神秘的な風景に、訪れた誰もが魅了されるという御射鹿池。ここはかつては諏訪大明神が狩りをする「神野(こうや)」と呼ばれ、人間が鍬を入れることも許されない土地だったとか。「御射鹿池」という名前は、諏訪大社上社の御頭祭で、神に捧げる牝鹿を射る神事に由来していると考えられています。
この辺りは標高約1,100メートルの寒冷の土地。水源となる近くの川は酸性が強く、農業には不向きで、かつては「3年に1度米が収穫できればいい方」と言われるほどだったそうです。そのため水の酸度を薄め、温めるために、昭和8年に作られた溜池がこの「御射鹿池」なのです。
御射鹿池を訪れるとまずその静かな美しさに目を引かれますが、木々や空が鏡のように写り込む水面は、その幻想的な雰囲気を生み出す鍵の一つ。東山魁夷の《緑響く》(1982年、長野県信濃美術館・東山魁夷館蔵)でも、その様子がはっきりと描き出されています。
この光景は、池の強い酸性の水によるものと考えられています。残念ながら魚などは殆ど住むことができないそうですが、それが却ってこの静けさを生んでいるのかもしれません。
こちらは、向こう岸を撮影したもの。季節や時間帯によっては、木々の1本1本がはっきりと水に写り込む様子まで見ることができます。
この場所を舞台とした東山魁夷の絵画《緑響く》は、池の木々の前を、白い馬が歩いているというファンタジックな作品です。実際の風景を見ても、今にも白い馬が出てきてもおかしくないと思えるほど!実際には馬はいませんが、名前の通り、今でも池の近くでは時に鹿の群れを見ることができるそうです。残念ながら池の周りを一周することはできず、向こう岸に行くことはできません。しかし、人が立ち入れない場所だからこそ、この神秘的な姿を保っているのでしょう。
岸辺近くには浅瀬もあり、そこでは、澄んだ水の流れを見ることができます。水中の石に生えた水苔も美しいので、不用意に入って踏み荒らさないように気を付けましょう!
前述の通り、この池には魚は住んでいませんが、鴨や渡り鳥、トンボやチョウなどの生き物たちを折々に観察することができます。
また、四季を通じてその姿を楽しめるのも魅力の一つ。《緑響く》という絵のタイトルにふさわしい深緑の夏、紅葉の美しい秋、そして雪深い冬といつ訪れても素晴らしい風景を楽しめるでしょう。空気が澄んでいるため、晴れた夜には満点の星空を観ることもできます。ただし、標高が高いことから、夏でも朝晩は非常に冷えることもあるので、防寒着の準備は忘れないようにしましょう。
御射鹿池の美しさと神秘的な雰囲気は、写真では伝わりきれませんので、ぜひ直接訪問することをお勧めします。
車ならば諏訪ICから30分、路線バスは近くを通っていないため、公共交通機関の場合はJR茅野駅からタクシーで30分ほどとなります。決してアクセスはよくありませんが、足を延ばす価値はあります。
観光バスも走る県道沿いにあるため、車があれば見に行くのは難しくはないでしょう。近くに数台分の駐車スペースがありますが、御射鹿池は人気スポットのため停められないということも・・・。早朝など、人や車が少ない時間帯がお勧めです。
また、ここから車で15分ほどの距離の場所には「茅野市尖石縄文考古館」という博物館があり、国宝に指定された土偶を2点も所有しています!近くには国特別史跡に指定されている縄文時代の遺跡「尖石遺跡」もあるので、御射鹿池を訪れた時には、ついでに足を運んでみましょう。
住所:茅野市豊平奥蓼科
アクセス:
(自動車の場合)諏訪ICから30分
(公共交通機関の場合)JR茅野駅からタクシーで約30分
※案内看板あり。池は一周できません。堤防は立ち入り禁止
駐車場:あり(池脇、もしくはそこから100m先)
2018年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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