ご紹介する「旭滝」は、修善寺道路「修善寺インター」から国道１３６号線を経由し、下田市方面へ車を走らせると右側に「旭滝」の入口があります。脇道を車で数分走らせた所にあり、国道から近いので気軽に行くことができます。
旭滝は全長１０５ｍ。６段に折れて流れる滝で、朝日に当たって美しく輝くことから「旭滝」と名付けられました。同じ伊豆市内には、名曲「天城越え」で歌われる有名な「浄蓮の滝」がありますが、浄蓮の滝は高さ２５ｍ。豪快に流れる迫力ある滝ですが、この旭滝は静かに流れる正反対の滝。旭滝の両岸は樹木が覆い茂っていて、秋になると紅葉樹が色付いて最も美しい景色に出会える季節なのです。
ここ旭滝は、あまり知られていないためか、観光客が少ない穴場な場所。ひっそりとしていて、運が良ければ紅葉を独り占めできてしまうお勧めなところなのです。
ここには展望台があり、滝を真横から見られるのも魅力の一つ。展望台は、滝の下流にあるこの橋を渡って、階段を登った左手の遊歩道を進んだ所にあります。
ここは、その昔、普化宗の「瀧源寺」と言うお寺があった所。「普化宗」とは禅宗の一派で、一国一寺としていたため、伊豆で唯一の普化宗のお寺でした。江戸時代は幕府の保護を受け、観音堂などが建てられていましたが、明治４年に廃宗に。階段のたもとにあるこの橋は、その寺の名残だと言われ、僅かながら寺の記憶を留めています。橋は、こんもりと盛り上がった形をした太鼓橋で、横から見ると半円の形。歴史的価値が高く、寺の繁栄と衰退の悲しい歴史を物語る建築物で、時代の流れを感じさせる趣のある景色を醸し出しています。
展望台は、滝の横まで行くことができ、ご覧のような眺めが広がっています。間近で滝を見ると、滝の音や水しぶきが飛んできて、まるで五感で景色を楽しめます。滝の勢いは雨量によって異なりますが、柔らかく優しい流れで、そばで見ていると和まされる、正に癒しのスポット。
滝が流れている岩肌をよく見てみると、人工的に造られた石積みのような形をしていますが、実は地下のマグマが冷えて固まった「柱状節理」と呼ばれるもの。柱状節理は、５角形や６角形をした柱のような石で、横向きになった断面が見えているため、石積みのような形になった珍しい地形を見ることもできるのです。
自然が織りなす、有りのままの景色が見られ、ここは伊豆で火山の成り立ちが見られる「伊豆半島ジオパーク」のジオサイト（見所）にもなっているので、訪れた際は忘れずに見ておきたい場所です。
展望台へ続く遊歩道には、紅葉樹が植えられているので、こんな景色を堪能できます。本数はそれほど多くありませんが、たった１本でも見応えがあり、色鮮やかなモミジの葉をつける木など様々です。
太陽の当たる角度によって、また一段と鮮やかに見えるので、散策しながら見物するのもお勧めです。また、展望台から見下ろすように紅葉や滝つぼ周辺の景色が見られので、是非登ってみて下さいね。
旭滝は、尺八の曲で知られる「滝落の曲」ができた場所として、石碑が残されています。普化宗のお寺があった頃に居た僧は「虚無僧（こむそう）」と呼ばれ、頭に編んだ篭のような「深編み笠」を被り、座禅の代わりに尺八を吹きながら、修行の為に全国を歩いたそうです。
滝落の曲は、戦国武将の北条早雲の息子「幻庵」が流れる滝を見て作ったとも伝えられ、今も昔と変わないような滝の流れが見られます。曲は、流れ落ちる滝に静かに向き合って心を鎮めるような曲風です。そんな、尺八の音色を呼び起こすかのような美しい滝の音に、是非耳を傾けてみては如何でしょうか？
同じ伊豆市内には「修善寺自然公園」「虹の郷」など、有名な紅葉の見所もあります。それに比べて、旭滝はとても小さな規模ですが、とっても静かで心が研ぎ澄まされる環境が整っており、心から紅葉狩りができるような所です。そして、素晴らしい景色に加えて、刻み込まれた歴史が感じられのも魅力の一つ。
旭滝は、紅葉のシーズンだけではなく、一年を通して滝が美しく見られる景勝地なので、是非お出掛けしてみて下さいね。知られている場所だけが、紅葉の見所ではない！ 旭滝は、まだあまり知られていない穴場紅葉スポットだっ！
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(2024/4/25更新)
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