敷地に入ってまず目を引くのが、記念館の建物の外観です。古いだけではない、趣のある佇まいです。アイヌのアーティストである砂澤ビッキ氏によるデザインで、建物の上部にエペレセッ(熊の家)とチプ(丸木舟)が表わされています。
アイヌにとって、動物や植物といった生き物だけでなく、山や川などの自然、人間生活に関係するすべてのものがカムイ(神)の化身だと考えられています。そのため、人間の世界に降りてきた神をもてなし、神の国に送りかえす儀礼が行われていました。最大で最重要な儀礼がイオマンテ(熊の霊送り)です。冬に捕獲した小熊を飼育し、盛大な宴をもって神の国に送り返しました。熊の家は、小熊の飼育小屋のようなものです。
明治政府のもとで、旭川のアイヌは使える土地を大幅に制限され、農民として生きるよう求められました。鮭を捕獲するためにアイヌが選んだ土地はもともと農業に適しておらず、アイヌの多くが外に働きに出ることになりました。川村カ子ト(かねと)もその一人でした。カ子トが現場監督として奮闘した、測量の記録と道具の展示を見ることができます。
川村カ子トアイヌ記念館の敷地内では、80種類ほどの植物を見ることができます。北邦野草園の協力によって、北国の野草が集まりました。シラネアオイや、ツルニンジン、サイハイラン、オオタカネバラ、キバナノアマナなど一度に見ることができます。今後は野草を使ったワークショップも企画するそうで楽しみですね。お庭の名前の「うれしか」とはアイヌ語で「暮らし」「互いに育てる、養う」といった意味があります。
館内には生活文化資料がずらり。旭川のアイヌの暮らしぶりが直に伝わってくる内容です。時代は変わっても、暑さ寒さなどの環境が大きく変化したわけではなく、現代の私たちの暮らしにつながる習慣や道具などを多く見ることができます。今を生きるヒントが見つかるかもしれません。
旭川は木が良いと言われ、木工が盛んです。アイヌの木彫り熊も有名です。記念館の外の敷地内には、夏場のみ売店がオープンしており、民芸品を買うことができます。木彫りを中心に、手ぬぐいなどが並んでいます。
川村カ子トアイヌ記念館では、アイヌ文化を体験できる講習プログラムがいくつかあります。ししゅう体験、ムックル演奏体験など。なかでも、「アイヌの物語鑑賞」は貴重です。アイヌの英雄叙事詩であるユーカラなどを実際に、生の声で聞くことができます。時間は30分前後です。アイヌはもともと文字をもたなかったので、物語や伝説や体験談などのすべてが口承によって伝えられてきました。ぜひ、味わっていただきたいプログラムです。
このほか、「古式舞踊見学」もおすすめです。歌や踊りを実際に見ることができます。いずれも事前予約となりますので、直接記念館へお問い合わせくださいね。
アクセスは、旭川駅より、旭川電気軌道バス24番近文線で、「記念館前」停留所にて下車すぐとなります。駅から約10分です。
川村カ子トアイヌ記念館で旭川のアイヌについてどっぷり浸かったあとは、旭川の風土の知識をさらに深めに「旭川市博物館」もおすすめです。生き物と触れ合いに「旭山動物園」へ足を延ばしてもいいですね。アイヌの文化に触れたあとで、違ったものの見方をできるかもしれませんよ。旭川は早くて10月には雪が降ります。積雪後は5月くらいまで雪が残ります。冬場は、防寒と足元をしっかりとしてお出かけください。
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(2024/4/23更新)
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