写真:毎川 直也
地図を見る新木鉱泉は文政10年、1827年創業の老舗の旅館。秩父札所巡りの四番、金昌寺から徒歩7分に位置し、門前宿として愛されてきました。その始まりは、初代女将「おきく」が眠っていると、近くのお寺・恒持寺の神様が夢枕に立ちお導きがあったのだそう。湧き出した鉱泉は万病に効くと近隣住民から評判になり、門前宿という特徴に加え、湯治目的のお客さんからも支持を集めました。
写真:毎川 直也
地図を見る玄関をあがると目の前に飛び込んでくるのは、天井の大きな梁です。なんと新木鉱泉は築200年の建物を、建て替えることなく営業を続けています。注目していただきたいのは階段の手すり。右側の手すりをつけてから10年後に左側の手すりを付け足しています。
写真でもなんとなく光沢感が違うように見えませんか。女将さん曰く「ワックスを塗っているわけではなく普通に掃除をしているだけ」なのだそう。200年という月日の湿気や温度変化、そして人が触ることによって自然と出てくる光沢なのです。そんな人の歴史を感じさせる備品が館内には溢れています。
写真:毎川 直也
地図を見る建物の歴史が深い新木鉱泉のなかでも、遊び心を感じられるのがこの屋根裏部屋。館内に子供が楽しめるところがない、ということで開放されています。今では子供のための役割を担っているこの屋根裏、誕生の理由は新木鉱泉の社長やその友人が捨てるはずだった漫画や本をここに置いていき、いつのまにか本を読むために畳を敷き、電気を通し、今のかたちになったのだそう。
200年新木鉱泉を守り続けた梁をこんなに間近に見て、触れる機会はそうそうありません。20:00以降は下の階に足音が響くため利用できません。
写真:毎川 直也
地図を見るこちらは大浴場。ぬくもりある色合いで、ほっと心が落ち着く空間です。お湯のにおいはほとんどなく、湯上りは肌がさらっと仕上がります。つるっとしたたまごの様に仕上がることから「卵水」と呼ばれています。写真左手奥にある樽のようなものは水風呂です。新木鉱泉はもともと低温で湧き出る冷鉱泉、源泉に近い鉱泉を楽しむことができます。
屋外には2つの湯船がある露天風呂になっています。柵の隙間から覗ける田園風景はいたって普通の景色です。しかしそれは「鉱泉が湧くからここに宿をつくった」、温泉が自慢であるということの裏返しでもあります。
また、新木鉱泉は日帰り入浴をおこなっており、10:00〜21:00と長い時間利用できるのも嬉しいポイントです。
写真:毎川 直也
地図を見るこの鉱泉はpH9.4という高いアルカリ性で、肌の老廃物を洗い流してくれます。昔から伝わる卵水という表現、温泉分析書を見る限り適切な表現です。加えて成分総計が0.599mgと、刺激の少ない優しい鉱泉のため、何度も湯に浸かって身体を休める湯治には向いています。
そんな卵水を独占できる貸切風呂も完備。床に敷かれた砂利や石、落ち着いた色合いの壁面は、新木鉱泉全体を包む穏やかな雰囲気と同様のものを帯びています。貸切風呂はここ以外にもあります。部屋数13のうち4部屋が露天風呂付き。新木鉱泉を楽しみきるには1泊では足りません。
秩父札所巡りがきっかけでこの地に根付いた新木鉱泉。現在ではその建物の貴重さ、鉱泉の質の高さという宿自身の魅力に加え、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ」といったアニメの舞台としても注目を集めており、江戸時代とは違った意味で巡礼が流行しています。札所巡り、アニメの聖地巡り、湯巡り。秩父をめぐる際、好立地な宿泊施設です。
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(2024/4/24更新)
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