は、大人1000円、小学生500円(小学生未満は無料)で、「村上水軍博物館」や「レストラン能島水軍」を利用した方は割引が受けられます。
詳しい運行時間は予約方法は参考URLをご確認いただくか、レストラン能島水軍までお電話にてご確認ください。
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