フレンチ・ルネッサンス様式を基調とした木造瓦葺二階建ての建物。それが「仁風閣」です。軒飾りはバロック調で、6本のレンガ煙突を備え、後側には1,2階とも吹きっ放しのベランダ。延べ床面積は1,046平方メートル(317坪)あり、美しさの中にも風格を兼ね備えた見事な建物です。
そもそも「仁風閣」は、鳥取池田家の第14代当主池田仲博伯爵の別邸として設計依頼されたもの。そこが当時の皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の山陰行啓時の宿泊施設として利用されたのです。
これだけの建築物であるにも関わらず、明治39年9月に着工し、わずか8カ月という驚異的なスピードで完成したのが「仁風閣」なのです。当時の市役所の年間予算が5万円でしたが、仁風閣の建設費は約4万4千円と記録されており、スピードだけではなく予算も驚異的だったことが分かります。
受付を入り、観光コースとしてまず目に入って来るのは「らせん階段」でしょう。美しき曲線を描くらせん階段ですが、なんとこちらは支柱がありません。階段のわきに使われているけやきの板を6枚つないで支えているのです。これは全国的にとても珍しいものです。なお、らせん階段の上り下りは出来ませんのでご注意ください。
らせん階段左側の階段を上がって二階に進みましょう。その正面に堂々と掲げられている額があります。これは海軍大将東郷平八郎の直筆。そして「仁風閣」という命名そのものが東郷平八郎によるもの。
東郷平八郎は皇太子嘉仁親王の随行としてやって来ています。そして御座所や謁見所と呼ばれることになる各部屋が用意されたことから、これだけの建築物になったも言われます。
東郷平八郎の額がかかる壁の反対側が謁見所となっています。正面から見て謁見所の右が御食堂、左が御座所。御座所は落ち着いた雰囲気がありますが、それでいながら仁風閣の中で最も豪華な作りとなっている場所です。イタリア産の黒大理石が使われたマントルピースも必見!
ところで建物に使われている電灯は、当時の鳥取県において初めてシャンデリアとして使われたもの。単なる電灯では無く貴重なものですので、観光の際は意識して見て下さい。
白壁と白い絨毯の美しさが際立っているバルコニー。なんともおしゃれな雰囲気です。ここは1階、2階ともほぼ同じ作りとなっており、映画「るろうに剣心」のロケが行われた場所となっています。また映画の中で印象的な戦いのシーンはここから見える「宝隆院庭園」であり、映画を思いだす人もいるかも知れません。なお、ロケの様子は、仁風閣の中にパネル展示されています。
ところで「宝隆院庭園」は、鳥取藩12代藩主が11代藩主夫人宝隆院のために造営したもので、歴史的価値も極めて高いと言えるでしょう。
仁風閣の特長は構造の美しさだけではなく強さです。昭和18年の鳥取大地震でもガラスが壊れることはありませんでした。現代では使われない作り方のガラス板を一部で見ることが出来ますので、意識して観光してみましょう。
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