国立西洋美術館の完成から2年後の1961年、「音楽の殿堂」東京文化会館は竣工されました。正面玄関を入ると、まず迎えてくれるのは豪華絢爛なエントランスロビーです。天井にランダムに配置された照明はまるで夜空に散りばめられた星のよう。その圧倒的な存在感に思わず上ばかりを見てしまいますが、ここは足元にも注目。床のタイル模様は公園の落ち葉をイメージしているのです。
公園と建物をはっきりと区別するのではなく、あくまでも上野公園の自然豊かな環境に調和するようにデザインされているのです。そのような配慮をしつつ、赤と青という強い色を効果的に使うことによって、都会的な洗練されたイメージも併せ持つという絶妙なバランスを保っています。
奥へ進むと、屋内なのに突然城の石垣のような壁が現れるのですが、これは5階建ての大ホールの壁面です。大ホールの客席のほとんどは赤いシートなのですが、お花畑をイメージして所々色の違うものがあります。これは空席を目立たなくさせる効果もあるとのこと。
そして大ホールで異彩を放っているのが、壁面の音響拡散体。日の出、日の入りの雲の形をイメージしたという木製のそれは、彫刻家・向井良吉氏による造形です。これらの工夫が功を奏し、このホールは音楽関係者から“奇跡の音響空間”と言われ、カラヤン、バーンスタインなど数々の巨匠が舞台に立ってきました。ホールは催し物の観客でないと中には入れませんが、機会があればぜひこの空間を体感してみてください。
会館の4階には音楽資料室があります。ここは全国でもめずらしい音楽専門の図書館でクラシックのみならず、ジャズや民族音楽、舞踊など音楽に関する書籍を幅広く所蔵。また視聴ブースもあり、アナログ盤からDVD、レーザーディスクまで揃っています。なお利用には登録手続きが必要です。
音楽資料室へはエレベーターで移動が可能ですが、階段もおすすめです。こちらのらせん階段、なんと壁も床も全部真っ赤!これは色の心理効果によって利用者に活力や情熱を感じてもらい、心高ぶらせた状態で音楽を楽しんでほしいという思いが込められています。ちなみに非公開エリアの関係者が使うらせん階段の色は青。こちらは公演前の緊張を鎮めて心落ち着かせてもらいたいという配慮だそうです。
会館内の「Cafe HIBIKI」は建築好きにおすすめの場所。テラス席からこの建物の外観の特徴、大庇を間近に見ることが出来るのです。この大庇はル・コルビュジエが手掛けたチャンディガール議事堂を彷彿とさせるもので、ゆるやかな曲線をコンクリートで作り出すのには相当な苦労があったようです。
カフェは館内からだけでなく、実は公園側からも気軽に入れるようになっています。ここの人気メニューは上野ならではの「パンダパンケーキ」です。テラス席でル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館を眺めながら、パンダスイーツを味わうのも乙なものですよ。
東京文化会館には他に名物料理「チャップスイ」がいただける「レストラン フォレスティーユ」やギフトショップなども入っています。
上野公園にはもうひとつ、前川國男作品があります。それは東京文化会館から徒歩5分ほどのところにある東京都美術館です。目印はレンガ造りの壁……ではなく、実はこれは打ち込みタイルの壁なのです。美術館の設立自体は大正時代に遡りますが、初代の建物が老朽化し、1975年に新たに建てた新館を手掛けたのが晩年の前川國男でした。
この場所は風致地区で高い建物が作れないため、地面を掘り下げて地下部分にエントランスを作りました。そのためロビー階が地下という面白い構造になっています。また4つのブロックを少しずつずらして並べたような公募展示室の作りは独特のリズムを生んでいます。美術鑑賞の際にはぜひ建物にもご注目ください。
上野公園内には様々な名建築が存在します。前川作品で言えば西洋美術館の新館もそうです。他にもネオ・ルネサンス様式の国立科学博物館や帝冠様式の東京国立博物館など、建物好きにはたまらない施設がたくさん!音楽やアートを楽しみながら名建築を愛でる時間も過ごせるという贅沢な場所です。ぜひいろんな視点で上野を満喫してください!
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(2024/4/19更新)
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