写真:乾口 達司
地図を見る奈良を代表するススキの名所といえば、曽爾村の曽爾高原をあげることが出来ます。しかし、奈良市内からだと車で1時間半もかかる曽爾高原までわざわざ出掛けずとも、たくさんのススキを見られるスポットがあります。それが、今回、ご紹介する平城宮跡(へいじょうきゅうせき)。
甲子園球場が30個も入る広大なスペースは史跡公園として整備されていることもあり、四季折々の草花が自生しています。ススキもその自生する草花の一つ。特に第二次大極殿と東院庭園とのあいだ、近鉄奈良線の走る朱雀門北側付近の2ヶ所にはたくさん自生しており、毎年、秋になると、無数の穂が風になびいて波のように揺れています。
なかでも、ぜひ、ご覧いただきたいのが、夕日を浴びて輝く光景!そのさまは幻想的で、見るものに必ずや深い印象を与えるはずです。写真は、ススキ原を前景にして、2010年に復原された第一次大極殿(だいいちじだいごくでん)の夕景を撮影した一枚。第一次大極殿は正面約44メートル、側面約20メートル、高さ約27メートルという巨大な建造物で、天皇の即位式や外国使節との面会など、国家にとってもっとも重要な儀式の折に使われました。
東院庭園にもほど近い撮影場所からは4、500メートルも離れていますが、その巨大さゆえ、遠くからでもその勇姿をはっきり見ることが出来ます。奈良時代を身近に感じさせてくれる巨大建造物とススキ。奈良ならではの被写体だと思いませんか?
写真:乾口 達司
地図を見る第一次大極殿と並ぶ平城宮跡のシンボルといえば、1998年に復原された写真の朱雀門(すざくもん)が挙げられるでしょう。朱雀門は平城宮の正門に当たる建造物で、ここが平城宮の南限でした。朱雀門からは平城京の南端に当たる羅城門まで道幅75メートルにもおよぶ約4キロの朱雀大路が通っており、まさしく平城京の中軸をなす門でもありました。
写真はその朱雀門を北側から撮影したもの。先ほどと同様、ススキを前景にした構図ですが、ススキに混じって見られる黄色い花はセイタカアワダチソウ。白いススキと黄色いセイタカアワダチソウとが重層的に写り込んでおり、色彩の豊かさを演出しています。
写真:乾口 達司
地図を見る写真に写る建物は宮廷につかえる宮内省の建物を復原したものですが、その向こうに見えるこんもりとした森のようなもの、いったい何だと思いますか?実はこれ、古墳なのです。宮内庁は平安時代初期に在位した平城天皇(へいぜいてんのう)の陵墓に指定していますが、考古学上は「市庭古墳」(いちにわこふん?)と呼ばれており、平安時代よりも400年も古い5世紀前半の古墳と考えられています。
この市庭古墳、築造当時は全国で14番目の規模を誇る巨大な前方後円墳でしたが、奈良時代になり、平城宮を建設する際に前方部が破壊され、その上に宮殿の一部が建設されました。現在は大きな円墳として残っていますが、平城宮の復原遺構だけでなく、古墳とセットでススキを楽しめるのも、平城宮跡の特徴。この組み合わせもお見逃しなく。
写真:乾口 達司
地図を見る広大な区画が公園化されていること、高い建物が周囲にないこと、この2つの要因により、平城宮跡からは、奈良盆地をぐるりととりかこむ東西南北の山々もはるか遠くまで眺められます。
写真は、奈良盆地の西、奈良県と大阪府とを分かつ生駒山。標高は642メートルで、南北にのびる生駒山地の主峰に当たります。その歴史は古く、すでに『日本書紀』に登場しています。奈良時代を代表する日本最古の歌集として知られる『万葉集』では「夕さればひぐらし来鳴く生駒山越えてぞ我が来る妹が目を欲ほり」(私は夕方になるとひぐらしが来て鳴く生駒山を越えて来るよ、いとしい人に会いたくて)などと詠まれており、奈良時代の都人にとっても馴染みのある山でした。そんな生駒山とススキとをセットにして生駒山に沈む夕陽を写すと、何とも情感あふれる一枚になることでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見るもう一つ、平城宮跡ならではの光景として挙げておきたいのは、区画内を近鉄電車が走っていること。近鉄電車は数分おきにススキの生い茂る付近を疾走していますが、国の特別史跡でなお且つ世界遺産の敷地内を電車が走っているのは珍しいこと。ススキに埋もれるようにして走っているのも、少し不思議な光景といえるでしょう。もちろん、車窓から無数のススキが生い茂る平城宮跡を眺めるのも一計。古代と現代、自然と人工物とが複合した独特の光景もご堪能ください。
平城宮跡において、ススキが秋を代表する草花であることがご理解いただけたでしょうか。特に古代を感じさせる建造物や古墳などと一緒に写し込むと、見るものに平城宮跡ならではの光景を印象づけられるはず。カメラマンはもちろん、それ以外の方も平城宮跡のススキをご堪能ください。
※…ススキの見頃は10月から11月にかけてです。
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(2024/3/29更新)
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