写真:乾口 達司
地図を見る「鼻ぐり塚」は岡山県を代表する古社・吉備津神社から徒歩数分のところに位置しています。「福田海」という宗教法人施設の敷地内にあるため、はじめて訪れる方は拝観して良いものかどうか、戸惑われるかも知れませんが、受付で護摩木を奉納するための費用を支払うと、誰でも拝観することが出来ます。気軽に訪れましょう。
受付で受け取った護摩木を手に境内を奥へと進むと、やがて目の前にご覧のような塚が現れます。これが、今回、ご紹介する鼻ぐり塚です。多くの参拝者で賑わう吉備津神社の近くにこのような謎めいた塚があったこと、ご存知でしたか?
写真:乾口 達司
地図を見る鼻ぐり塚を訪れると、塚の上に大量の何かが堆積しているのが、おわかりになるでしょう。これこそ鼻ぐり塚の名の由来となった「鼻ぐり」です。鼻ぐりとは、牛の鼻にとりつけられている鼻輪のこと。鼻ぐり塚は人間に食べられたり、農作業で酷使されたりして命を落とした家畜を供養する目的で、1925年に設けられました。
そして、『ウルトラマンA』(エース)においても、この鼻ぐりは重要なアイテムとして使われています。『ウルトラマンA』に鼻ぐり塚が登場するのは、1972年7月21日放送の第16話「夏の怪奇シリーズ 怪談・牛神男」(監督・山際永三/脚本・石堂淑朗)。先年、他界した若き日の蟹江敬三扮する高井青年が鼻ぐり塚を訪れ、塚に奉納されている鼻ぐりを興味本位から持ち帰った結果、超獣カウラに変身してしまうというストーリーです。もちろん、最後はウルトラマンAが登場し、カウラを圧倒。身につけていた鼻ぐりが外れたことでカウラは高井青年の姿に戻って一件落着と相成りますが、岡山城や後楽園、倉敷の美観地区など、岡山には誰もが良く知る名所旧跡がたくさんあるというのに、地方ロケの主要な舞台として敢えて鼻ぐり塚を登場させているとは、何ともマニアックな選択ですね。
写真:乾口 達司
地図を見る鼻ぐり塚に堆積する鼻ぐりの数は、驚くなかれ、何と600万以上!創設から百年近い歴史を経て、これだけの鼻ぐりが堆積しているとは驚きですね。実際、年々増え続ける鼻ぐりは塚からあふれそうになる勢い。写真は塚の背面を撮影したものですが、塚の境界を指し示す二重の結界石のうち、すでに内側の結界石が鼻ぐりに埋もれて見えにくくなっているのがおわかりいただけるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る塚の頂上には、ご覧の五輪塔が立っています。近づいて確認することが出来ないため、その製作年代までをお伝えすることは出来ませんが、五輪塔がそびえていることで塚としての存在感が強調されていることは間違いありません。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は鼻ぐり塚の正面を接近して撮影したものですが、塚の本尊に当たる馬頭観音の銅像の背後を良くご覧ください。何やら大きな穴が開いているのをご確認いただけるでしょう。穴は大きな石を積み重ねて築かれているようですが、この形、どこかで見たことはありませんか?考古学に詳しい方ならすぐにピンと来るでしょう。これは古墳の横穴式石室の開口部。つまり、鼻ぐり塚は古墳(円墳)を転用したものなのです。
横穴式石室の奥には、鼻輪を溶かして造られた真鍮製のプレートが多数奉納されています。プレートには阿弥陀の宝号が刻まれており、プレートもまた家畜を供養するためのアイテムであるといえますが、鼻ぐり塚の周辺地域が全国有数の古墳地帯であるからといって、古代の古墳を鼻ぐり塚に転用するという発想、何とトリッキーで大胆不敵なのでしょう。びっくりです。
『ウルトラマンA』にも登場した鼻ぐり塚がどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。全国的にも類を見ない塚ゆえ、その希少価値は抜群。鼻ぐり塚を訪れ、その斬新な姿に驚いてください。
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(2024/4/26更新)
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